314『彼ら彼女らの恋愛事情』
早く上がったので!
3時のおやつのお供にどうぞ!
「灰村くん、今日の放課後――」
「嫌だ」
昼休み。
開口一番にそう言ってきた成志川へ、開口一番にそう返す
彼は「まだ何も言ってないんだけど……」と言いながら、どこか嬉しそうに微笑んでる。こいつはマゾか?
そんな感情が顔に出ていたか、彼は苦笑して口を開いた。
「いや、なんていうか……男の子の友達は初めてだからさ。こういう会話一つとっても楽しいな、って」
「おいみんな! コイツ、今までの女の友達しかできたことねぇんだとよ!」
僕は叫んだ。
既にこのクラスになってから一か月近い。
僕がシーゴと戦っている姿を見ていたせいか、クラスメイトとも結構仲良くなってきた。
僕の声に反応し、クラスの【彼女持たざる者】たちが一斉にこちらを振り返る。
「なに?」
「女の友達?」
「遊び放題?」
「リア充?」
そこら中から聞こえてくる怨嗟の声。
彼らが成志川を包囲するまでかかった時間、およそ一秒弱。
成志川はいきなりの事態に目を丸くしている。
「おい、灰村の言ったことは事実か、成志川」
「えっ? まあ、友達って言ってもエニグマ――」
「連行しろ! 開口一番で否定しなかった者には天罰を!」
言い訳がましい成志川を、男子生徒たちが連行する。
っていっても、ウチのクラスメイトも成志川に対して悪いイメージを持っているわけじゃない。
学校側の言い訳としては【黒の解放にスパイとして潜り込んでいた若き天才異能力者】みたいだからな。
加えて、容姿がすぐれていないにも関わらず、彼女もちと来たもんだ。
「成志川、貴様には罰として……どうやったら彼女を作れるのかを教えてもらう。というか、教えてください」
「え、えぇぇ……」
そんな会話が聞こえてきて、僕は少し笑った。
良かったじゃねぇか、友達、できそうで。
そうこう考えていると、隣のシオンが話しかけてくる。
「おいカイ! もう昼か! なら早くメシ喰いにいこーぜ! 今日もオレはすてーきの気分だ!」
「はいはい。それじゃあ行くか」
シオンに続いて、僕も立ち上がる。
そんな僕の肩へと、後ろから手が回された。
振り返ると、そこには虚無の表情を浮かべた持たざる者たち。
「ラブ、オア、フレンド?」
「もしもラブに見えるなら眼科行け」
「……見たか成志川! これが持たざる者の正当な反応だ!」
クラスメイトはそう叫び、成志川は困ったように苦笑している。
そんな中、シオンは僕を見て首をかしげる。
そして飛び出す、爆弾発言!
「オレはカイのこと好きだぜ? ラブってそーゆーことだろ?」
「「「なっ!?」」」
彼女の言葉に、周囲のクラスメイト全員が振り返った。
無数の視線がシオンを経由し、僕に向かう。
それらを受けて頭を掻いた僕へ、どこからともなくエニグマ先生が寄ってくる。
「あら! カイ、あんたも隅におけないじゃないの! 彼女できないって相談受けてた頃が懐かしいわね!」
「き、きききき、貴様! 灰村代表! 我ら持たざる者の盟約はどこへ消えた! 裏切ったのか貴様!」
「隅におけるし、盟約なんて知ったことか」
つーか、シオンの好きは、ラブじゃなくライク、だろ。
僕はため息を漏らし、彼女に言う。
「そうだな。僕もお前のことは嫌いじゃないよ。ステーキの次くらいには好きだ」
「おう! オレもすてーきの次くらいに好きだぜ!」
ほら、やっぱりね。
僕は周囲へ視線を向けると、全員がため息を漏らしていた。
多くの生徒は、なんとなく落胆のため息を。
持たざる者たちは、安堵のため息を吐いていた。
「なによ、つまんないわね……。男なら……こう、もっと頑張ってみなさいよ! 押せばオトせるじゃない、その子!」
