18話:再び大陸へ
「ユーマ、刀を手に入れたけど――次はどこに行くんだい?
東方の中なら、あたしの《海刃丸》でどこでも連れてってやるよ!」
カンナが胸を張ってそう言った。
俺は緋色の刀をそっと腰に収めながら、少しだけ空を見上げる。
「……次の目的地か」
思えば、ここまで走り続けてきた。
魔剣を見つけ、追われ、戦い続けて。やっと手に入れた“相棒”――でも、それはまだ旅の通過点にすぎない。
すると、後ろから聞こえてくる馴染んだ声。
「俺のおすすめは《風の渓谷》だな。
《プラド山脈》の北側にある、風剣術の発祥地だ」
おじさん――リュウガが腕を組みながら真面目な顔をして言った。
「ユーマ。お前、化け蟹様との戦いで――ほんの一瞬、炎と風を混ぜて使ってただろう?
あのときの“斉爆剣”、ユニオンソードが風を重ねてアシストしてたはずだ」
「……うん、なんとなくそんな気がした」
あのときの違和感――いや、手応え。
風が絡んだとしか思えない“爆炎の軽さと鋭さ”が、確かにあった。
おじさんは言葉を続ける。
「《ステイシスシールド》は、炎剣術だけじゃ破れねぇ。
レイノスに絡まれても倒せるようにしたいなら――風と炎の融合剣術を身につけるしかねぇ」
レイノス。
あの恐ろしい魔法技師がまた現れたら……今度は、確実に倒さないといけない。
「……行こう、風の渓谷へ。
今の俺なら、きっと“風”も、使いこなせる気がする」
「よっしゃ!じゃあ決まりだな、海刃丸を出すぜ!」
カンナの笑顔と共に、新たな旅が幕を開けた。
西山港への帰りの航路は、不思議なくらい穏やかだった。
空も海も静かで、あの《化け蟹様》との激闘が、もうずっと昔のことのように思える。
「東方……いろんなことがあったなあ」
俺は甲板に腰を下ろし、ぼんやりと水平線を見つめていた。
炎の刀を手に入れ、風との融合を目指して――次の舞台へと心を整えていく。
「西山港に着いたよー!!」
カンナの元気な声が船内に響く。港の姿が視界に入り、ついさっきまでの冒険が終わりを告げる。
「ありがとう、カンナ。本当に助かった」
「なに、お互い様さ! あたしは《化け蟹様》に挑んだって自慢できるしな!」
カンナは満足げに胸を張り、俺に拳を突き出してくる。
「これからプラド山脈に行くんだろ? さすがにそこまでは船じゃ行けないけどさ――また東方に来たときは、いつでも《海刃丸》に乗りに来てくれよな!」
「ああ、絶対行く。またな、カンナ」
俺が手を振ると、カンナもにっと笑いながら拳を振り上げて応えてくれた。
そのとき、背後からおじさん――リュウガが静かに声をかけてきた。
「ユーマ。……ああ、それでなんだがな。ここからは俺は付いていかん」
「え? なんで?」
思わず振り向いた俺に、リュウガは照れくさそうに笑って答える。
「正直、もうお前は俺の実力を超えてる。《蒼焔剣》まで使えるようになったしな。師匠としてはもう出る幕じゃねえよ」
おじさんの笑顔は、どこか誇らしげで、そして少しだけ寂しそうだった。
「それに、風の渓谷は俺じゃ役に立たん。あそこは風の才能がある者しか進めない。俺みたいな炎一筋の剣士は置いてけぼりってわけさ」
港のざわめきの中で、おじさんの声が妙に静かに響く。
「ま、俺は村に戻るつもりだ。……また会いたくなったら、いつでも来い。まあ、お前が俺を訪ねてくるようなことも、もうないだろうがな」
「おじさん……」
言葉が詰まる。だけど、俺は頷いた。
「……ありがとう。ここまで、ずっと支えてくれて」
「礼を言うのはまだ早いさ。せいぜい、風の剣士になってからにしてくれ」
そう言って、リュウガは背を向ける。背中は大きく、頼りがいがあって――でも、どこか軽くなったようにも見えた。
新しい刀を腰に差し、俺は港をあとにする。
次の目的地は、プラド山脈の北側――《風の渓谷》。
風と炎、その融合の剣を求めて。
最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!
もし、ちょっとでも「面白いじゃん!」と思っていただけたら、 ↓の【★★★★★】を、ポチっと押して応援していただけると、作者が、本気で泣いて喜びます…!
ブックマークも、ぜひぜひ、よろしくお願いします!
また次回、お会いできるのを楽しみにしています!




