表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hollow  作者: よづは×腸墓 音
5/5

5、奇妙な放送


『やっほ~、何時も五月蠅い『この人紹介だよ~』のじかんさぁ!』

『自分で言うのか。』

 誰一人として放送中に言う勇気が無く、指摘された事の無いところを今回の 生徒(ゲスト)はあっさりと言ってのけた。

『あははははは、流石だネ~噂は聞いてるヨ~。』

『そうか、俺はこの時間はスピーカー設置されていない、無音地域の隠れ家で和んでいるからお前の事は知らんがな。』

『そんなだから授業に遅刻するんだヨ。』

 放送委員、又は司会進行の担当者もやられっ放しでは無いらしい。あっさりと言い返す。

『何処から聞くんだそんなこと。』

『聞きたい?』

 質問を質問で返し、暫くの沈黙が続く。


『それは、壁際に追い詰められて聞かれる事なのか?』

 ゲストからの状況説明が入った。

『いや?これはなんとなくだヨ?知りたくないの?』

『これだけの接点で終わりそうな輩の事を知る道理が何処にある。』

『そりゃそうか、』

 司会はあっさり納得して、席に座る音がする。

『さて、今日は匿名希望なんだけど皆の事知るための放送だからそれは聞き入れられないの。これもこの放送に当たっての放送委員規定事項ネ。』

 微かに回転椅子のまわる音がマイクに拾われた。

『端から護るつもりは無いんだけどネ。』

 

 うおぉい!!放送委員が言っちゃあ成らんだろうがあ!!!!!!


 そんな声が学校中から聞こえた。これがこの学校で唯一、全校生徒が同じ事を思い口にした瞬間だった。


『わぁお、皆見事にハモったネ』

その声は勿論、放送室まで届いたらしく返事が返って来た。

『だって、今にも立ち上がりそうだったんだもん。それに守る気無かったのも本当だしネ。』

『鬱陶しい口調だな』

 いきなり毒舌が飛ぶ。

『そう?それなら、君も丁寧に話してよ』

『その舌を引きちぎってやりたくなります。』

『うん、腹黒さがあっていいネ。』

 司会もまた毒舌だった。

『というわけで匿名希望なんだ。だけど呼び難いから、『アリス』でいい?』

 何故アリス、そんな表情の人が大量に見かけられた瞬間だった。

『…せめて『よづは』って呼んで下さい。』

『ペンネーム?』

『そんなものです。』

『じゃあ、『腸墓 音』。『音』って俺の事呼んでヨ』

『承知いたしました。』

 丁寧だな、そう思ったのは自分だけなのだろうか。

『じゃあ始めるよ。年は幾つ?』

『意味の無い質問ですね。二百四十三歳になりました。』

『わぁお、長生きだ~じゃあ、それが本当なら何時生まれたの?』

 試すように、質問する。意地の悪いと思うが、放送でそこまで言われたら言いたくなるのも解る。

『宝暦八年』

 あっさり答えられた。

『干支は?』

『戊寅』

 なんじゃそりゃ、結構そんなことを言っている人が多かった。

『そのネタ、あんまりしないほうがいいんじゃないの~?』

 何を知っているのか言う司会者。

『知っていましたか。』

『勿論』

 二人には共通認識があったらしい。勝手に話を進めた。

『そろそろ真面目にしない?扉の向こうで何か言ってるから。』

『ここ、中から閉めると外からは開けられないから関係ないでしょう?』

『良く知ってるネ』

『そういうものですから』

 あまりメジャーでもない知識もあるらしい、そうして質問を続ける。

 暫くして司会者は溜息をついてから聞き始める。



『これは個人的に聞きたかったんだけど、彼氏居るの?』

 


 女だったのか!!!!



 一部の人間が叫んだ。それはそうだ、司会者は意地悪なのか好みの女性のタイプを聞いたりしていた。

 『スレンダーで静かな娘、大和撫子、血液の赤い娘。』最後のは少し危ないかなとも思った覚えがある。

 胸は?司会がそう聞いた時には

 『小さい娘、でか過ぎるとウザイですから。』

 っと、胸が大きくてモテている女子の存在を一刀両断するような発言をしていた。それに、声は男とも女とも言いがたい声だったのだ。

 

 校舎に響いた声はスピーカーからも微かに聞こえたが、中の二人はそれを無視していた。

『いえ』

 彼氏は居ないらしい、そして何故か長い沈黙が続いた。その沈黙は学校を巻き込んでいた。





『ねえ、俺と死にませんか?』

 



 いきなり司会がそんなことを言い出した。何時もの冗談かとも思ったが、口調が真面目だった。

『それは心中のお誘いかい?』

 楽しそうに司会に返答する。

『ん?そうとも取れるが、違う。』

 司会は続ける。

『俺と生死を共にして欲しい。君が死ぬのだったら俺も死ぬ。君が生きるのなら俺も生きよう、君が生きているのに死ぬ事とかは絶対に無いと言い切ってやる。だから、…解りやすく言おう。俺のものになれ。』

