36話:嘆きの断崖
目を覚ますと俺はユニオンソードを握り締めていた。
「ユーノ、大丈夫か?」
「ああ、サイファー。今記憶と経験の転写が終わったよ」
(ユーノ?サイファー?そうかこれはユニオンソードの記憶を見せられているのか。)
荒々しい男が口を開く。
「これで全員の技と知識が受け継がれたわけだ」
(この人は炎の剣士ライオウか?)
「タキオンソードでの検証は済んでるとはいえ8人もの情報を入れるのは初めてだからな、まだ何が起こるかわからん」
「心配しすぎだよサイファー、僕には何の悪影響もない、この剣なら融合剣術を完璧に使えると思う」
「そうか、なら、ユニオンフレームを装着してくれ、君の融合剣術を更に強力にしてくれるはずだ」
白い全身鎧をユーノは身につけていく。
「これは凄いね、魔力を鎧自体が生み出してくれるんだ」
「そうだ、融合剣技による次元干渉には莫大な魔力が必要だそれは人間だけでは賄うことができないからな」
「防御力も俺とマユラできっちり装甲を作ったからな、虚無の先兵の攻撃くらいじゃびくともしないぞ」
(大地の剣士ドーガ、さっきまで大地の迷宮で話してたから不思議な感じだな)
「でも内側からの力を逃がさないことが主な機能だからあまり過信しないでね」
(この剣士がマユラか、少しティアに雰囲気が似てるな)
「ユニオンソードの準備はできたようだな、大陸南部の虚無の軍勢を蹴散らしに行くぞ」
(聖剣士ヨハン、八剣士の纏め役か)
「一息ついたばかりだってのにもう戦いに行くのかいヨハン?」
「シュルツ、世界は危機的状況だ。一息付けたなら十分な休息だろう」
「ユーノ、本当に行けるのか?」
「大丈夫だよ兄さん、ようやく僕の修めた剣技が役に立つ時が来たんだ、調子がいいくらいだよ」
(あれが今は皇帝のクロノ。最強の剣士……)
八人の剣士は己の魔剣を握りしめ出発した。
戦場は混沌としていた。聖剣士達が防衛線を敷いているが、虚無の先兵に圧されていた。
「不味いな、まずは防衛線の強化だ。マユラ頼む!」
ヨハンの指示が飛ぶ。
「わかったわ、氷晶壁!」
マユラは無数の氷の壁を出現させ物理的な障壁を強化した。
「よし、壁を維持してくれ!私は聖縛封で壁を乗り越えてえ来た虚無の尖兵を抑える!」
「守りはヨハン達に任せて俺たちは突っ込みますか」
「そうだなシュルツ、俺たちは突っ込むしか能がないからな!」
「ライオウ、あまり深く入り込みすぎるなよ。今回は次元の亀裂の破壊が目標だ敵の殲滅じゃないからな」
「亀裂に行くまでの敵は、倒さにゃあかんだろうよ」
「それは俺と、サイファーが、一番効率よく殲滅できるから、お前たちは大物を中心に狙ってくれ」
「あー、あれをやるのね了解。じゃあ巻き込まれないように立ち回るわ」
「シュルツ。お前はそんなこと気にしなくても当たらないだろう」
「買いかぶりすぎだよサイファー、風剣術も万能の防御じゃないんだぜ」
「そうか、じゃあ射線に入らないようにしてくれ」
「軽く流してくれるよね、じゃあ行きますか!」
シュルツとライオウは防衛線を飛び越え、虚無の巨兵に向かっていく。
ライオウの爆発的な火力と、シュルツの変幻自在の剣技で、巨兵たちは次々と倒されていく。
「よし、巨兵は削れたか。サイファー。錬成雷尽でいいな?」
「ああ、尖兵にはそれで十分だ、数が多いからな。なるべく多く錬成してくれ」
「さりげなく無茶を言ってくるな」
「私は、出来ないことを頼んだりはしないさ」
「違いない」
ドーガは空中に無数の魔剣を錬成する。その一つ一つが素晴らしい出来だが、今回は使い捨てだ。
「少し足りないな、もう少し増やしてくれ」
「あいよ」
サイファーの一言で魔剣が空を覆うほどの量に達する。
「演算完了。雷撃付与!」
「「錬成雷尽!」」
サイファーとドーガの融合剣技が炸裂する。無数の雷撃を纏った魔剣が、虚無の尖兵を追尾して次々と貫いていく。
「よし!道は開けたぞユーノ!」
「わかった!」
虚無が湧きだす、亀裂にユーノは走り出す。だがその時亀裂から、虚無の巨兵をも上回る新たな虚無が亀裂を守るようにして現れた。
「これは、初めて見るタイプだな。こいつは俺が相手をするから、お前は亀裂の破壊に集中しろ」
「兄さん!気を付けて」
「誰に言っている?俺に敗北はない」
その言葉の後、クロノの姿は搔き消え、虚無の精兵は亀裂から吹き飛ばされた。
ユーノは深く息を吸い込み、集中した。
「ここで、僕が亀裂を破壊できれば、虚無との闘いは、勝てる戦いになるんだ。失敗は許されない」
魔力を高め自分の中にある全ての剣技の理をユニオンソードに込める。
七つの光が剣に奔り、剣身が分かれ、魔力の本流そのものが、刀身として形作られる。
(ユニオンソードが変形した!?)
(ユニオンブレイカー。これがユニオンソードの真の姿だよ)
「ぐ……ぐっぅ……」
ユニオンブレイカーから放たれる荒々しい力に振り回されながらも、亀裂へと集中する。
メキメキッ!
ユニオンフレーム、いや自分の体の中が、音を立てて崩れていくのを感じる。
「亀裂よ!消え去れ!」
次元を裂くほどの魔力の奔流を亀裂に一気に叩きつけた。
ズシャャアアアアン!
閃光が空間を切り裂き、そして音を消し去った。
「ユーノ!」
クロノが虚無の精兵を打倒した時、ユーノが岩塊に叩きつけられるのが見えた。
「ユーノ!大丈夫か!」
「兄さん……亀裂を……切り裂けたんだ……」
「ああ、ここの亀裂は消滅した。お前はやったんだ!」
「よかった……これで、これからは亀裂を壊すことが……できるね……」
「そうだ、これからが大切だ、だから早く治癒するんだ。ヨハン!」
「ごめん……兄さん。わかるんだ……僕の体は……もう、使いものにならないってことが……」
「そんな、そんなことはない!聖剣技ならなんとかなる!」
「兄さん……僕はもう……ユニオン……ブレイカーを……完成……させて……」
「ユーノ!目を覚ませ!ユーノ!ユーノォォォォォォ!」
クロノの慟哭が、ユーノの意識が無くなると同時に俺の耳からも遠くなっていく。
そして俺の意識はまた闇に包まれた。
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