イケメンとの決着
「では次の勝負です。『どちらが先に女性をこの店に連れて来るか』です。知り合いは当然ダメです。
店を出てから連れてくるまでのタイムを競います。早い方が勝ちです」
「タルーンさん、改めての説明ありがとうございます。さて、先攻ですか? 後攻ですか?」
「先にやらせてもらおう」
これは自信があるのだろう。ニヤニヤしている。
せいぜい頑張ってくださいな。
「不正が無いか確認する為に、私の私兵に隠れて見張らせます。よろしいですね?」
「問題無い」
「良いですよ」
「では、スタートです!」
イケメンさんはゆっくりと出て行った。それでも勝てるつもりなのだろう。
俺は今の内に気になってた事を聞いておこう。
「タルーンさん、ちょっといいですか?」
「なんでしょうか?」
「店の前に私兵を置かれてましたが、何かあるんですか?」
「この店は会員制になっていまして、許可無しには入れないんですよ。
もちろん福田様は入ってもらって問題ありません。」
「何故会員制にしたのですか?」
「私の店がと言うよりも、この町の武具屋や全てそうなってますよ」
「あぁ、そうなんですね」
うむ、こりゃ良い事を聞いた。
入りたくても入れない人が居る訳だ。
そうやって会話してたら、イケメンさんが女性を連れて帰ってきた。
「はい、そこまで! 時間は7分26秒です」
「少し時間がかかってしまったようだ。では、君の番だよ。頑張りたまえ」
すでに勝利を確信しているようだ。
なんかピエロに見えてきた……。
俺は『この店に行きたがってる真面目な女性と出会いたい!』と強く願う。
「では福田様、スタートです!」
俺もゆっくりと店を出る。
すると、通りをキョロキョロしながら歩く女性を発見したので早速声をかける。
「どこかお探しですか?」
「あぁすみません。この辺りに『武具の店タルーン』というのがあると聞いたのですがご存知ですか?」
「知ってますよ。でも会員制だそうですけど、大丈夫ですか?」
「……やっぱりそうなんですね。ウワサを聞いて来たのですけど、町の入り口で会員制と聞いて……。
とりあえず行ってみようとここまで来たのですが……やっぱり入れませんよね」
「失礼ですけど、冒険者の方ですか?」
「はい、やっと黄緑になれたので、これを機に武器を新しくしようと思ってまして……」
「そうですか。私も冒険者なのですよ。まだ青色ですけどね。
ここで知り合ったのも何かの縁。タルーンさんの店に案内しましょう。
実は私は会員なのですよ。会員の連れなら入れますから、一緒に行きましょうか」
「そうなんですか?! あ・ありがとうございます!」
「いえいえ。じゃあ行きましょうか」
「よろしくお願いします!」
こうして知り合った女性冒険者と一緒に、タルーンさんの店に戻った。
「はい、そこまで! 時間は……4分52秒です。この勝負、福田様の勝利です!」
「ありがとうございます。
あっ、この女性は冒険者でタルーンさんの店で武具を買いたいそうです。いいですよね?」
「福田様が保障されるのであれば問題ありませんが」
「ではそれでお願いします」
勝負に勝たせてもらったのだ。保障するくらい問題無い。
こういう場合を想定して『真面目な女性』と願ったのだから。
ともかく、これで2連勝。この時点で俺の勝利は確定した。
「この勝負は無効だ!」
さっきまで唖然としていたイケメンさんが、当然叫び出した。




