婚約破棄?了解致しました。雌猫を追いかける馬鹿など願い下げです
王国の女性は大切にしなければならない。虐げたり、非難すればその報いは自身に返ってくるのだと、女性は大切に扱い、愛の言葉を囁かなければならないと父であるヒェルカ国王は常々俺に言っていた。それなのに、俺達は浮気をし、あろう事かパーティー会場で婚約者に婚約破棄を告げていた。
「リナリア・マーシャル公爵令嬢!この場を以てお前と婚約破棄する!」
リナリアの婚約者である、ヒェルカ王国王子である、エドモンド・ヒェルカが声を上げた。
「サリィ・エモリナ侯爵令嬢!お前と婚約破棄する!」
サリィの婚約者のビダル・ナダル公爵令息が同じく声を上げた。
「シルビア・カールマン侯爵令嬢!お前と婚約破棄する!」
シルビアの婚約者のマーロン・グーダツ侯爵令息も同じく声を上げた。
3人の男性が3人の女性に婚約破棄を同時に告げた瞬間だった。
「「「何故でしょうか?理由をお答え下さい」」」
3人の少女達は婚約者に尋ねた。
「「「お前達が結託して可愛いエリナを虐めたからだろうが!!!」」」
3人の後ろには小柄な少女がひっそりと隠れていた。エリナ・ブロウ男爵令嬢だ。
「何を言われるのかと思えば……。そちらの雌猫の話ですか」
「エリナに向かって雌猫とはなんだ!!!」
「雌猫は雌猫ですわ。盛りが付いてるから他の雌猫よりタチが悪いですわね」
「ひ、酷い!盛りがついた雌猫だなんて…」
エリナが瞳に涙をいっぱい溜めていた。
「「「そ、そうだ、エリ…っぅ!?」」」
先程婚約破棄を告げた3人の男性達が再び声を上げようとした次の瞬間倒れ込んで苦しがっていた。
1人は顔面を殴られ、1人は内臓に強力なパンチを喰らわされ、残りの1人は男の大事な部分を蹴り上げられていた。
「こんな場所で婚約破棄だと啖呵切るのも大概にしてくださいな!貴方達自身に何の力も無いくせに」
「大体雌猫と一緒に盛りがつくなんて…。みっともない…」
「婚約破棄して差し上げますわよ。でも今後、貴方方の婚約者になる方の為にも教育が必要ですわね」
リナリアがパチンと指を鳴らすと執事が書類を持ってきた。リナリアはその書類を読み出した。
「5月8日、エドモンド殿下は生徒会室でエリナ嬢とキスをしていた。その後エリナ嬢にヒールで踏んでもらい興奮していた。
5月17日、ビダル様は庭園にてエリナ嬢の胸に顔を埋めて喜んでいた。
5月18日、マーロン様はエリナ様に甘え赤ちゃんプレイをしていた。
報告を読むだけでもクソったれ共ですわね…」
「そ、そんなの嘘よ!デタラメよ!捏造よ!」
「そ、そうだ!嘘だ!」
4人が騒ぎ立て声を上げた瞬間会場のドアが開いた。
「一体何事だ!」
婚約破棄騒ぎを聞きつけた親達が会場入ってきた。
もちろん其々の親達だ。
「「「俺達はこの場で婚約破棄を申し出ました。父上達も認めて下さい!」」」
「な、何を言ってるんだ!」
「俺達は弱い人を虐める人間を妻にはできません!」
「「やめろ!それ以上言うな!」」
父親達は息子達の言葉に真っ青になっていた。
「貴方達の婚約破棄を認めます!」
顔色の悪い父上達を差し置き母親達の代表である王妃が声を上げた。
「流石母上!ありがとうございます!」
「母上などと気軽に呼ばないで!!」
「は?何故ですか?」
「雌猫と浮気をした挙句、婚約者を悪者にして婚約破棄を告げる息子を持った覚えはありません。今この場限りで親子の縁は切ります。親でも子でもありません」
「王妃様の言う通りです!!
浮気をして自分に正義があると思えるなんて……。そんな息子などいりません。気色悪い」
「王妃様やお嬢様方が可哀想だわ」
「浮気をした代償がどんなものか、父親達は教えなかったのかしら?」
「本当に。それぞれ賠償などもこれから大変でしょうね」
「でも結婚後じゃ無くて良かったのですわよ」
「それにしてもあんな品の無い雌猫の何処が良かったのか?全く分かりませんわ」
「確か市井の出で、母親がブロウ男爵と再婚した為、男爵令嬢になったのよ」
「だから頭に花が咲いて盛っていたのね」
母親や貴婦人達の話を聞いていた3人は父親達に助けを求めた。
「父上、縁を切るなんて間違いですよね?」
「間違いでは無い。ソフィア達が決めた事だ。覆ることはない」
「お前達には小さな時から女性は大切にしろ、非難するな、愛せとあれほど教えていたのに……」
「若さゆえの過ちでは済まないのだ。我が国では浮気の罪は重いのだ。何故結婚後、側室を持つ事にしなかったんだ」
「結婚は貴族の義務だ。だからこそ母親が決めた婚約者や正妻を大事にしなければいけないんだ。大事にすれば、側室を持つ事も認められていると言うのに……」
「あの方達は嫡男だから好きに決めて良いと思ったのでしょうね」
「世間知らずは怖いですわね」
「貴方達、何故兄弟が多いのか、考えた事はある?」
「それは両親が仲良いからで……」
「それはね、ロクデモナイ男に爵位を譲らないためよ。一人だけだと馬鹿息子でも跡取りにしないといけないけど、何人も居れば選ぶ事ができるもの」
「貴方達の父親が貴方達の年齢の頃、真実の愛だって叫んで婚約破棄する者が多かったのよ。その結果、毒婦を妻にして国も家も傾きかけたわ。持ち直したのは婚約破棄された女性達が立ち上がったからなのよ」
「二度と同じ過ちを繰り返さない為に、後継者や婚約者を決める権限は各家の長老会が決めた女性が持つ様になったのよ」
「これからは、平民として暮らしていく他ない。私達の誰も助けてやる事は出来ない。自身の力で、そして平民仲間として友と力を合わせ生きていくのだ」
「「「そ、そんな……」」」
馬鹿息子達は完全に力が抜けていた。
「ブロウ男爵は爵位を返上して頂きます!
馬鹿息子に色目を使う雌猫の親には責任を取って頂きます」
「お、お父様。どういう事なの?」
「お前のせいで爵位は無くなり皆平民になるのだ!この馬鹿娘!」
「貴族じゃ無くなるなんて……。そんな……」
「さっさとその者達を連れて行きなさい!」
衛兵達は両脇を持ち会場から連れて出た。このまま市井に放り出されるのだろう。
「リナリア嬢、サリィ嬢、シルビア嬢、馬鹿な息子に代わりお詫びします。貴方達には今後私達がしっかり見極めた婚約者を紹介致します。もちろん其々に賠償もいたします。この国の為にこれからも頼みましたよ」
「「「はい!」」」
三人はカーテシーで会場を後にした。
ヒェルカ王国では世代世代で馬鹿息子が婚約破棄を叫んだが、その都度女性達に粛正されていた。
真実の愛などない。愛とはお互いへの思いやりである。
この作品を読んでくださってありがとうございます!
お手間ですが評価頂けると制作活力になりますので、お願い致します!
2週間ぶりの投稿です。喘息が出て頭が回らずなかなか投稿出来ませんでした。薬が効いたのでまたぼちぼち投稿していきます。