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329『新たな旅路』

第三章も、これにて閉幕。

「おい、行くぜカイ!」


 僕は、シオンに手を引かれて玄関に立っていた


「分かった分かった……これでも病み上がりなんだよ。少しは労わってくれ」

「いたわる、ってなんだ!」

「……難しい言葉を使ってごめんね」


 僕はそう鼻で笑うと、いい加減バカにされてることにも気づいてきたのだろう。彼女は頬をふくらませて不機嫌になる。

 だが、それでも先に学校へと行こうとしないのは、それだけ懐かれてる、ってことなのだろうか?


「ご、ごごご、御仁ッ!? もう行くのか! ぼ、防犯ブザー! それと、あれだ、ぶ、武器! そう、武器! 武器は要らないか! 実は、御仁のために海外から取り寄せた武器があって……!」

「阿久津さん……」


 ドタドタドタァ! と音がしてそちらを見る。

 すると、夜更かしして寝坊した阿久津さんが、あられも無い格好で現れる。

 僕は少し視線を外して、苦笑した。



 ――あの戦いから、数日。



 灰村解は、()()()()()()()()()()()()()()

 つまり、一般人へと逆戻りした、ってわけだ。

 ……まぁ、そりゃそうだよな。

 想力をほとんど失ったのだから。

 まぁ、ほんの少し、残り滓はあるものの、それがなにかに使えるわけでもなく。

 せいぜい、その残り滓で残った力を保持するくらいしか出来やしない。


 両手の甲へと視線を向ける。

 片手には一切の表記はなく。

 もう片方の手には……【蘇】との文字が残っていた。


「……詳しいことは分からないが、その表記が残っているということは……」

「……まぁ、そうなんだろうな」


 鮮やか万死は死んだ。

 それが、深淵にいた僕ら全員の見解だった。


 だけど、手の甲の文字が消えない。


 奪った相手が死んだ際、この文字は消えて、その力は僕の力として定着する。

 それは、暴走列車ナムダや、冥府の王イミガンダとの戦いで判明している。

 つまりは……なんだ。

 考えたくはないが、アイツはまだ生きている、って言うことなのかもしれない。


「物の怪……まだ、その生態系はよく知られていない」


 それこそ、本場の陰陽師なら話は別かもしれないが。こちとら、そういうことの分からない奴ばかり。

 元一般人の現一般人。

 特異世界からやってきた悪魔王。

 ただのアホ。

 以上である。


「おい! カイ、今なんかバカにされた感じがしたぜ!」

「気の所為だな」

「そうか! それはよかったぜ!」


 シオンを軽く受け流し、靴を履く。

 


「それに、僕には【過剰な護衛】がいるからな」



 僕は、扉を開ける。

 その先には、2人の男女が立っていた。


 ……あの戦いの後。

 仮に()()()が生きていたのならば、蘇った直後に僕を襲ってきてもおかしくなかった。

 奴からはそれだけの憎悪を感じたし。

 それに、こちとら力を失っている。

 あの瞬間こそ、僕を殺す最大のチャンスだったと僕は思う。


 にも関わらず、襲わなかった。


 それは、何故か?

