39話:サイファー
重い扉をくぐり、遺跡の中に入ると、薄暗い通路が続いていた。
通路には無数のケーブルが張り巡らされており、時折脈打つように紫の光が走っていた。
「まるで、何かの体内に入ったみたいだ」
遺跡の中には特に仕掛けや罠などはなく、すんなりと奥の扉にたどり着けた。
扉には取っ手やくぼみなどはなく、少しユニオンソードを手に入れた遺跡を思い出す壁のような場所だった。
俺が近づくと、紫色の光のラインが灯り、ゆっくりと扉が上下に開閉した。
扉の奥の光景に俺は息をのんだ。
そこには上半身だけがあり腰から下は全て機械のケーブルが繋がれた歪な人のようなものが中心にいたからだ。
「よく来たな、ユーマ、予測より、一刻ほど遅かったが、それは誤差だな」
「サイファー……なのか?」
「ディメンションギアを作るのに普通の体では時間が足りなくてな、このような姿で迎えることになってしまって驚かせてしまったかな?」
「あ、ああ、まずあんた自体が生きていることに驚いてる、500年経ってるはずだ」
「そうだな、あれから500年、ギリギリ間に合ったと言える。250年ほど前に魔剣廃棄法を制定していなければ間に合わなかっただろうな」
「まってくれ、魔剣廃棄法はあんたが作ったのか!?」
「そうだ、全ては融合剣士の才能を持つものに、事前に魔剣技を身につけさせないためだ。ユニオンソードの使い手はまっさらでなければその記憶と経験に耐えられないからな」
「俺のようなものを見出すために?魔剣廃棄法がどれだけの人を弾圧してきたと思ってるんだ」
「必要な犠牲だった。ユニオンソードが完成しなければ、虚無にすべて滅ぼされてしまう。私には他の方策を見出すことができなかった、そしてユニオンソードを継承した君は、その犠牲を無駄にしないため、完璧な使い手になる必要がある」
「……あんたは!」
「憤る気持ちは虚無との戦いに使ってくれ、さてディメンションギアを継承する前に、雷剣技の真髄を身に着けてもらおうか」
サイファーがそういうと景色が一気に変わり、目の前の機械につながれたサイファーは消え、過去の記憶で見たサイファーその人が立っていた。
「どうなってるんだ」
「仮想空間だ、君の意識だけここに連れてきている。ここなら全盛期の私で相手をすることができるからな」
「俺の能力も再現できているのか?高速演算はさっきレイノスで対策済みだぞ」
「不出来な末裔と私の雷剣技を一緒にしてもらっては困るな。ああ君の能力を制限したりはしてないから遠慮なくかかってきてくれ」
俺はサイファーが高速演算を駆使して来ることを見越して、雷の魔力を体に滾らせた。
「……サイファーの動きが読めない!?」
「当然、遥かに演算で上回る存在の行動を読むことはできんぞ。ユーマ、お前の演算は遅すぎる、それに雷の魔力を演算にしか使えていない、真の雷剣士は演算をしながら、雷剣技を使う」
その言葉を俺は最後まで聞けなかった、紫電と化したサイファーに切りつけられて吹き飛ばされていたからだ。
「現実なら一回死んでいるな。だがここは仮想空間だ、何度でもやり直せる」
(なんだ……俺とサイファーにそこまでの差はないはず、いや雷剣術だけだと500年のキャリアの差がここに出てるのか!)
「さあ、早くかかってこい。私に歯が立たないようでは皇帝に相対した瞬間、切り飛ばされるぞ」
俺はさらに雷魔力を滾らせそして、風剣技でサイファーの力の起こりを見て対応しようとする。
だが、そこで見たものはまた紫電に吹き飛ばされる自分の姿だった。
「自分のやられる姿は演算できるようになったようだな、さあもう一度だ」
(これは剣技の純度の戦い……雷剣技に全てを集中するしかない!)
他の事を考えずただひたすらに高速演算をする、そして紫電の行方が……見えた!
ガキィィン!
初めてサイファーの剣を受け止めることができた。
「ようやく演算は追いついてきたようだな、だがそれでは防戦一方だぞ?」
電光石火の剣閃が何度も襲い掛かる。
サイファーの言うとおりこのままでは防戦一方だが、徐々に余裕が出てきていた。
何度も弾き、時には躱し……そしてついに。
ビシュッ!
俺の放った紫電の一撃がサイファーの姿を捕えた!
「見事だ、ユーマ。お前は雷の真髄をつかんだ」
その瞬間仮想空間は崩れ去り、もとの機械遺跡に戻った。
「ユーマ、私から伝えられることはもうない、さあディメンションギアを受け取るといい」
そう言うとサイファーの体から、サークレット状のものが取り出された。
「私はこれを完成させるのに500年もかけてしまった、不甲斐ない私を許してくれ、ユーノ。そしてユーマ、虚無を今度こそ滅ぼしてくれ。頼んだぞ」
俺がディメンションギアを受け取ると、サイファーの体は崩れてゆき粉となって消えてしまった。
「サイファー、あんたのとった手段は今も認められないけど、その執念は受け取ったよ。虚無は必ず滅ぼして見せる」
俺は覚悟を決めると、機械遺跡を後にし、帝都の皇帝の下へと向かった。
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