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第二十話 噂

やっと続きかけました~


時間がなくてなかなかかけなかったんですよね

第二十話 噂


 「この扉の先に王は居られます。くれぐれも軽率な行動はとらないようにしてください」


 男はゆっくりとそういった。男達の背後には白と深い蒼色で装飾された巨大な扉が佇んでいる。きっと王はこの扉の先で僕たちを待ち構えているのだろう。扉には無駄に細かい細工がされているが、外の城の大きさを見ると何故かしっくり来るのだから不思議だ。

 扉を見上げていると、男が扉の脇にそれぞれいる門番たちに扉を開けるよう指示しながら、再び念を押すようにこちらを振り向いた。


 「いいですか。もう一度いっておきますよ。くれぐれも…」

 「分かったって、しつけぇな。さっさと先に進もうぜ」

 「………」


 また同じ事を言おうとした男の言葉を遮ったザガルさんは、イラついた目で男を睨んでいた。客人を迎える態度とはいえない男の態度がよほど癇に障ったらしく、ジロリと睨み続けていて、男も圧倒されたのかそれ以上先を続ける事はなかった。二人の間に険悪なオーラが漂い始め、少し気まずくなる。


 「…………」

 「……まぁ、なにがともあれ早く王とやらに会いに行こう。私は今の王には、小さかった頃にしかあった事がないから、少し楽しみなんだ」

 「そ、そうだね!はやく王様に会いに行こうよ!!」


 嫌な雰囲気を打ち消すようにシランの言葉に乗って、明るくしようとしたがやはり気まずさは消えない。


 「………ゴメン」



 

 そんなこんなで暫くの後、門番が巨大な扉を少しずつ開け始めた。ギギギ……と音を立てながら開く門はやはり迫力があって、思わず扉に釘付けになってしまう。

 やがて、門が全て開き終わると部屋の1番奥に王座に座っている国王であろう男の人の姿が見えた。


 「皆様、中へ」


 言われた通り中に入ると、そこは他の部屋より桁違いに豪華な部屋となっていた。

 壁に施された細かく繊細な装飾。頭上で煌くシャンデリアに床に引かれた蒼のカーペット。そしてその中でも特に目立っていたのは、王座の後ろに掲げられているこの国の国旗だった。


 部屋を進みながらキョロキョロ見ているとシランに小声で囁かれた。


 「おい、部屋を見るよりも王のほうをしっかり見ておけ」

 「うん」

 「何のために私を呼び出したのかも気になるしな」

 「分かった」


 シランの忠告に従い、王座に座っている王様の姿をよく観察して見た。年は四十歳後半ほどだろうか?少し黒に近い蒼の短い髪と瞳に、少しはやした顎髭が印象的だ。他には何かないだろうかと見ていると、王様の隣に女の人が王座の後ろから出てきた。


 「! シランあれって……」

 「ああ、皇后だ。皇后の方もちゃんと観察しておけ」

 「うん、でも今更だけど、王様に皇后様まで出てくるなんて凄いね」

 「全くだ。一体何があったんだ?今の王とは殆ど関わりがないはずだが…?」


 なにやら呟いているシランを尻目に僕は皇后様をチラリと見てみた。王様より少し明るめの蒼い髪と垂れ目気味の瞳をしていて、王の厳格そうな雰囲気とは違い、優しそうな印象を受ける。


 やがて王座の前に着くとシランが跪いたので、僕とザガルさんもそれに習って頭を下げると、王様が始めて口を開いた。


 「遠いとこからわざわざすまない。そなた達も疲れただろう?」

 「………」

 「い、いえ、大丈夫です」

 「そうか、しかしやはり疲れが見えるようだから今日はこの城でゆっくりしていってくれ」

 「あ、ありがとうご……」

 「まて」


 返事をしようとすると、今まで跪いたまま何も言わなかったシランが立ち上がった。


 「お前がここに私を呼んだのはこの城に招待するためではないのだろう?はぐらかさずにさっさと用件を言ったらどうだ」

 「ちょっとシラン!」


 僕が小声で言っても、シランは立ち上がって王様を睨み続けたままだ。この行動に周りの人たちの雰囲気が変り始め、持っていた槍を構えだした。


 「何やってるの!?そんな事したら喧嘩売ってるようなもんだよ!」

 「グレンの言うとおりだ!シラン、今は落ち着け!!」

 「黙れ、ここに呼ばれているのは私だ。お前たちには関係ない」

 「何でそんな事言うの?今まで一緒にいろんなことやってきたじゃん!それなのに自分だけ……」

 「ふ…はははは!!」

 「えっ?」

 

 突如、この部屋中に王様の笑い声が響き渡った。驚いて王座の方を見ると王様だけではなく、隣に居た皇后様までも笑っている。


 「はは…いや、すまない。思った以上にシラン殿が父が語ってくれた人物に似ていたもので…さすが、私が貴方の事を探ろうとしたのが悟られてしまったのだな」

 「当たり前だ。伊達に何百年も生きてるわけではない…ところでお父上は私のことをなんと?」

 「意志がとても強く、なんの揺らぎもない人だと。それととても踊りが上手いとも言っていた。まるで優雅に舞う蝶のようだとか」

 「えっ!?シラン、踊れるの?僕見てみたい!」

 「俺も見たいな、シランの踊り」

 

 この容姿と服で踊ったら、きっと凄く綺麗なのだろう。踊りを見たことの無い僕でもそれは容易に想像できる。


 「いやそれは……」

 「ね!お願い!!」

 「いや…そ、それより私をここに呼んだ理由を聞くほうが先だ。ところで私に何のようなのだ?私とお前は面識はそこまでないはずだが…?」

 

 シランは僕の事は無視して再び王様と話し始めた。

 悔しい……絶対いつか見てやる。


 「そうだな。ではそちらを先に放すこととしよう。さて、改めてだがシラン殿をここに呼んだのは、とある噂が理由なのだ」

 「噂…?何だそれは」

 「それが…死神と名乗るものが、わが国の民や聖獣を殺しているとか」

 「はぁ?」

 「そしてその者は必ずその場を立ち去るときにこう尋ねるのだそうだ。『漆黒の舞蝶をしらないか』とな」







 


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