再来
行きたくない……。
行きたくないが行くしかない……。
行かなければ後に何が起きるのか想像すらしたくない……。
こんな思いを抱えながらホテルに泊まりに行く人は、この世に何人いるだろうか?
そんな事を考えてる内に、サガワさんのホテルに到着した。してしまった。
受付に向かう途中、気づいた従業員は皆俺に頭を下げてくる。
他のお客さんはそれを見て動揺している。
俺は自然と早足になった。本当はすぐにでも走って行きたいぐらいだ。
受付にはいつもの人が居た。
「ようこそおいでくださいました! ありがとうございます!」
「いえ、泊めてもらうのはコチラなので、お礼はコチラが言う事なんですが……」
「いえいえ、何を仰いますか! 泊まって頂ける事を従業員一同感謝しております!
これでクビにならずに済みます!!」
「……そういう事を言わないでくださいよ……」
「済みません……。ではお部屋にご案内致します」
「やっぱり上ですか?」
「はい! 上で御座います!!」
「そうですか……。あっ、そうそう、貴方のお名前を聞いても良いですか?」
そういうと、その従業員さんはめっちゃ落ち込んだ! 何故だ!
「どうしたんですか?!」
「名前を聞いてどうするんですか?! サガワに言いつけるのですね?! そうでしょう?!」
「違いますよ! いつも会うのに名前も知らないな~と思っただけですよ!」
「……本当に?」
「本当に」
「……失礼しました。ツバキと言います。よろしくお願いします。……言いつけないでくださいね?」
「ツバキさんですね。……サガワさんに言う事なんか無いですよ。……あっ!」
「『あっ!』って何ですか?! 名前を聞いた後で『あっ!』って!! 何を言うつもりですか!!」
「違います、違いますって! サガワさんに聞きたい事があった事を思い出しただけですよ!」
「……本当に?」
「本当に」
「……失礼しました。ではそのように伝えます」
「よろしくお願いします」
こうして俺達は3度目のスイート宿泊となった……。
晩御飯を食堂で食べた後、部屋に戻るとノックの音が。
「は~い、今出ま~す」
俺が出ると、ツバキさんが立っていた。
「サガワは明日の昼になら、会えるそうです。それでよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。お願いできますか?」
「承りました。では失礼します」
わざわざ伝えに来てくれるとは、仕事とはいえ律儀だなぁ。
いや、それだけサガワさんを恐れているのか?!
さすがに3日間の移動は疲れたので、今日はもう寝る事にした。
各々が割り当てられた自分の部屋に向かう。
俺も行こうと思ったが、寝る前に紅茶でも飲もうと思いキッチンへ行く。
紅茶を持って部屋に向かう時、またノックの音が。
ツバキさんかな? サガワさんの都合が悪くなったかな?
「は~い、今出ま~す」
紅茶をテーブルに置き、ドアに向かう。
ドアを開けると、ツバキさん……ではなく、アサイさんが立っていた。
「お・ま・た・せ・♪」
「チェンジで」
ドアを閉めようとしたら、またもや足をドアに挟みやがった!
セキュリティがしっかりしてるハズなのに、どうやって忍び込みやがった?!
お巡りさーーーん!! 助けてーーーー!!
この後に「登場人物まとめ」を投稿します。




