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a girl

作者: ゆき


可愛い女は”一番”可愛くなければダメ。


もうすぐやってくる年下の彼女は必ず可愛い。

たとえ”一番”が私でも、あのこより可愛い私ではダメ。

だからきっと今がシオドキ…




”一番”可愛いだけの私はシオドキ




一人で歩けば、すぐに「送ってく」と声をかけられ

何かにつけて「今日も可愛い」と言われる。

それは変わらないだろうけれど。


なんだかイライラしてたから

まだ早いのに、ベッドに連れて行きたがる手を払ってごねてみる。

それすら可愛いと言うように、抱き上げられていつもの通り。



明日は隣に住むユウジさんにドライブに連れて行ってもらおう。

ユウジさんは、よくママの作るお酒を飲みながら

仕事の話をしにウチに来るけれど、私を女として見てはくれない。



マンションの前に、時間通りにシルバーの車が止まっていた。

「リサちゃん、急にどうしたの?めずらしいね、嬉しいけど。」

「なんとなく。」

「そっか。…もうすぐだね、楽しみ?」

「なにが?」

間が空いた。男にセダイコウタイを感じる女の気持ちなんか分からないわ。

「私が先輩になるってこと?」

「先輩か、リサちゃんらしいね。」

「オネェーチャン、なんて呼ばせないわ。」


この人は私を決して遠くへ連れて行かない。

見なれた風景を車の窓越しにぼんやりと眺める。


「僕は楽しみだけどね。きっと可愛い子だよ。」

「だから嫌なの。」

「ははぁん、彼女に注目が移るのが嫌なのか。」

「違うわ。」


違うの


”オネェーチャンのリサちゃん”とか

”年上の方”とか、私に余計な言葉をつけてほしくない。

私は何も変わらないのに、なぜ誰かと比べられなければならないの?

”可愛いリサちゃん”だけではいけないの?


「私は今の私のシオドキなの。」

「今の自分の潮時…ね。周りが変われば、自分も変わらざるを得ない。

大人になると、もっといろんな自分を作らなければならないんだよ。」

「子供扱いしないでよ。」

「失礼失礼、でもリサちゃん。君はこれからもっと成長して、いろんな自分を知って、良い女になるよ。」

「…これ以上?」

「男はね、好きな女の知らない一面に興味を持つもんだ。」


キキッと車が止まった。

ママが待っていた。


ユウジさんが私の背中に触れる。

「今の自分を捨てる必要はないんだよ、

僕の前では今まで通り、ただ可愛い”リサちゃん”だからね。」


ポンっと背中を押されて車を降りる。


「ユウジさん、御免なさいね。リサが我儘言って。」

「良いんですよ、楽しいデートでした。」

ママは車の中にいるユウジさんに向かってぺこりとお辞儀をした。

ユウジさんも二コリと返すと、マンションのエントランスに誰かを見つけて手を振った。


「よぉ、ユウジ!悪いなあ、リサはお前のこと気に入っているから。またウチに飯食いに来いよ。」

「独り身には嬉しいお誘いで。またお邪魔しますよ。」


車はマンションの駐車場に向かって走り出した。

私はいつものように抱き上げられて、うとうとし始める。



可愛い女は”一番”可愛くなければダメ。



”一番”可愛い私はシオドキだけど

妹ができたら、可愛いだけではない私になれるかな…

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― 新着の感想 ―
[良い点] 等身大の女性の心情が伝わってきて よかったと思います [気になる点] 情景描写がもっとあってもいいと思います [一言] 自分とタイプの違う人の心情なので おもしろかったです
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