 いきなりの校内放送での告白だった。

 その司会の台詞に皆が黄色い声を出した。だが、一部の女子は悔しがっていた。どうやら司会は人気があったらしい。

 誰ともわからない生徒に取られた分、諦めきれない気持ちもあるらしい。

『おや?それは俺様について行くと言う事だろう?他の奴に気移りした際に拘束してでも、己に縛り付ける気は無いのか?』

 口調を生意気な口調へと変化させたよづはというゲストは司会、音に挑むように言い放つ。


『勿論、拘束してでも縛り付けるよ。君に似合う 鳥籠(ゲージ)も用意しようか?』

 あっさりと強い執着を持つと音は宣言して見せた。

『何なら鳥籠には針を取り付けようか?中で動く度に君の血が見れるよ?』

 何処と無く発言が危なくなって言っている、それに答えるよづはは何等変化は無い。いや、嬉しそうだ。

『一方的だな、そのくらいのほうがいいが。生憎、私は『攻め』だからね。拷問に近いものを君は受け取れるかい?』

『俺は『受け』も『攻め』もいけるよ。君を『受け』にしてあげるよ。』

 途中からわけが解らなくなってきた。ひとつだけ。

  

    こいつらは危ない


 それだけは認識できた。

『生憎、【愛】やら【恋】やらは理解しがたい。お前は私に教えることは出来るか?』



『調教してあげるよ』

 その返答に沈黙が流れる。

『……途中から話が噛み合ってない気がするのは気のせいか?』

『気のせいではないヨ、でも、通じてる。』

 暫くして、大体の人間が状況を認識し始めた。

 

 よづはのほうが、告白を断る理由が無くなった。


 それだけは解っていた。

『(不純異性交遊は禁止だ!解っているのか!)』

 スピーカーから微かに教師の声が聞こえた。その声に返答する。

『…別にセックス目的じゃないんだからいいじゃないの?』

『下らん、何が不純なのかを返答してもらおうか。』

 よづはの言葉に教師は返答をしない




 暫くして、教師の声が聞こえた。


 

『(大体、告白自体が嘘っぽいぞ。そいつは軽すぎる。)


『まあ少し、信じられんな。俺に告白なんぞするとは。』

『【愛の】って付けてよ。唯のカミングアウトみたいじゃないか。…じゃあ、血の盟約ぽいのする?』

『お互いに相手の手首を切って血を交える………とか?』

『それいいネ』

『ここに、教会から授かったナイフ持っている。』

『俺は神社の手伝いで貰ったお守りの小型の真剣持ってる。』

 都合よく、お互いに刃物を持っていた。

 お互いに刃を抜いたのか金属音がする。




『っ、』

『いっ』

 声から察するに、初めがよづは、次に音と来るのだろう。

『随分と』

『深く切ったネ~』

 同じ事を思ったのだろう、お互いの言葉がつながった。

『合わせるぞ。』

『いつでもどうぞ。』

 マイクの前でして居るのか。ヌチャ、と音がする。

『血が綺麗だね。流れている感覚が気持ち好いヨ』

『こうして見ていると、血が交わっているな。性行為に近いんではないか?』

『あれも血を通わせるものネ~』

『これも命を作っているみたいだ。』

『快感まで感じるからセックスと同じじゃないのかな?』

『今、同じ事を言ったが…』

『そう?』

 スピーカーで和んでいる雰囲気が伝わる。

『止まらないネ』

『お互いに深すぎたか?』

 言っている事の割に二人は落ち着いていた。

 スピーカーの向こうから騒ぐ声が聞こえる。

 ドアの破壊する音と教師の騒ぐ声。


『おい、何をやって』

『ちょっ、まてえええええええええい!!!!!!!!』

『にゃほ~』

『騒がしいな、』

『そりゃ、止血!!!!止血!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

『先生、おちつい…』

『ちょっと!気絶しないでください!!!』

『この程度で気絶するものなんだネ~』

『軟弱だな』

『血!!血の海!!!』

『二人とも!!保健室!!!!!!!いや救急車!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

『せんせーマイク切らなくていいの?』

『先程から教師の情けない騒動が流れているぞ』

『中では解んないけどネ』

『えっ、どう切るんだ』

『ええっとねぇ、鋸でネ』

『そっちの【切る】じゃない!!!!!』

『ここだろう』

 よづはの声がした後、スピーカーからの音が切れた。が、次の瞬間には音が流れてきた。

『良く知ってるネ』

『時間までマニュアルと実際の設備を照らし合わせていたからな』

『止血!!!』

『五月蠅いネ』

『ハンカチが染まったんだ』

『いいから、このタオルを!!!!』

『傷口にくっ付いて剥がす時に痛みを伴うので』

『遠慮する~』

『マイクは切ったんだな!?』

『いや?』

『良く見てヨ、ランプ点いてるヨ?』

『切って、点けた』

『切れ!!』

『やり方覚えなかったのか?』

『なっさけねぇ』

『教師に向かってなんて』


『口の聞き方に気をつけな下種』

『教師とかあんま関係ないと思うよ』

『『要は実力だ。』』

 その後、放送は切れた。

 噂は絶えることは無かったが、二人はあまり気にしない性格だったため。何も無かったらしい。


 その後から、二人で授業を遅刻するようになり、『この人紹介だよ~』は放送されなくなった。


放送室の染みは取れなくなったらしい、



   (密かに、その染みの欠片を持つか放送室で告白すると確実に両思いになれるという噂も広まった。リスクが高いのであまりしないが)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