新しい武器
翌朝、タルーンさんの店に向かう為に玄関に集合した。
「私、アサイはここでお別れです!」
当然の宣言だった。
俺はそうだろうなと思ったが、他の皆は驚いてる。
「別に、福田君にイジメられたからとか、福田君がケチだからとか、そういう理由じゃないですよ?
仕事があるので帰るのです。皆さん、また会いましょうね!」
変なセリフを言わずにとっとと帰れ!!
これで俺の平穏な日々が帰ってくるだろう。
最後に、と言ってアサイさんは皆に手紙を渡して去っていった。
当然俺にもある。
不安に思いつつも、手紙を開けて読んでみる。
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福田君へ
恨みは忘れません。
空間魔法のメールを覚えてたよね? またメールします。
P.S.
帰るのに必要なので、マジックボックスからお金を借りました。
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呪いの手紙か?!
マジックボックスからお金を出した?! あっ、本当に10万減ってる! 泥棒ーーーっ!!
皆の手紙はちゃんとした内容だったようで、感動してるようだ。
俺と皆との温度差が凄い……。
アノヤロウ、最後まで嫌がらせしやがって!!
余韻を残したまま、タルーンさんの店に到着。
コタニさんなんか、まだ涙ぐんでるよ。
俺は別の意味で泣きたいね。
店に入ると、タルーンさんが満面の笑みで出迎えてくれた。
「お待ちしておりました! これが皆さんの新しい武器です!」
「ありがとうございます」
皆を代表して俺がお礼を言う。
これでパーティーの強化は出来た。
ついでにタルーンさんにちょっとお願いをしてみようと思う。
「タルーンさん、少し良いですか?」
「なんでしょうか?」
「ここではアレなので……」
「……判りました。少々お待ちを」
そう言ってタルーンさんは従業員を連れてきた。
カンキジコンビとコタニさんは、今まで使っていた武器を売るそうだ。
その査定を従業員に任せ、こちらに来る。
「奥の部屋でお話致しましょう」
そのままタルーンさんに促されて、応接間のような部屋に案内された。
その部屋の中にあったソファに向かい合わせで座ると、おもむろにタルーンさんから話し出した。
「伺いましょう」
「これは秘密にして欲しい話なんですが……」
「判りました。誰にも言いません」
「ありがとうございます。
昨日見て判ったと思うのですが、俺は空間魔法が使えるのですよ」
「そうですね。昨日のは『シール』でしたね?」
「そうです。実は空間魔法4つ全て使えるのです」
「なんと! 羨ましい話ですね! 商人としては欲しい魔法ばかりですから!
確かに秘密にした方が良いですね」
「そこでですね……まずは『メール』の相手として登録させて貰っても良いか、という提案なんですよ」
「それは問題ありません」
そう、『メール』という魔法は、携帯電話のメール機能だと思ってもらえばいい。
欠点は、相手の了承を得て登録しないと使えない事と、タルーンさんからの送信が出来ない事。
だが、了解も貰ったし、返信の問題は次の事で解決出来るはず。
「ありがとうございます。それともう一つ秘密のお願いがありまして……」
「何でしょうか?」
「タルーンさんの敷地に『門のシール』を貼らせてもらえないでしょうか?」




