品定め
私は宝石を加工する職人以前に商人である。
品をよく見て価値を見出す、それが自分の日常になじみ過ぎて忘れていたこと、親愛なる友に改めて思いださせられたこと
観察
宝石であればどのような光方をするのか、どのような物質からできているのか、どのような色を出すのか。
それをいま私は人間の子供で実践をする。何を考えどのように動きどのような目をするのか。
椅子に座っている、一日中、何もせず何もしゃべらず、飯は私が席を外した時に食べているようだ。
飯が奪われるとでも思っているのか、もしくは食べているうちに襲われるとでも思っているのか。
前者は違う気がする、奪うも何も作って言うのは私だし飯はあの子の目に付くところで作っている、奪うのであれば最初から与えなければいいだけの話。
後者に関してはまだ、納得がいく、ただ、目に見えて体格が違うのだ、襲う。のであれば軽くねじ伏せればすぐに抑え込めてしまう。
私の飯を食っている分何も言わぬが、せめて感想くらいは聞き出したい。私はあの子のことを何も知らない、なぜスラムで生活をしていたのか、なぜあのスラムにいて穢れのない何にも侵されていない目を持っていたのか。
願わくば聞き出したい、孤児だからスラムにいたといわれてしまえばそこまでだが、あの子の目は今まであってきたモノたちのどこにも属さない目を持っている、あれだけ悪いモノのはびこっているスラムで過ごしていたにしては汚れがなさすぎる。
次の日、私はこの子に仕事を見せることにした。普段立ち入りを禁止していた工房の戸を開いて手招きをした。
最初は警戒しているのかなかなか入ってこなかったが私が中に入り途中まで加工してある商品を手荷物と恐る恐る中に入ってきた。
宝石の加工の仕方、見極め方、今まで私が磨いてきたそのすべてを説明しながら見せた。
説明しながらふと視線を向けると好奇心にあふれた眼を輝かせている。
あの時見た目とはまた違う輝きを持った眼。
一通りの作業を説明し作業を終えたころには太陽が頭の上にあった、
「めしにしよう」
そういうと私は料理をするために台所へと向かった
さっきから腹の虫がうるさいのだ。
「工房に合った宝石のうち一つをやろう料理が完成するまでに選んでおけ」
そういうと私は鼻歌交じりに料理を始めた。
私の好きなものを作ろう、あの子に私の好きなものを知ってもらうことも大切だと思った。
朝作った野菜と豆のスープを火にかけ温めなおす。
ライ麦パンとスモークサーモンのサンドイッチ
まずパンに塗るソースから作る、玉ねぎをみじん切りにし水にさらす、ある程度付けたら水気を切る。
シブレットを小口切りにしたら水気を取ったヨーグルトと牛乳を加え混ぜ塩を加え味を整える。
次にスモークサーモンと胡瓜を薄く切りトマトを輪切りにする。
さっき作ったソースをライ麦パンに塗り切った具材を挟めば完成だ。
簡単な料理だが、私の好物だ、師が好きだった…
そろそろスープも温まるころだ、あの子を呼びに行こう。
あの子はこのサンドイッチを気に入ってくれるだろうか。
「そろそろ飯ができるが欲しい宝石は決まったか?」
あの子は一つの加工された宝石を持ってきた。
高い宝石は売りに出した後だったし前に仕入れたものは背の届かない棚に隠した。
だから大丈夫だと思っていた、あるのは安価なものだけだからと、、、
あの子が手にしていたのは私の師の形見だった。
この琥珀の腕輪が欲しいと、、師の形見だ、さすがに渡せない
子の腕輪は師から託された未完成の腕輪なのだ。
完成させることは今はないがなぜかずっと手放せずにいる琥珀の腕輪だ
「すまないがそれはだめだ、他のものにしてくれ」
私の言葉にあの子は首を強く振った。
これがいいのだと
これ以外はいらないのだと
あの透き通るような眼差しで私を見てくる。
そのんじぇを見ているとだんだんイライラしてきた。
昔の私を見ているようで無性に腹が立つ、とても不愉快だ。
「いい加減あきらめてくれ、それはとても大事なものなのだ、他のならどれでもいい、ほら、何がほしい?」
何度言ってもかたくなに首を振るだけで離そうとしない姿に不快感は増すばかりだ。
仕方なく力ずくで回収するほかないと手を伸ばした時、強く払いよけられた。
その時私は反射的に
手を出してしまった…