40話:皇帝クロノ
帝都ユーニス、自分が指名手配されたときは、この街に来ることになるとは思ってもいなかった。
街門に近づくと衛兵に呼び止められる。
「ユーマだな?」
「ああ、そうだ」
レイノスは皇帝の下まではスムーズに行けるようにしてると言っていたが……。
「皇帝陛下がお待ちだ、帝都は広い故、我々が案内する」
なるほど、道案内か、確かに帝都は初めてなので助かる。
あまりいい思い出がない魔導車に乗り、王宮を目指す。
キキィー。
数分ほどで魔導車が止まった。
「着いたぞ、王宮だ」
「ああ、助かったよ」
俺は魔導車を降り、高くそびえる王宮の尖塔を仰ぎ見た。
気を引き締め、王宮へと入っていく。
「皇帝陛下は謁見の間でお待ちだ、この通路を真っ直ぐ進め」
王宮の衛兵に促され俺は、謁見の間へとまっすぐ進む。
「ようやく来たか……」
謁見の間には漆黒の鎧に全身を包み、白銀の王笏を持った男が待っていた。
「……皇帝クロノ」
「場所を移そうか、ここではお前も力を存分に振るえまい」
コンッ。
皇帝が王笏で床を鳴らすと、謁見の間の床だけが下がっていく。
広大な地下、その奥には巨大な次元の亀裂が開いていた。
「500年前、剣士達が命を賭して封印した亀裂だ、お前のユニオンソードの記憶にはこの光景は記憶されてないだろうがな……」
(これが次元の亀裂、ユーノの記憶で見たものよりも大きい!)
「間もなく、この封印は解ける。お前が虚無に挑むに足るものか見定めさせてもらうぞ、さあ構えろ」
ゾワッ。
皇帝の体から魔力が放出される。
俺はユニオンソードを構え、皇帝に相対した。
(皇帝の武器は剣じゃないのか?)
俺が疑問に思っていると、皇帝は王笏を振り、巨大な火球を無数に放ってきた。
「魔導兵装!?今更そんなもので!」
俺は火球をかいくぐり皇帝に接近する、しかし皇帝は凄まじい速度で、距離を取り、円周状に高速移動しながら、雷撃、火球、冷気、を纏った錬成剣を無数に飛ばしてくる。
「飽和攻撃ならどうにかなるとでも!」
俺は凍絶盾を展開し全てを受け止める。そして雷の魔力を滾らせ皇帝を追撃する。
ガキィィン!!
俺の一撃を皇帝が王笏で受け止める。俺は蒼炎剣を発動しさらに押し込もうとするが、皇帝は王笏を巧みに操り俺の力を逸らして、また高速飽和攻撃を仕掛けてくる。
(一度受け止めてからの反撃では、皇帝の反応が間に合ってしまう……なら!)
俺は無数に襲い掛かる錬成剣を弾き、躱しながら加速して皇帝に迫る。
「一撃で決める!瞬雷蒼炎爆風!」
ディメンションギアで三つの魔力を制御しながら、今使える最大の融合剣を皇帝にぶつけた!
ズガァァァン!!
皇帝は吹き飛ばされ壁にたたきつけられた。
「見事だ……ここまで身に着けていたか」
「これで認めてくれるのか?」
「フ……ハハハハ!馬鹿を言え、これはレイノスに対する褒美みたいなものだ」
「な!?」
皇帝の漆黒の鎧がバラバラと崩れ落ちていく。白銀の美しい髪、そして水色の瞳。
「ユーノ!?……髪の色は違うが」
「お前もそう見えるのか、タキオンソードのクロノも俺のことを見た時そう言ったが余程似ているんだろうな」
(皇帝の雰囲気がさっきまでとは違う、威圧感が減ったがこれはなんだ?)
「不思議そうだな、俺は7代皇帝ゼロ、タキオンソードに継承されてきた歴代皇帝の記憶を引き継ぎ、この国を統治してきた。効率よく統治するために初代皇帝クロノが生き続けているように見せていただけだ」
「その王笏もユニオンソードと似たような機能があったのか」
「王笏の形も魔剣廃棄法の為の偽装に過ぎん。これが本来のタキオンソードだ」
今まで杖だった部分が刀身に変わる。長大な白銀の剣が皇帝には握られていた。
「そして先ほどまでの俺は、レイノスの魔導技術を試していただけだ。ここからが本当の時剣術だ。一撃で死ぬなよ?」
皇帝ゼロの宣言が終わった瞬間、俺は切り裂かれていた。
「流石はサイファーが作ったユニオンフレーム。頑丈だな」
「な、何も反応できなかった……」
「そうだろうな、俺とお前では時間が違う、時剣術は全ての頂点、他の剣技など足元にも及ばん。そして俺はタキオンソードにより時剣術を120%引き出すことができる。細切れになる前に対応してくれよ?」
銀の線が閃く、その度俺は切り裂かれる、ユニオンフレームは丈夫だが確かにこのままでは細切れにされてしまう……。
『小僧、お前も時剣術は使えるだろう。」まごまごせずに力を解放しろ』
ユニオンソードからクロノの声が頭に響いた、確かに今の俺は以前とは違う、時剣術を使っても意識を失ったりしないはずだ。
キィン!
