22話:再戦
《バーストゲイル》から一人の男が静かに降り立つ。
黒い魔導鎧に身を包み、右手には雷魔導兵装。左手には無敵の盾――
帝国魔導技師レイノス。
俺の、そしておじさんとティアの師が敗れた、宿命の敵だ。
「……久しぶりだね。ユーマ君、で合っていたかな?」
柔らかい口調。けれどその瞳には、冷たい硝子のような光しかなかった。
「大陸に戻ってきてくれて嬉しいよ。東方までわざわざ出向くのは骨が折れるからね……ふふ、手間が省けて助かった」
相変わらず……よく喋るやつだ。
俺は無言でユニオンソードを抜き放ち、剣先を低く構える。
「どうして俺が東方にいたことを……?」
「言っただろう? 君のユニオンソードが発する魔力波は、常に我々が観測していると」
レイノスは片手を上げて、空を仰ぐ仕草をした。
「プラド山脈を越えて風の渓谷に向かった時点で、確信はしていたよ。西山港に入った記録もある。……我々の“観測網”を、少し甘く見ないでもらいたいな」
「……余裕そうだな」
剣先をレイノスへと向け、俺は一歩前に出る。
「確かに、あんたには以前……完膚なきまでに叩きのめされた」
喉奥から、自嘲にも似た悔しさが湧き上がる。
「でも、あの時の俺とは違う。風と炎を繋ぎ、仲間と剣を交えてきた――」
「もう、お前には負けない」
静かに、けれど確かな決意を込めて、俺はそう言い放った。
「それは楽しみだ」
レイノスが口元だけで笑う。
「そちらのお嬢さんと二人がかりかな?」
「レイノスッ!」
ティアが咄嗟に前へ出ようとする。その腕を、俺はそっと制した。
「ティア……下がっていてくれないか」
「えっ……」
「こいつの《ステイシスシールド》を破るには、かなりの出力が必要だ。余波があるかもしれない」
一瞬、ティアの瞳が揺れる。だがすぐに悔しさを飲み込み、静かに後ろへと下がった。
「……そうね。今の私じゃ、あの男に有効打を与えられない。あなたの邪魔になるだけだもの……」
後退しながらも、ティアの目はレイノスを睨み続けていた。氷のようなその視線は、いつか届く日を信じる刃だった。
「ふん。ステイシスシールドを破る? 随分と大きく出たものだな。そんな芸当、お前にできるとは思えないが……」
レイノスの嘲笑を無視して、俺はユニオンソードを構える。
「……!」
魔力が集中し、刀身が紅く燃え上がる。
《蒼焔剣》――炎の剣術の極致。燃え盛る魔力が剣から噴き出し、俺の両目を朱に染め上げる。
「ほう……随分と、派手になったね」
レイノスは冷たく言い放つと、右腕の魔導兵装――**《デミ・イクス・フルグル》**を構えた。
装置の中心部に雷が蠢き、次の瞬間――
「炎の剣術など、私には通用しない。出力がどうであれ、ね――」
ビシュンッ!
雷光が閃き、空気を焼くような鋭い音とともに、数本の雷槍が俺へと放たれた!
バシュンッ! ビシュゥゥッ――ッ!
複数の雷槍が空を裂き、俺に向かって一直線に放たれる。
だが。
「……遅い!」
俺は一歩も動かず、ただ風を読む。
風剣術の極致――雷の動きすら、風の流れとして見える。
左目が輝く。
翠の光――風の剣士の証。
(雷の力も……風のように見える。なら、避けられる)
俺の身体は、風そのもののように雷槍の合間をすり抜けた。
「なにっ――!?」
レイノスの顔に初めて、驚愕の色が浮かぶ。
「だから言っただろ? もうお前には負けないって」
俺は蒼焔剣を高く掲げる。
その刃に、風の魔力を纏わせていく。
紅と翠――炎と風、対極の力が一つに溶け合う。
荒れ狂うエネルギーが俺の身体を軋ませるほどだが、もう制御できる。
「――蒼焔爆風!!」
全力の一撃を、レイノスの《ステイシスシールド》に叩き込んだ。
ズゴォォォォォン!
爆風が地を揺るがし、赤と翠の光が空を染める。
バキバキバキィィィ!!
あの絶対防御――《ステイシスシールド》が、音を立てて崩れていく。
「な、なにィィィィッ!?」
そのまま刃は止まらず、レイノスの左腕ごと《ユニオンアーム》を粉砕した。
「ぐああああああああッッ!!」
レイノスが地面を転がり、左腕を押さえて叫ぶ。
(ば、馬鹿な……これが融合剣技の力だというのか……私が、私の魔導兵装が……!)
血を流しながら、憎しみに染まった目で俺を睨みつける。
「ぐっ……うう……ユーマ……! 私は……戻ってくるぞ……必ずなッ!!」
レイノスは苦悶の声を残し、《バーストゲイル》へと逃げ込む。
魔導機関が唸りを上げ、黒煙を吐きながら戦場を後にした。
風が吹く。
風が、俺の成長を称えるように吹き抜けていった――。
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