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【連載版投稿しました!】聖女ですが、王子に浮気されて捨てられました。呆れたので、私は辺境でセカンドライフを送ろうと思います。ちなみに王都の結界は私にしか張れないものですよ?

作者: 夜分長文

連載版始めました!下記にリンクがあります!

「シセリア! お前との婚約は破棄させていただく!」


 二人きりの空間にて、私はルヴィン王子に婚約破棄を宣言された。あまりにも突然だったから、少しばかり動揺してしまっている。


 顔を上げて、ルヴィン王子をもう一度見る。


 彼の可愛らしい誰からも好かれるような顔が、私に向かって侮蔑の表情を浮かべていた。


「理由を聞いても?」


 深呼吸を置いてから、そう聞く。ただ深呼吸をしたからか落ち着いてきて、かなり冷静になってきた。


 ルヴィン王子はにやりと笑い、嘲笑してくる。


「それはな、お前が国の聖女であるのに何もしていないからだよ!」


 私はルヴィン王子の言葉を聞いて、少し考える。聖女であるのに何もしていない、か。


 確かに、私はルイセント王国で聖女をしている。しかし、聖女である以上は全て仕事をこなしているわけで、実際問題魔物の襲撃だとかそういうのは発生していなかった。


「仕事は……していますが」


「してないね! だってお前、ずっと寝ているじゃないか!」


 そこまで言われて、やっと理解する。


 私が国家に結界を維持する方法について、王子は文句を言っていたのだ。


 私、シセリアが結界を維持する方法はただ一つ。


 それは「眠ること」だった。


 そもそも結界を維持するということは、つまり常に集中して監視を続けるということである。


 他の聖女とかは、定期的に結界を見て回って壊れそうなところがあれば張り直すということをしている。


 けれど、それではいつ壊れてもおかしくはない状況だ。


 なので私は、常に結界に魔力を送り続けて、そういうのが絶対に発生しないようにしている。


 その手段が「眠り続ける」ということなのである。


 私は何度もルヴィン王子に伝えていたはずなのに、何も理解されていなくてため息が漏れた。


 そもそも、私たちの関係に無理があったのかもしれない。


 実のところ、私は日本からの転生者である。


 前世は社畜アラサーで、死にそうになりながら毎日仕事をしていた。


 気がついたら死んでしまっていて、この異世界の少女として生まれた。


 若くして才能があった私は、十二歳になる頃には聖女に任命され、若い王子と婚約することになった。


 だが、王子も私と同い年である十四歳。


 精神年齢だとか諸々はかなりの乖離があった。


 しかも、王子というだけあって権限はかなりある。


 だから……こうなるのは最初から分かっていたのかもしれない。


「ですが、婚約破棄といってもそんな勝手なことはルヴィン王子でも」


 私が言いかけると、待っていましたといわんばかりに王子がにやりと笑う。


 その瞬間、部屋の扉がガチャリと開き、見覚えのある美しい少女が入ってきた。


 少女はルヴィン王子の隣に立ち、にこりと笑顔を浮かべる。


「新しい婚約者ならいるんだ! アンナ、お前の妹だよ!」


 私はアンナを見て、嘆息してしまう。確かにルヴィン王子とアンナと仲が良いなと思う瞬間が多々あったが、まさかここまで進展していたとは。


「父上も母上も納得しているんだ。後任の聖女もアンナになる。つまり、お前は本当に用無しってことなんだ」


「そう、ですか」


 ここまで進んでいたのなら、私から言うことはもう何もない。


 ただ……アンナが私の後任になる……というのがあまり想像できないけれど。


 あの子は正直、聖女としての適性はかなり低いと思うが。


「それでは、今までありがとうございました」


 私はくるりと踵を返し、扉に手をかける。


 一瞬後ろを見ていれば、二人は楽しそうにキスをしていた。


 私がいるのに……よくできるものだ。


 まあ、別にいっか。


 私は転生してから、ずっと聖女がなんだとか、婚約がなんだとかで自由じゃなかった。


 逆に言えば、今私の第二の人生が始まったとも言える。


 よし、今日から私は自由に生きるぞ。



 王都から出ている馬車に乗り、私は辺境に向かっていた。行き先は特に決めていない。御者さんにお金を出して、この金額で行ける限りの遠い場所へとお願いしたからだ。


 馬車内は静かで、のほほんとしていてなんだか落ち着く。


 微かに当たる風がこんなにも気持ちいいと思ったのは久しぶりだ。


 だけど……少し問題があった。


「君……どっかで見たことある気がするんだよね」


 一緒に乗り合わせた、よくわからない男性がじっと私のことを見てきていたのだ。


 私は全力で顔を逸らしながら、知らないふりをする。


