延長戦
「何故無効なのです? タルーンさん、何か不正等ありましたか?」
「いえ、何もありませんでした。何故無効なのでしょう?」
「たまたまこの店に用事があった女性を見つけたにすぎない! これはおかしい!」
「え~、内容は『どちらが先に女性をこの店に連れて来るか』ですよね。
ナンパした女性だろうと、用事のあった女性だろうと、関係ありませんよ?
この内容に付けたルールは『知り合いはダメ』というモノだけだったでしょ?」
「同じ冒険者なんだろ? 知り合いかもしれない!」
「冒険者なら皆知り合いですか? 俺も冒険者ですが、貴方を知りませんでしたよ?
大体そうやって疑うなら、貴方の連れてきた女性が知り合いじゃないと証明出来ますか?」
「しょ・証明する事は出来ない……。そうだ! お互い証明出来ないので、この勝負は無効だ!」
お~、初めてまともに返してきた気がする!褒めてあげよう。
そして、それに免じて無効にしてあげよう。
「ほう、そう来ましたか。ま、良いでしょう。そういう事にしてあげましょう。
で? 1勝1無効で俺の負けは無くなりましたけど? まだやるんですか?」
「当然だ! 最後の勝負を勝った方が勝ちだ!」
うわ~、テレビのバラエティのお約束ですか……。
ずっと1ポイントで勝負してきて、最後だけ1万ポイント!みたいな。
もう面倒になってきたなぁ。
「認めません。終了ですね。俺が1勝してるので俺の勝ちです。お疲れ様でした。」
「何を終わらせようとしてるんだ! 勝負しろ!」
「……はぁ。バカらしい……。そもそも、勝負する必要が俺には無いんだよ!
勝手に勝負しろとか言い出したけどさ、乗ってやったのはタルーンさんに迷惑かけない為だよ!
なのにまだゴネるのか?! いい加減にしろ! 大体お前と勝負したって何のメリットも無いんだよ!」
イケメンさんは豹変した俺に戸惑っている。
仲間は皆ウンウンと頷いている。判ってくれるか。
「くっ、じゃ・じゃあこうしようじゃないか! お前が勝ったら俺の所持金を全てやる! どうだ?!」
「バカか? 今1000円しか持ってなければ済む話じゃないか。全財産と言わない所がお前の作戦だろ?
そんなしみったれた勝負なんかするか!」
「くっ、、、じゃあ何なら良いんだ?!」
「そうだなぁ……あっ、じゃあこうしよう。俺が勝ったら全てのダンジョンに出入り禁止ね」
「そんな無茶な?!」
「いやいや、お前が俺に勝負しかけてきてる事が既に無茶だよ? 判ってる?
それにもう負けた時の事考えてるの? そんなんなら勝負なんてしない方が良いよ。もう帰りな」
「くそ、バカにしやがって!! いいよ! その条件で勝負だ!!」
うわ~簡単な挑発に引っかかったよ……。
この人、アサイさん以下なんじゃないか?
おっと、アサイさんが俺を睨んでる。考えた事がバレたかな?
「じゃあ決まりな。あっそうそう、俺が負けた場合な、何でも一つ言う事聞いてやるよ。
負けないんで問題無いから。何ならアサイさんを持って帰っても良いぞ」
「私は高いわよ~、って、勝手に景品にするな!!」
ノリツッコミかよ!
「で? 何で勝負する? もうお前が決めていいよ? もう面倒くさい。はよ決めれ」
「くっ、バカにしやがって!」
「さっきから、くっくくっく、うるさいよ。早く決めろよ」
「じゃあこうしよう。戦闘だと私が非常に有利だからな。だから戦闘以外にしようじゃないか。
武器無しで先に相手の体に触れた方が勝ちってのはどうだ? これなら身体能力のみだぞ?」
「じゃあいいよそれで。どこでやる?」
「ここでいいだろう。この店は広いからな。すみませんタルーンさん、店をお借りします」
たしかにこの店は広い。5m×10mの50㎡くらいあるんじゃないだろうか。
天井までも4mくらいあるし。
武具などは主に壁際に展示されており、中央には柱が4本立っている。
分かり易く言うと、店の中を使った鬼ごっこって事か。
この勝負、運を使うのは当然だが、初公開と言うか初めて使う魔法で勝負しようじゃないか!
失敗したら、運だけが頼りだけどさ……。
俺とイケメンさんは、店の対角線上で対峙する。
判りにくいと思うので、簡単な図を描いておこう。




