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わたしのファーストキス、あげるね

 身構えていると親父はこう言った。



「純、お前が本当に咲良ちゃんのことを愛しているか証拠を見せろ」


「…………へ。はぁ!?」


「それが条件だ。ちなみに手を繋いだり、ひざまくらする程度では許さんぞ。キスを目の前で見せれば信じてやろう」



 ……キ、キスぅ!?


 キスで愛を示せって、そんな無茶な!!

 俺と関さんはまだそこまで進んでいない。手を繋ぐのでも精一杯だったのに。それに、ひざまくらだって――ん?


 ちょっと、まて。

 なんだか違和感を感じるぞ。


 手を繋ぐ……ひざまくら?



 って、まさか!!



「親父! どこから見ていやがった!!」

「さ、さあ……なんのことかな」



 少し焦りながらも親父は誤魔化しやがった。これは見られていた可能性が非常に高いな。ということは逃げていたわけではなく、俺たちの監視をしていたのか……?

 ぜんぜん気づかなかったぞ。


「つか、キスなんて目の前で出来るか! 関さんがめっちゃ困ってるだろう」

「わ、分かりました。愛を証明する為にキスします!」


「って、ええッ!? 関さん!?」


 困るどころか全然乗り気だった。

 いいのかよっ。


 ……そ、そりゃあ嬉しいけど。



「いいよ、有馬くん。わたし、いつでも心の準備できてるから」

「……し、しかし」

「だって、そうしないと……理由が聞き出せないんでしょ?」


「それはそうだけど、親父の口車に乗ってやることはないぞ。今じゃなくても……」

「今しかないと思う。だから、ね?」


 目の前に寄ってくる関さんは、優しい瞳で俺を見つめた。心を浄化するような可愛い笑顔がそこにはある。身長差のせいか、少し上目遣いな視線が愛おしい。


 俺は……俺は。


 関さんの肩にそっと手を置いた。

 かすかに身を震わす関さん。

 表情は笑顔だけど、本当は緊張しているんだ。


 しかも、親父が見ているから余計に。


 くそっ、親父がいなければロマンチックな瞬間なのだが……。


「……関さん」

「どうぞ、有馬くん。わたしのファーストキス、あげるね」



 ファーストキス……だって? はじめてなんだ。そういえば、誰とも付き合ったことはないと言っていた。俺が関さんのはじめてを貰える……嬉しいけど、その情報を耳にして、俺は更に震え始めていた。



「おい、純。ガチガチではないか。それでは雰囲気がでないぞ」

「う、うるさい……。親父のせいだろうがっ! 止めるなら今だぞ!」

「なんだ止めて欲しいのか。だがダメだ。さあ、誓いのキスをしろ!」


 クソ親父……これが終わったらブン殴ってやる。


 ……とにかく、俺は真実を知るために……いや違うな。俺は本気で関さんが好きなんだ。この気持ちを伝える。


 関さんは察したのか(まぶた)を閉じた。



 俺はゆっくりと顔を近づけていき――『ゴオオオオオオオオオオンッ!!!』――と、鈍い音が響いて、ビックリした!!



 な……



 なんだ!?



「なにやってんだい、アンタ!」



 いつの間にか親父の側に見知った顔がいた。その女性が親父の後頭部目掛けてチョップしていたのだ。頭蓋骨が折れるような物凄い音だったけど!?


 ――って、よく見れば母さんじゃないか!



「か、母さん!!」

「純と咲良ちゃんに何をさせようとしていたの!」

「いや、これは、その!!」


 慌てる親父だったが、耳を強引に引っ張られて連行されていく。



「とにかく、こっち来な!」

「いで、いでででででで!! 母さん、耳、耳が引きちぎれるぅ!!」


「うるさい! だいたい、アンタは今までどこで何をしていたの!!」

「ギャアアアアアアアアアア!!!」



 今度はコメカミをグリグリされ、親父は口から魂抜けて轟沈していた。……同情はできないな。散々俺たちに迷惑掛けやがって。


 理由は聞けなくなったけど、これで良かったんだ。



「……い、行っちゃったね。今の有馬くんのお母さん? 美人だね~」

「そ。母さんの方が強いんだ。それより、ごめん」


「なんで謝るの? それとも、続きする?」

「……っ!」


「いつでも待ってるからね。きょ、今日のところは……帰るね」



 照れ隠しするように背を向ける関さんは、走って行ってしまった。……い、今の。いつでも待ってるってマジかよ。


 案外、キスはいけたのかもしれない。惜しいことをしたなぁ。



 家へ戻って玄関に入った瞬間、スマホに着信があった。関さんからだ。



『今日はありがとね。すごく楽しかったよ。また明日学校で』



 可愛い猫のスタンプと共に、そんなメッセージが。


 ……嬉しすぎるッ!

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