「いや、やっぱあるよ。なんだっけ、いや、やっぱないかもしれないな」


 ないのかよ。


 私は苦笑してしまっていると、ふとちらりとその人を見てしまう。


 金色の美しい髪に、青い瞳。細身でありながらも、腕からはほどよく筋肉がついているのが分かる。


 正直、かなり顔はいいと思う。


 少なくとも、よっぽどルヴィン王子よりかは良い方だ。


「そんなに見ないでください、気でもあるんですか」


 私が言うと、男は慌てて訂正する。


「いや! そんなつもりは本当にないんだ! まあ……気のせいだったのかな。俺、顔覚えるの苦手なんだよね、はは」


 そう言いながら、男は頭に手を当てて笑う。


「えーと、俺はウェイド辺境伯。この馬車が最後に着く場所の領主をしているよ」


 ウェイド辺境伯……聞いたことがある。かなりの変わった人であり、王家からの評価は散々である。だが、領民からの評判はかなり高く……まあ王家から嫌われて左遷された貴族と言ったところだ。


 どうしてそんな人がこんなところに……と思うが、大方王都に何かしら呼び出されたのだろう。


「でも、君はどうしてこの馬車に? 王都の人たちは、間違いなく乗らないから珍しくてね」


 まあ、それもそうか。王都からウェイド辺境伯の旅行だとかは聞かないし、あったとしてもたまにある帰省程度だろう。


「えーと、ちょっと田舎で暮らしてみたくて」


「へぇ〜……にしては、荷物ないね。というか、ほぼ手ぶらに見えるけど?」


 さすがは貴族と言うだけある。その辺りはかなり鋭いようだ。


 私が押し黙っていると、ウェイド辺境伯ははははと笑う。


「なるほど、ワケありか! いいよいいよ、俺んとこの領民はそういうのが多いからね」


「ありがとうございます」


「礼儀いいねぇ嬢ちゃん。礼儀がいいのはいいことだ」


 ずっと楽しそうに笑っているウェイド辺境伯。脳天気な人ではあるが、悪い人ではなさそうだ。


「ただ〜……嬢ちゃん、少し運がないね。多分何も調べずにうちの領地にしちゃったでしょ」


 ウェイド辺境伯が申し訳なさそうに言ってくる。私は少し分からなかったので首を傾げた。


「いやね、最近うちの領地魔物が酷くてね。冒険者ギルドも必死に対応しているんだけど、少しばかりキャパオーバー気味で、対応が追いついていないんだ」


 なるほど、そんなことがあったのか。王家で働いていると情報が入ってきそうではあるものの、国王が嫌っている場所は、そもそも途中で情報が止まって入ってこなかったりする。


 つまり辺境伯領は今、かなりヤバイ状況と言ったところである。


 ただ、それなら都合が良い。


 恩を売るなら今である。


「それなら、私がなんとかします」


「え、え? いや〜さすがに嬢ちゃんじゃどうしようもない気がするけど……」


「まあまあ、大丈夫ですよ。ただ……一つだけお願いが」


「なんだい?」


 私は冷静に伝える。


「ぐっすり眠れるベッドを用意してください」



 ウェイド辺境伯領に到着した私は、街のど真ん中に立って目を瞑る。


 端では、ウェイド辺境伯が不思議そうに見守っている。


 私は深呼吸をして、魔力を研ぎ澄ます。


 そして——結界を発動する。


 私の周囲から眩い光が満ち満ちて、私を中心にドーム状の結界が広がっていく。


「おおおお! これは……」


 ウェイド辺境伯が感嘆を漏らす。


 私は気にせず結界を広げ続け、ついには領地全てを覆うことに成功した。


 私はくるりと振り返って、ウェイド辺境伯に終わったことを伝える。


「き、君……もしかしてあの……まあ、いいか。ワケありはいくらでもいるんだ。君は君として受け入れるよ。ここまでしてもらっちゃあ、何も言えないしね。歓迎するよ」


 ウェイド辺境伯は優しげに手を差し出して、にこりと笑う。


 私はウェイド辺境伯の手を握り、笑顔を浮かべる。


「ええ。ワケありとして、お世話になります」


 こうして、私のセカンドライフが幕を開けた。



◆◆◆


 宮廷内は騒がしい。兵士や使用人たちが、血相を変えて走り回っている。


 それは、ルヴィン王子も同じだった。ルヴィン王子は冷や汗を流しながら、現在の状況を振り返っている。


「シセリアを追放して一日……たった一日で、王都周辺の結界が破壊された……!?」


 ルヴィン王子は隣にいるアンナを見据える。


 アンナは何度も結界を張り直そうとしているが、何も上手くいっていない。


「な、なんで……姉にできて、わたしにできないなんて……!」


 ルヴィン王子は絶望する。


 このままでは、王都は魔物や魔族、敵対諸国からの攻撃に間違いなくさらされる。


 だが、もう何もできない。どうしようもないのだ。


 なんたって、もうシセリアはいないのだから。


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