初めてゼロの剣を受け止める。
「ようやく、入門したか、手加減をするのも疲れるんだぞ?」
(今まで手加減してたのか!?こいつ、どこまで!)
次の瞬間今までとは比べ物にならない斬撃が振り下ろされる。
俺は軌道を読み何とか躱したはずだった。
ズシャァッ!
今度は俺が壁に叩きつけられることになった。
「ゴフッ!本当にさっきまでの斬撃は手加減していたのか……」
「まだ、死んでいないな?融合剣士がその程度では興醒めだぞ?」
(くっ、時間の加速には対応できていたはずだ、なんでさっきの斬撃は当たった?ゼロの方がさらに加速していたのか?いや違うあれはこっちが遅くされたような……いやできるのか!)
「ほう、何かに気付いたようだな?では行くぞ」
ビシュッ!
ゼロの鋭い、それでいて圧倒的な魔力が込められた斬撃が迫る!俺は回避しながら斬撃の速度を落とすように集中する。
「時剣術は時間を操るというが、戻すことはできん。だが、止めることはできる」
「!?動きが」
ガギィ!!
何とか受けることができた。
「止めると言ってもそう長くはできないみたいだな」
「それが人間の限界という事だろう。さあこれでイーブンだな?どうやって俺を超える?」
超高速の斬撃をお互いに放ち受け止め、躱し、弾かれるように距離を取る。
(確かにこのままでは決着がつかない、時剣術をぶつけ合ってるだけでは絶対にゼロを倒すことができない。ならば!)
俺は時剣術を使いながら風と雷の剣術を組み合わせゼロの動きを先読みする。
ドゴォ!
初めてゼロに攻撃を当てる事ができた、これなら!
「そうきたか、そうでなくてはな!」
ゼロの姿が歪む、さらに速度が上がった!だが演算と力の流れを見る力があれば対応できるはずだ!
「どうした?ユニオンブレイカーの力はそんなものじゃないはずだ!完成させているのならその力を俺に見せろ!!」
(そうか、ゼロはずっと見たかったんだ、ユニオンブレイカーの完成を!)
俺は全ての魔力を練り上げユニオンソードに注ぎ込む、ユニオンフレームが魔力供給をサポートし全身のスリットから虹色の光を放つ、そしてディメンションギアが変形しサークレットからフルフェイスに形を変える、ユニオンソードの刀身が開き虹色の光剣を作り出す。
「これがユニオンブレイカーだ!」
ブォン。
シュゥゥン、ズドーーーーン!
虹色の光が空間を断ち、地面を抉り取る。
ゼロはどうなった?
「これが、次元断か。避けても余波で鎧が砕けるとはな……。タキオンソードは無事か、無事だな」
「皇帝ゼロ、まだ戦るか?」
「いや、お前の力は十分見せてもらった、俺も虚無への備えがある。ここで死ぬわけにはいかない、お前もいきなり皇帝殺しとして追われたくないだろう?」
「それは確かに」
「それにまだ力の制御が万全ではないみたいだしな。今すぐ虚無と戦えたら良かったんだがその様ではな」
言われてみて初めて気づく、俺は魔力が空になっていた。ユニオンアーマーの魔力機関があれば魔力切れは起こらないはずだが、どうにも力の使い方が下手だったらしい。
「封印が解けるまで、まだ2か月はあるはずだ。それまでに完璧に使いこなせるようになっておけ。俺も国を挙げて虚無との決戦の準備をする」
俺は裂け目を見る。
「あそこから虚無がやってくるのか?」
「そうだ、そして各地に小規模な亀裂を起こし侵攻して来るだろう。そしてその亀裂を破壊できるのはお前のユニオンブレイカーだけだ。虚無の化け物どもを斬るだけなら俺でもできるのだがな、無限に湧いてこられてはどうしようもならん。間に合わせろよ?」
「わかった、必ず虚無を滅ぼしに戻ってくる」
「ああ、頼んだぞ」
俺はゼロにそう約束し、力の制御を完成させるため帝都から故郷の集落を目指した。
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