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10話:皇帝

 帝都ユーニス――それは中央大陸の中心に築かれた、帝国最大の都市である。


 その基礎は、かつて大地剣士たちの手によって形作られたなだらかな丘陵地の上に築かれている。都市は円形構造をなし、四方に分かれた地区ごとに役割が分担されていた。


 東区は玄関口にして商業の中心

 西区には一般市民の生活圏が広がり

 南区には帝国軍の拠点が構えられ

 北区には王宮が聳え、帝国の政治が執り行われている


 それぞれの区画は、雷剣士たちが築いた魔力路を走る魔導列車によって結ばれており、都市内の移動は迅速かつ容易である。


 さらに東区の外れには**魔導船(飛行船)**の発着場があり、帝都と帝国各地、さらには聖都を結ぶ主要交通の拠点としても機能している。


その帝都の南口――軍用ゲートに、一台の魔導車<バーストゲイル>が轟音とともに帰還した。


「レイノス様! 任務お疲れ様です。ただいまゲートを開放いたします!」


 若い守衛が敬礼しながら、迅速に魔力ゲートを解錠する。


 <バーストゲイル>はそのまま帝国軍の基地へと入り、滑らかに駐車される。


 レイノスは一言も発さず、足早に降車するとそのまま王宮への道を急いだ。


 王宮の重厚な扉が軋みをあげて開かれ、レイノスは静かに謁見の間へと足を踏み入れた。


 玉座には、漆黒の全身鎧に身を包んだ皇帝――クロノが、威風堂々と座していた。

 その姿は闇そのもののようで、顔を覆う兜の奥から、低く響く声が響き渡る。


「……レイノス、帰還したか。」


 レイノスはすぐさま片膝を突き、恭しく頭を垂れた。


「はっ。ただいま戻りました、陛下。残念ながら――ユニオンソードの回収は果たせませんでした。」


 わずかな間を置いて、クロノが答える。


「良い。……些事に過ぎん。」


 その言葉に、玉座の空気が一段と重くなる。


「それよりも――使い手はどうだった?」


 レイノスはゆっくりと顔を上げ、落ち着いた口調で所感を述べる。


「剣士としての腕は――まるで素人。魔力の制御も稚拙で、基礎がなっていませんでした」


 そこで言葉を一拍置き、続ける。


「……ですが、剣との同調率は高く、いくつかの魔剣技を問題なく使用していました」


 そして、腰から外した自身の盾<ステイシスシールド>を軽く掲げ、傷跡を見せる。


「加えて、私の<ステイシスシールド>を貫く――“時剣術”と思しき技も確認しました」


 その言葉に、皇帝クロノはわずかに瞑目し、重々しく呟く。


「……時剣術、か。ついに“兆し”が現れたか」


 レイノスはその言葉にうなずき、静かに追従する。


「はい。私も――これはサイファーが導き出した“融合剣術”の適合者の現れではないかと、そう見ています」


 皇帝クロノは、静かに命を下した。


「レイノスよ、盾を修復し――融合剣士が基礎を鍛えるまで、追跡は一時中止せよ」


 レイノスはわずかに眉を動かしながらも、すぐに頷く。


「泳がせるのですね……了解しました。そのように」


「ああ。だが――次に相まみえたときは、手加減は無用だ」


 漆黒の兜の奥から、冷ややかな声音が響く。


「お前の全力に耐えられぬようなら……その程度ということだ」


「はっ。では――魔剣所持違反による、指名手配の方も進めてよろしいでしょうか」


「構わぬ。魔剣狩りに討たれる程度の者ならば、そこで終わるだけのこと」


「報告はそれだけだな? ――では、もうよい。下がれ」


 皇帝の低く響く声に、レイノスは深く一礼すると、静かに謁見の間を後にした。


 そして――翌日。


 ユーマは「魔剣所持違反」の罪で帝国全土に指名手配され、

 名を持たぬ魔剣士狩りたちの標的となるのであった。

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