 その理由は、いくつかあると思う。


 ひとつは、僕の強奪が少なからず効いていたから。

 そしてもうひとつは……純粋に、手を出せば死ぬと理解していたから。



「お、おで、似合うかなぁ? この服、変でねぇだか?」


「おい。我らが王の御前だぞ。私語は慎め」



 黒いスーツに身を包む大柄な男と。

 黒い男物のスーツを纏った、黒髪の女と。


 その二人を見て、シオンは何故か得意げに鼻を鳴らし。

 阿久津さんは、思いっきり顔を引き攣らせていた。


「ご、御仁。その男は……! そ、それに、その女は一体……!」

「ほう。女。我らが王への呼称としては褒めてつかわそう。だが、頭が高くはないか?」


 黒髪の女が、阿久津さんを赤い瞳で睨む。

 瞬間、凄まじい殺意が吹き抜け……る、直前で、僕は女を軽く睨んだ。


「おい。この人は僕の恩人だぞ」

「……!? も、申し訳ございません……!」


 瞬間、込められていた殺意が霧散し、阿久津さんは安堵に息を吐く。

 よく見れば、阿久津さんの眼は金色になっていて……あのまま止めてなかったらこのビルは吹っ飛んでたな、と軽く理解した。


 黒髪の方を見れば、彼女は廊下で土下座している。

 男の方は、あたふたとしながら僕と女を交互に見ていて……なんだろう。この様子だけ見ていると、ついこの間まで死闘を繰り広げていた相手とは思えない。


 まぁ、いっか。

 僕はテキトーに結論付けると、シオンが僕の手を引いた。


「まぁ、つまりアレだな! お前の子分ってことは、つまりはオレ様の子分がまた増えた、ってことだな!」

「ん? あぁ……まぁ、そういうことでいいんじゃないか?」


 テキトーに返事をすると、ショックを受けたような黒髪と、不思議そうにする大男。

 そんな二人を見て、僕は笑って歩き出す。


「……なるほど、確かに過剰な護衛かもしれん」


 ふと、阿久津さんから声がした。


 あの後。

 深淵から戻る僕に、一体の竜がついてきた。

 現着した六紗たちに、一人の男は手当され、一命を取りとめた。


 竜はこの世界へと馴染むため、仮の姿として黒髪女性の姿を取り。

 男は全ての力を返還されて、全盛期を超える力を手に入れた。


 いずれも……手負いの万死では、下手に動けば殺されてしまう反則チート。


「ほら、行くぜカイ! 学校に遅れちまうぞ!」

「そうだな。それじゃあ阿久津さん、行ってきます」


 シオンは楽しそうに駆けてゆき。

 僕は阿久津さんにそう言ってから、背後の二人の名を呼んだ。



「今日から頼むぞ。()()()()()()と、()()()()()()()



 あの妄言使い、成志川が仲間になったことも驚いたが。

 今回ばかりは、苦笑しか出てこない。


 事実上の、最恐(ナムダ)最凶(ボイド)


 さすがに誰も、この二名が仲間になるとは、思ってもいなかっただろう。




 ☆☆☆




「で、アンタ……本当に力を失ったわけ?」


 昼休みの食堂で。

 VIPルーム下の一般生徒向けのエリアで、僕は六紗優にそう問われた。

 ……彼女はあの後、海外から直帰してくれたらしい。

 僕が戻った時には、既に阿久津さんの姿は消えていて。

 代わりに、生き返って元気いっぱいのシオンと、六紗優が待っていた。


「うめぇ、うめぇ! この肉うめぇぞ!」


 シオンが隣で肉に齧り付く中。

 僕は小さく苦笑して、肯定を示す。


「まぁ、な。見ての通りだよ」

「いや、見ての通りって。アンタは最初から気配を消してたから分かんないわよ」


 あ、そういえばそうだっけ?

 六紗は懐から……何だろうアレ。ハイテクそうな機械を取り出すと、ボタンを押す。

 すると、立体的な映像が浮かび上がり、現時点での学内ランキングが表される。


「今、学内は大荒れよ。灰村解……入学以来、圧倒的な力を示してきたアンタが、寄りにもよって3位から動いたんですからね」

「……ま、仕方ないな」


 戦っていたのは土曜日で。

 それから少し休養を取り、水曜日からの学校参加になった訳だが。

 僕は、早速挑まれた序列戦を、特に何も出来ずに敗北した。


 その結果、今の序列は【17位】。

 まぁ、全体で見れば高い方なんだろうが、3位と比べると見劣りする順位だ。


「今の僕は……想力のほぼ全てを、鮮やか万死の復活阻止に費やしている状態だよ」


 使えるのは、特異技能とステータス特有の身体能力。あと、超簡易的な鑑定能力くらいなものだろうか?


