原石は磨かねばただの石
宝石は光に照らされ輝くが、美しさをさらに引き出すには職人の技が必要になる。
緻密な計算に始まりからっと方法の選択とカットしさらに磨くことできれいに光り輝く素晴らしい宝石になる。見習いの時、師に言われたことがある
「至高の宝石には心がある」
呟いてみたが未だに私にはわからぬのだ、それがわからねば真の宝石商にはなれぬと、
なるつもりなど私にはないのだ。現状に満足しつつ、冒険などせず今日を生き明日を迎える。
まぁ、、、今日に限り不確定要素多々あり、、、か。
(どうして拾ってしまったんだろうな、、こんな子を)
目の前の光景に少しばかりの不快感を覚えつつ私は少年に言った
「なぜ飯に手を付けぬのだ」
私は多少なりとも料理ができると自負している、少なくともまずくは作っていないはずだ、根菜類と干し肉のスープ、それにライ麦のパン。
この子は言葉を紡ぐことができない、、、いや、、紡ぐことができるだけの感情が育っていないようにも感じる。
皿は下げない、食べるかもしれないから、自分の工房でもあり自宅であるこの場所も今は少し居心地が悪い。
「仕方ない」
そうこぼし今日手に入れた原石を手に私は立ち上がった。
(たまには夜風にあたりながら加工方法を考えるのも一興か、、)
「私は夜風にあたってくる、食えそうなら食え、無理なら残せ」
そういうと私は部屋を出た。
今宵は夜風が少しばかり肌寒い。
(子供の感情は分からぬものだ、親としての在り方も愛すらも私にはわからぬ、しかし母の唄は好きだった、もう歌詞など覚えていないが、、、)
癖のあるどこかの国の民謡を鼻歌で歌いながら一人の男は夜の街を歩む。