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ひろったえんぴつ

作者: 温故知新

「あっ……」



 算数の授業でクラスメイトが課題の計算ドリルの問題を黙々と解いている中、僕はお気に入りの鉛筆を落としてしまった。


 ヤバい、みんな計算ドリルに夢中だから声をかけることは出来なさそうだし、先生も自分の机で難しそうな顔をしながら何かしてる。

 でも、よりにもよって今日持ってきている鉛筆はこれだけだから、早く拾って問題を解かないと!


 授業が終わるまでに解かないといけないページまであと少しだった僕は、内心焦りながら落ちた鉛筆を拾おうと手を伸ばした。


 すると、反対側から女の子の手が伸びてきて、綺麗な手でそっと鉛筆を拾い上げた。



「これ、君のだよね?」



 驚いた僕はゆっくりと顔を上げると、そこにはクラスで1番可愛い女の子が不安げな顔をしながら小首を傾げていた。



「うっ、うん……あり、がとう」



 彼女に一瞬見蕩れた僕は、小さく首を縦に振ってお礼を言うと、彼女から恐る恐るお気に入りの鉛筆を受け取った。

 すると、彼女は僕に向かって小さく微笑んで頷くと、再び机に向かって真剣な表情で計算ドリルに集中した。


 そんな一連の動作に再び見蕩れていた僕は、受け取った鉛筆に小さく力を入れると残りの問題を解き始めた。


 授業終わったら、ちゃんとお礼を言おう。


 そんな決意を胸に計算ドリルの問題を急いで解き終えた僕は、授業が終わるほんの僅かな時間を今か今かと待ち構えていた。


 それが、僕と今の奥さんが初めて交わしたまともな会話だった。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


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