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一番古い記憶にあるもの…。
周りが祭りで賑わっている風景。
そこで泣く幼い子どもの姿。
お囃子の音で泣き声が消され、誰も子どもの様子に気がつかない。
子どもは心細く辺りをさ迷う。
ドンッと目の前の大人にぶつかり、子どもはその場で尻餅をついた。
「大丈夫かい?」
そう言ってぶつかった男性が、子どもを優しく抱き起こした。
見れば子どもは目に涙を溜めている。
「ああ、どこか怪我でもしたのかい。」
その言葉を聞くと子どもはボロボロと涙を溢し始めた。
「どこかいたいのかい?」
いくら尋ねても子どもは首筋を振りながら泣くばかり。
困った男性は連れの女性に子どもを預ける。
女性は子どもに名前を訪ねた。
「僕、お名前は?」
「……い、伊織。」
子どもはしゃっくりをあげながら自分の名を伝える。
「伊織君かぁ。迷子かな?パパやママのお名前も教えて?」
「パパ…マ…マ…?」
子どもは首を傾げる。
まるで女性が何を話しているのか分からないといんんばかりに。
「…お父さんやお母さんは?」
その言葉に再び子どもは瞳に涙を溜めた。
「とぉさま、かぁさま、あにうえ…。どこぉ。」
男性と女性は顔を見合せた。
父様に母様?
今時の子どもにしては珍しい言葉遣いてである。
「どこぉー!」
わー、と子どもは泣く。
「怖いよぉー。」
男性と女性は子どもを宥めながら家族を一緒に探した。
しかし結局見つける事ができず、子どもを警察へと預けた。
その頃になると子どもは泣き止んでいた。
そして呟く。
「とぉさまとかぁさまって誰?あにうえって誰?」
子どもから自分の名前以外の記憶は全て失われていた。
「思い出せない、分からない…。ここはどこ?」
警察も子どもの両親は見つけることはできなかった。
やがて子どもは施設へと入る。
これが田中伊織の覚えている一番初めの記憶である。