 ここに来て補足だが。

 特異技能――【飛行】【毒支配】【超再生】は、想力ではなく体力を消費して使う技能だ。

 だから、体力の尽きた状態では超再生も上手く発動しなかったし、毒支配を使ってすぐに体力の限界が訪れた。


 そのため、今の僕でも使おうと思えば使える。

 ただし、今の僕は活性が使えない。

 以前のようにバンバン使って、活性でバンバン体力を回復して……という荒業はもう使えない。


 ステータスの能力値にしても……まぁ、万死との戦いでさらにレベルアップはしたものの、さすがにS級やSS級の活性と比べれば見劣りする。


 こうして考えると……たぶん、僕は冥府でシオンと出会った当初よりも弱くなっているのかもしれない。


 ステータス表記をすれば、多分こんな感じ。




 灰村 解

 Lv.120[Cランク]

 異能[使用不能]

 技能[鑑定][使用不能]

 特異[飛行][毒支配][超再生]

 基礎三形

 活性[E]

 遮断[E]

 具現[E]




 なんだかふわっとした感じだけれど。

 まぁ、今の想力でできることなんてこれくらいだ。


「……そう。それなら、本当にアンタは……」

「気にすんなよ。それに、アレだ。これだけ弱ければ学園を辞める、って言っても認められそうだしな!」

「それは私が認めないから大丈夫だけれど」

「何が大丈夫だコラ」


 こちとら『あれっ、もしかしてもう学校に来なくてもいいんじゃね?』とウキウキしてたんだぞ!

 それを六紗……お前はまた邪魔をするのか!

 今度の敵は正統派ってか!?

 僕はグルルル……と唸っていると、六紗は顎に手を当て考えていた。


「でも……どうするの? アンタ、10冊のノートを集めるっての、諦めたわけじゃないんでしょ?」

「当然。簡単に諦めてたまるかよ」

「想力全損って、ぜんぜん簡単な話じゃないけれど……」


 六紗はそんなことを言っていたが、無視。

 簡単なことじゃないのは分かってるさ。

 過去の改変なんて、簡単なはずがない。

 それでも諦めなければ、道は途絶えず、続いていくはず。


 想力は失った。

 なら、今度は別の力を頼るまで。


 僕は彼女の目を見て、問いかける。



「なぁ六紗。【陰陽師】って、知ってるか?」



 その言葉を聞いた瞬間、彼女はピタリと固まった。


 陰陽師。

 物の怪を祓うためだけの戦闘集団。

 名前しか聞いたことは無いが……物の怪……鮮やか万死でさえ、あれだけ強かったんだ。

 なら、それに対する陰陽師が、僕ら異能力者に劣っているとは思えない。


 六紗は頬を引き攣らせ、シオンは首を傾げる。


「あ、アンタ、まさか……!」

「おう!」


 僕は元気に返事をして、口を開いた。




「僕は、陰陽師になってみるよ」




 これが、異能力者としてのエピローグ。

 そして、『陰陽師』灰村解としてのプロローグだ。



以上、第三章【始まりの因縁】でした。


異能力者としての灰村解は終わりを告げて。

陰陽師としての、灰村解の物語が始まる。


これぞ、弱くてニューゲーム!

全てを捨てて、初めて見える強さがある。

新たな力、新たな師と、初めて知る才覚。


誰より努力を重ねてきた。


そんな少年が、今、【才能】に目醒める。



次回、第四章、陰陽師編、開幕!


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― 新着の感想 ―
 僕で言えば、6章→影編  巖人で言えば、四年前→現在  天守で言えば、館襲撃→現在  アマタで言えば、普通→お金欲しい  ミスクで言えば、一般人→偽勇者  みたいな、転機。
[一言] あ、陰陽師の才能があるから万死に嫌悪感とか何やらを抱かれてたのね...納得 後書きが面白いと、常々思っておる今日この頃であります。
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