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関さんが迎えに来てくれた

 自分の部屋へ戻り、俺は着替えた。

 飯を食おうとリビングへ向かうと親父と母さんの姿が無かった。姉ちゃんだけがいた。ラフな格好でくつろぎ、テレビに映し出されているバラエティ番組を見ていたようだ。ああ、姉ちゃんが好きな水曜か。



「なんだ姉ちゃんだけか」

「なんだって、なによ」

「あー、いや。親父と母さんは?」


「なぜが激怒していた母さんがお父さん連れていっちゃった。どこへ行ったか分かんない」



 きっと地獄に連れていかれたのだろう。こりゃ、しばらく帰ってこないな。

 俺の代わりに親父にお灸をすえてくれるのなら、ありがたい話だ。きっと明日にでも帰ってくる。そう信じたい。


 キッチンに置いてある晩飯を食べ、俺は食事を済ませた。その後、風呂に入ったり、まったりとした時間を過ごした。


 なんやかんや時間は過ぎていき……深夜を迎えていた。


 自室にあるベッドでゴロゴロしていると強い眠気に襲われた。スマホに何か着信があったように見えたが、チェックしている余裕はなかった。


 気づけば俺は夢の世界へ……。



 * * *



「――起きろ。純、起きろー!!」



 俺の体を激しく揺らす誰か。

 ん……誰だ。


 まだ眠いんだ、寝かせてくれよぅ。



「……ぐぅ」

「ぐぅ、じゃない! 純、あんたの連れが来てるの! さっさと準備を済ませて顔を出してあげなさい!」



 ああ……なんだ、姉ちゃんか。

 慌しい口調でどうしたんだ。

 連れ?

 そんなヤツ俺にはいないんだがな。



「むぅ……?」

「むぅ、じゃないって。あんな可愛い女の子、純の知り合いにいたっけ? ていうか、彼女?」


「へ……。まさか」



 まさかあああああああぁぁぁぁ…………!?



 俺は飛び起きた。

 そんな可愛いとかいう女の子は、俺の知る中で一人しかいない。



「純、連れの子は家に上がらってもらってリビングにいるから」

「お……おう。直ぐに準備を済ませる」

「てか、あの子とどういう関係?」

「あとで説明するから」



 超高速で着替えていく俺。

 身だしなみを整え――完璧に。

 寝癖よし、顔も問題ない。


 たった四十秒で仕度を終えた。まさに神業! なんて自画自賛している場合ではない。きっとリビングには関さんがいるんだ。


 待たせるわけにはいかない。



 準備を終えた俺は、リビングへ。



「お、おはよう……関さん」

「おはよう、有馬くん。朝からごめんね、お邪魔しちゃった」


 今日も可愛い笑顔を向けてくれる関さん。制服姿も麗しく、可憐だ。


「まさか、家に来てくれるなんて」

「ほら昨日、鬼塚公園の近所だって言っていたし、有馬くんの家の目の前を通ったからね」


「そうだったか」

「迷惑だったら謝る」

「いや、ちょっと驚いたけど嬉しいよ。それに気軽に家に来てくれていいよ。許嫁なんだし」


「良かった。わたし、どうしても有馬くんに会いたくて」



 会いたくて……なんて嬉しいことを言ってくれる。その言葉に俺も嬉しいよ。関さんって、もしかして俺のことを本気で好きで……。

 いや、もちろん俺も関さんのことが好きだ。大好きだ。


 この気持ちを言葉に出来るタイミングがないけど、いつか……早い内に打ち明けたい。


「……そ、そか。なんだか照れるな。さ、さて……ちょっと早いけど学校へ行こうか」

「そうだね、ゆっくり行こっか」


 立ち上がると姉ちゃんが目の前に立ち、阻んだ。目が()わっていて怖いぞ。



「ちょっと、純。この子を紹介しなさいよ!」

「あー、そうだった。姉ちゃん、この超可愛い女子は同じクラスで、隣の席の関さんだ」


 紹介すると姉ちゃんは、目が飛び出しそうなほど驚いていた。



「そ、そうだったの!?」

「はじまして、有馬くんのお姉さん。わたしは関 咲良と申します。彼とは“許嫁”なんです。これからお世話になります。


「い、い、許嫁~~~!? ど、どういうことよ!!」



 俺の胸倉を掴んで叫ぶ姉ちゃん。

 知らなかったのかよ。


 親父のヤツ、姉ちゃんに内緒か。



「親父が決めたことだ。俺も知らなかったんだよ」

「そ、そんな! 純……あんた、それでいいの!?」


「いや、関さん可愛いし、俺のことをちゃんと見てくれるし、話も面白いし、優しくて明るいし、今日だってわざわざ迎えにきてくれた。大切にしたい」



「か…………」



 姉ちゃんがなぜか白目になっていた。壊れたオモチャみたいにガタガタ震え、青ざめていた。なぜえ!?



「どうした姉ちゃん?」


「かああああああああああああああああ!! 私の前でのろけるなああああああああああああああ、ああああああああああああああああああああああああ!!!! このクソ陽キャ野郎がああああああああああああ!!」



 えええええええええええ!?


 姉ちゃんが発狂した――――!?



 これ以上、この場に留まっていれば包丁で一突きにされそうなので俺は関さんの手を取り、家から脱出した。



「ちょ、いいの?」

「姉ちゃんはもうダメだ。サイバーサイコになってしまった」



 ……姉ちゃん、男が出来たこと一度もないようだからな。俺と同じ、陰キャな部類だし……そりゃ、俺がこうなったら発狂するよな。許せ、姉ちゃん。


 家を出て、俺は走った。


 公園を抜けてようやく関さんを二人きりになった。



「……有馬くんのお姉さん、大丈夫かな」

「心配しなくても大丈夫さ。姉ちゃん、切り替え早ぇから」

「そうなんだ。でもいいなぁ、あんな美人なお姉さんがいるなんて」


「そうかなぁ。姉ちゃんは大雑把だし、殴ってくるし、罵ってくるし、裸でうろつくし、ロクなもんじゃないぞ」


「仲いいんだね」

「どうしてそうなる! まあ……悪くはないけど」



 そんな話をしていると交差点に差し掛かった。


 だが、そこで見覚えのある車が猛スピードで接近してきていた。



 え……あの車。



 こっちへ突っ込んでくるぞ……。



「ねえ、有馬くん……」

「関さん! 危ない!!」




 ドォオオオオオオオオオオオオオオオオン…………!!!!!




 辛うじて関さんを押し倒して、車を回避した。……あっぶな、ギリギリだったぞ。

 車がビルに突っ込んでしまった。


 おいおい、マジかよ。


 こんな朝から交通事故だなんて……ん、まて。


 この車は以前、関さんと子猫を引きかけた車と同じ車種だ。



 乗っている人物は……え。


 は?



 魚谷……。なんで……コイツが?

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