プロローグ1
俺は死んだらしい。
まあ世の中に何の未練も無いのでかまわないんだが。
何故死んだと判るかというと、「死者の入り口」と書いてある門のある川原にいるからだ。三途の川?
さっきまで道を歩いていたので、俺は死者となりここに来たのだと思う。
気づいた時には「死者の入り口」に向かう人の列に並んでいた。
どれくらい待っただろうか、ようやく俺の番が来た。
門をくぐると「番号を取ってお待ちください」と書いた機械が目の前に設置してある。
銀行か!
紙を取ると「1653」と書いてあった。
横をを見ると本当に銀行のようになっており、各受付の上に数字が出ている。
その横には椅子が並べてあり、待合室のようになっている。
俺は椅子に座り、受付上の番号を見る。
現在一番大きい数字が「1642」なので、俺の前に11人いるという事が判った。
受付に行った人(死者?)はタブレットを前に一喜一憂している。
何をしているのか非常に謎だ。
さきほどは銀行か!とツッコんだが、それを見ると携帯電話ショップの方が近いかもしれない。
あっ、「1640」の所に居た人は、喚き散らし最終的に鬼に連れて行かれた……。
もしかしたら地獄行きなのかもしれない。ここで決めるのか知らないが。
そうこうしている内にポーンと音が鳴り、開いた受付に俺の番号が表示された。
よく判らないが、そこに行けばいいんだろう。
その受付に行って、椅子に座る。
「ようこそ、三途の川へ!」
「はぁ、ど、どうも」
なんなんだ、この軽い受付は!
死人を少しは労われよ!
目の前の受付にはデパートの店員のような制服を着た若い女性。
三途の川って婆じゃないのかよ!
手漕ぎの船で渡るんじゃないのか? 何この現代っぽさは!
俺の動揺を無視して受付の女性は話を進めていく。
「この度担当になりました、アサイと申します。
短い時間ですが、よろしくお願いしますね~」
「は、はい……。自分は福田と言います」
「はい、福田さんですね。
では早速ですが、このタブレットに手のひらを乗せてください」
「タブレットなんかあるんですね」
「はい、死者が開発してますよ~。死んでも働きたいって言いまして、閻魔様が許可なさいました~」
ワーカーホリックな人は死んでも変わらないのか……。
俺は言われた通りタブレットに手のひらを乗せる。
すると映画とかであるように緑の線が上下に動き出した。
指紋認証の機械みたいだ。
「はい、もうよろしいですよ~。
東京都出身の福田哲司さんですね。享年23歳。間違いないですか~?」
「た、多分」
「では、手続きに入る前に説明をしたいと思いま~す。
天国や地獄にもランクがありまして、ここで死者の振り分けをしています。
昔は振り分けずに送っていましたが、閻魔様の負担が大きくなりすぎまして振り分けるようになりました。
ここまではOKですか?」
「は、はい」
「では。このタブレットに前世での行いが表示されます。
それには「カルマ」という単位が使われます。
生まれた時は±0です。
良い行いをするとプラスされ、悪い行いをするとマイナスされます。
大丈夫ですか? ついて来てますか?」
「は、はい」
「はい。では貴方のカルマを見てみますね。
ふむふむ、マイナス3となっていますね。そんなに悪くありませんね~。
この年齢では珍しいですよ~」
「そうなんですか」
「はい。
では次に、貴方の運を出します。
運って幸運と不運が半々だって聞いた事ないですか?」
「ああ、何かそういう話は聞いた事ありますね」
「正確には『誰もが運を100ポイント貸し出されていて、100に近づけようという力が働いている』んです。
良い事が起きると運が減り、悪い事が起きると運が増えるのです。
例えば、宝くじが当たったとして運が5ポイント減り95ポイントになったとしましょう。
そうすると減った5ポイントを取り戻す為に、悪い事が起きて100に戻るのです。
戻る時は一気に戻る事もありますし、1ポイントづつ徐々に戻る事もあります。
ここまでは判りますか~?」
「はい、大丈夫です」
「死んだ場合に運を返してもらいます。
その時にプラスだった場合、残りは貴方のポイントになります。
例えば105ポイントだったら、5ポイントが貴方の物になる訳です。これを幸運ポイントと言います。
逆に95ポイントだった場合は、-5ポイントで、5ポイントの不運ポイントが貴方の物になります。
まぁ、実際には0か±1~3ポイントくらいなんですけどね」
「はあ、そうなんですか。
で、そのポイントはどうなるんですか?」
「そこです!
このポイントを使って抽選をしてもらいます!!」
「ちゅ、抽選?!」
「はい! 抽選です! くじ引きと言ってもいいでしょう!」
「そ、それをしてどうするんですか?」
「それがこれの面白い所!! 1ポイントで1回抽選が出来ます!!
例えばですね~、『カルマ+10ポイント!』とか『やったね! 生まれ変われる権利!』とか『ハズレ』とか入ってますよ~!!
どうです? 燃えて来ませんか?!!」
「今、ハズレって言いましたよね?」
「はい、当然ハズレも入ってますよ~?
幸運ポイント用の抽選には当たりが多く入っています。
不運ポイント用の抽選には当たり・ハズレ以外に『残念! カルマが-5ポイントだよ!』とかも入ってますよ!
両方とも中には50個カプセルが入っていて、その内10個は何らかの特典(?)が入ってますよ~」
なんだこの仕組み。
閻魔大王、働きすぎで頭がおかしくなったんじゃないだろうか?
そしてストレス発散の為にスマホゲームにハマったのではないか?
「じゃあ早速、福田さんのポイントを見てみましょ~う!!
ダララララララララララララ・・・ダン!!」
口でドラムロールするなよ!
「出ました! 福田さんのポイントは……
幸運ポイントが60で~す!! って、え~~~~~!!」
プロローグだけは連続投稿します。