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鷹弘短篇集  作者: 鷹弘
4/15

『クリスマス』

「良い子のクリスマス」

 サンタさんはね、いい子のところにしかやってこないんだよ?



「先生!またあの子が僕のおもちゃを取った!」


 僕を指差しながら、彼が泣き叫ぶ。


 泣くなんていけない子だ。泣いたら大人が困っちゃう、困らせるのは悪いことだ。


「なんで取ったりするの? 仲良くしないとだめよ」


 違うんだよ、先生。彼が言ったんだ、「あと少ししたら貸す」って。あと少しがどのくらいか分からないから、「何分」って聞いたら、「う~ん……100秒!」って言ったから、その通りにしただけなんだ。


 本当はそう言いたいけど、先生が怒ってたから言わなかった。大人が怒っている時に反論するのは悪いことだから。


 だから僕は言う。絶対に僕は悪くないと思うけど、大人が怒るなら、悪いのは僕なんだろう。


「ごめんなさい」



 おうちに帰ると、パパとママがけんかしてる。いつもなら、邪魔はしちゃだめだから、すぐに部屋に帰るけど、今日は違う。だってクリスマスだから。


「パパ、ママ。クリスマスカード書いたんだよ」


 二人はこっちをチラリと見ると、僕のカードをゴミ箱に捨てた。


「パパたちがお話してるときは静かにしなさいって言ってるだろ!これもお前の育て方が悪いから!」

「はあ? そんなのアタシの知ったことじゃないでしょ!大体あなたは!」


 ゴミ箱に捨てたってことは、これは要らないものなんだ。ゴミを持ってはいるなんて、悪い子だ、パパが捨ててくれなかったら、気づかないままだった。


「ごめんなさい……」


 そっと呟いて、僕は部屋に帰る。



 部屋に入ると、今日作った松ぼっくりのクリスマスツリーを飾る。横には縞々のお気に入りの靴下を用意した。最後に、大切な大切なサンタさんへのお手紙を、そっと置く。


 今日までの僕はとてもいい子だった。


 挨拶は欠かさない。信号はちゃんと手を挙げて渡った。ご飯を食べたら歯磨きを忘れない。悪いことをしたらごめんなさい。いつも笑顔を忘れない。自分のことは自分でする。ゴミはゴミ箱に捨てる。


 きっとサンタさんは来てくれる!


「おやすみなさい」



 靴下は空っぽだった。


 リビングからは、パパとママの声がする。


「……自分のことは自分でする」


 ゴミは、ゴミ箱に入れなくちゃ。



『サンタさんへ   助けてください』

彼にとってのゴミとは 何だったのだろうか……

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