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懐古


 億劫だった。

 口元に作った笑みを浮かべて。心にも思わない言葉を紡ぐ。

 そんな自分を、眼下に広がる彼等は尊敬の眼差しで見上げてくるのだろう。

 それが酷く億劫だった。

 ――億劫に、なるはずだった。


 平伏する官吏達の前に立った時、目が吸い寄せられた。同色の黒の中に、それは明らかに異質だった。

 外から差し込む日の光が、その色を格段に明るく見せていた。きらきらと綺麗に輝く、灰色。その色を持つ髪は細く、遠目にもさらさらとした手触りだろうと分かった。


 もはや自分が何を喋っているのか分からない位、その髪に見惚れていたのを覚えている。

 ただ、その髪、というか頭、は始終ゆらゆらと揺れていた。時々がくっと激しく落下し、慌ててまた元の位置に戻る。何だかそれが可愛らしくて、ぜひとも顔が見たくなった。

 最後に官吏達が立ち上がってこちらに拝礼する時を待ち構えて、灰色の髪を持った官吏の顔を見ようとしたが、他の官吏にまぎれて見えなかった。あれ程官吏達を忌々しく思った覚えはない。

 

 まあとにかく、簡単に言ってしまえば一目惚れだった訳だ。

 綺麗、だとか可愛い、だとか、今思えば例えそれがただの髪の毛だったとしても、誰かを見てそんな風に思ったことはない。

 

 全てを壊してしまった今になっても、あの灰色の輝きは忘れられない。

 だからきっと、どうなるか分からないこれからの未来でも、忘れられないのだろう。





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