黒い門
少し待っていると、タルーンさんが色紙くらいの木の板を持って来た。
これは額縁の裏だそうで、壁にかけておいても不思議じゃないからという考えらしい。
で、隠したい時はひっくり返して表を出せばバレない、と。
咄嗟によくそんな事思い付くねぇ。機転が利かないと商人としてはダメなのかな?
早速、額縁の裏に『門のシール』を貼り『コネクト』で数字を書く。
こちらは想像通り2になった。
これ、何かにメモしないと忘れそうだ……。
「ここまでは成功しましたね」
「そうですね。後は動かしても問題無いか試してみましょう」
「どうします?」
「これをさっきの応接室に置いてきます。鍵をかけて誰も入れないようにしてきます。少々お待ちを」
そう言って走って行ってしまった。
かなり興奮しているようだ。いや、俺も人の事は言えない。
新しいオモチャを手にした子供のような感覚だ。
5分後、タルーンさんは走って帰ってきた。
そんなに楽しみか。
「設置して鍵をかけてきました! 早速実験しましょう!!」
「わ・わかりましたから、落ち着いて!」
「あわわ、すみません……。いやあ興奮しますね!!」
「まあ気持ちは判りますよ。じゃあやりますよ。『コネクト』!!」
ピコンと俺の目の前にステータス画面のようなモノが出た。
ここから選択するらしい。
気合入れて叫んだのが非常に恥ずかしい!
1→2
1→○
こんな感じで出てるのだが、○はまだ設置してないからだろう。
1の前に居るからだと思うけど、『1→』しか出ない。
1と2しか無いんだから、選択しなくても繋げてくれればいいのに。
『1→2』を選択すると、『門のシール』から黒い霧が発生し俺の前に集まってきた。
そしてそれは徐々に形を成していき、10秒ほどで縦2m×横1mの鏡のようになった。これが門か!
厚みは3cmほどだが、鏡の部分は黒い渦が巻いている。これに入るのか?!
いきなり入るのは怖いので、とりあえずマジックボックスからたいまつを取り出して刺してみた。
おぉ! 何の感触も無く入っていく!
タルーンさんが後ろを確認しているが、出てきて無いようで凄く興奮している。
よし! 男は度胸だ! どうせ1回死んでるんだしな!
死んだらアサイさんに頼んでもう一回ここに連れて来てもらおう!
お菓子かなんかで機嫌取れば大丈夫だろう!
そう決めて、門に向かって歩く。
黒い渦に突入すると一瞬だけ浮遊した感じがあったが、すぐに足に地面の感覚が戻った。
そして、そこは既に先ほど居た応接室だった。
すげぇ! 成功した! 感動した!
応接室にも同じ門が作られていた。それを見てると、タルーンさんも通ってきた。
「やりましたね! 成功ですね!!」
「わわっ、タルーンさん! シーッ!!」
誰もいない部屋から声がしたら怪しいだろ! 静かに!!
タルーンさんも気づいたのか、慌てて手で口を押さえている。
俺は手で門を差し「戻ろう」と合図すると、タルーンさんはコクコクと頷いた。
また門を通り、物置に戻る事に成功した。
タルーンさんも戻ってきたので、門を消す事に。
「あれっ? この門って、どうやって消すんだろ?」
「時間経過で消えるのでしょうか? それともまた魔法を使うのでしょうか?」
「とりあえず、『コネクト』を使ってみます」
『コネクト』を唱えると、また画面が出た。
その中の『1→2』が赤色になっている。使用中って事かな?
それをもう一度選択してみると、他のと同じ白色の文字になり画面が消えた。
すると、門はまた霧状になり、『門のシール』に吸い込まれていった。
なうほど、こうやって消すのか。消し忘れに注意しないとね。
忘れない内に確認しよう。『MP:270/570』となってる。
『門のシール』に数字を書いた時は50減っていた。
2回書いたので使用MPは100。
300減ってるので、門を繋げるとMPを200消費するのか。それとも接続で100で、消すのに100?
ま、俺の現在のMPじゃあ、1日に2回しか使えないって事が判った。
魔法石に入れてれば問題無さそうだね。
1kgの魔法石に200入るから、1回につき魔法石1個分。
ヒマを見つけては魔法石にMPを入れないとね。




