設置と実験
とりあえずマジックボックスから『門のシール』を取り出す。
タルーンさんも見るのは初めてのようで、興味深そうに見ている。
よく見ると1枚づつ分かれる様にミシン目が付いてる。
この『門のシール』、パッと見ではキョン○ーの額に貼るお札に見える。書いてあるのは違うけどね。
使い方だけど、たしか貼ってから数字を書くんだったかな?
「どこに貼りましょう?」
「そうですね……庭に物置があるので、そこにしましょうか」
「大丈夫ですか?」
「はい。後で色々と改築しますよ。とりあえず行きましょうか」
「はい。あっ、数字を書く必要があるので、何か書く物ありますか?」
「万年筆で良いでしょうか? 乾くと消えないインクが入っていますが」
「大丈夫だと思います。多分……」
二人で物置にやってきた。
商人らしく中はちゃんと整理されていた。
その中の一番奥の壁に貼る事にした。その後に箱を積んで隠す予定。
「これはどうやって使う物なのですか?」
「え~と、以前に鑑定したらですね、、、
『シールを張った後に、中央に番号を書く(同じ番号は使用出来ない・再利用不可)』と出ました。
なので、まずは貼りましょうか」
「誰が貼っても良いのでしょうか?」
「……どうでしょう? ま、タルーンさんが貼ってみてくださいよ」
「良いのですか?!」
「実験しないとね。残り枚数が少なくなってから実験するより、今した方が良いでしょ?」
「判りました……」
1枚だけ切り離して、タルーンさんに渡す。
タルーンさんは丁寧に剥がして、恐る恐る壁に貼り付ける。無事に貼れたようだ。
次は数字を書く作業だ。中央に○があり、その中に書くらしい。
「じゃあタルーンさん、数字を書いてみてください。1にしましょうか」
「これも私が?」
俺は頷いて肯定した。
タルーンさんは万年筆で恐々と数字を書く。
そこで驚く事が起きた!
書いた数字が消えるのだ!
消えないインクのハズなのに!
何度書いても消える。成功なのか失敗なのかも判らない。
俺も書いてみるが、やはり結果は同じ。
違う数字を書いても、同じように消えてしまう。
「どうなってるのでしょうか?」
「う~ん、どうしてだろ?」
万年筆が悪い訳じゃ無いと思う。
試しに俺が持っていた鉛筆で書いてみたが、これも結果は同じだったので。
その後、漢数字で『一』と書いてみたがダメ、ローマ数字で『Ⅰ』と書いてもダメ。
ダメ元で『①』と書いてきたが当然失敗だった。
二人で悩む事5分。
タルーンさんが提案をしてきた。
「現状で数字を書けたとしても、誰の『門のシール』か判別出来ませんよね?」
「確かにそうですね」
「認識させる必要があるのではないでしょうか? もしくは専用のペンが必要とか?」
「専用のペンですか……。それは持ってないです……」
「ではとりあえず、認識させる方向で考えましょう」
「そうですね。でもどうやって認識させるんだろう?」
「『コネクト』の魔法を使ってみてはどうでしょうか?」
「あっなるほど。やってみましょう!」
俺は『門のシール』に向かって『コネクト』を使ってみる。
すると俺の手から黒い霧が発生し、『門のシール』に吸い込まれていった。
そのまま見ていると、○の中に数字の1がジワジワと浮き出てきた!
こうやって数字を書くのか! これ、「書く」って言わないだろ!
「せ・成功しましたね……」
「……そうですね。しかし、これでは福田様しか設置出来ませんね」
「本当だ! じゃあ俺が王都まで行かなきゃいけないのか……」
「いえ! まだ福田様が仰っていた、ダンジョンの方法があるじゃないですか!」
「あっ! 移動式のヤツですね! それも今実験しましょうか!」
「そうしましょう!!」
そう言い残して、タルーンさんは貼る物を取りに行ってしまった。
俺、物置に置いてけぼりだよ……。