「ん? カイ、オレのこと落とすのか? どっから落とすんだ?」
「シオン、エニグマ先生の言ったことは忘れていいからな」
「わかったぜ!」
シオンは元気よく返事をすると、楽しそうに食堂へと歩き出す。
その背を見送り、エニグマ先生を睨む。
彼女は頬を膨らませ、不満げに地団駄を踏んでいた。
「つまんない、つまんないわ! なんでったって恋愛に発展しないのよ! 一緒に住んでんでしょ、一つ屋根の下。男女が一緒の家に住んでる! それで男女の仲に発展しないだなんて異常よ異常! さっさとやることやっちゃいなさいよ!」
「女の子がそんな発言やめましょうね」
僕はそういうと、シオンのあとを追って教室を出る。
背後からはエニグマ先生のかなぎり声と、それを諫める成志川の声が聞こえてくる。
「……彼氏、彼女、……ねぇ」
成志川とエニグマ先生。
二人は何というか……お似合いだと思う。
逆に二人が他の誰かと付き合う姿が想像できない。
たぶん、何もなければ、二人はこのまま一生を一緒に過ごすんだろうな、って。そんな風に思う。
ならば、僕は一体、誰と一生を過ごすことになるのか。
僕はポケットに手を突っ込み、空を見上げる。
「……ああ、彼女欲しい」
「おいカイ! なにしてんだ、すてーきに遅れるぜ!」
切実な願いは、前方からのうるさい呼び声に掻き消えた。
☆☆☆
食堂にて。
僕は、会いたくない女と遭遇した。
「げっ」
「あら、奇遇ですね、灰村君」
食堂の入口。
そこで、待ち構えるようにして立っていたのは、栗色の髪をした世界の王様……六紗優。最強の異能【時間停止】を使いこなす怪物である。
僕は咄嗟に逃げようとして。
次の瞬間には、食堂の席に座っていた。
「奇遇ついでに、一緒にご飯でもどうでしょう」
「おいこら、奇遇なのにどーして既に料理が用意されてんだ。しかも人数分」
僕はテーブルの上の料理を見る。
場所は一般生徒が利用できる座席だが、周囲には人はおらず、ミステリーサークル状態。
机の上には、僕とシオンの昼飯が用意されている。
しかも、僕らが普段から食ってるものだ。
奇遇なんてのはあくまで建前。明らかに僕らを待っていたのは明確だ。
僕は周囲へと視線を向ける。
「きゃっ! ろ、六紗様ってば大胆っ!」
「男女の密談……あぁ、何を話しているのでしょう!」
「して、あの赤髪の少女は誰なのでしょう」
「私知っておりますわ! 六紗様の恋のライバル! B組、次席のシオンさんですわ!」
「……ふむ。あの容姿、女性らしい服装よりも、男装をさせることで輝く逸材、と見受けました」
そんな話し声が聞こえてきて、ゲンナリした。
「おい六紗、お前、僕のことが好きみたいな噂になってんぞ」
「あ? おい、てめぇもカイのこと好きなのか! カイは渡さねぇぜ! オレんだからな!」
唐突に叫ぶシオン。
彼女の言葉に六紗の完璧な笑顔が崩れる。
頬が尋常を超えて引き攣り、周囲から黄色い悲鳴が溢れ出す。
「へ、へぇ……そ、そうですか」
「そうだぜ! オレは死んでもコイツと一緒だ!」
「き、聞きました!? 今の愛の言葉を!」
「ええ、聞きましたとも! お姉様の美しい微笑みが思わず崩れるほどの一声……! 脱帽致しました……!」
「なんという愛なのでしょう!」
「公衆の面前で恥ずかしげもなく……これぞ、本物の愛なのですね!」
さっきからうるせぇ外野!
ちょっと黙ってて、お願いだから!
僕はシオンの頭をチョップ。
物理的に黙らせると、六紗を見る。
「ま、気にすんな。腐れ縁みたいなもんなんだ」
「クサレエンってなんだ!」
「だいたいいつも一緒にいるってことだよ」
「なるほどな!」
シオンは納得し、用意されていたステーキへとかじりつく。
その姿を見て苦笑していると、なんだろう、六紗が不満げに頬をふくらませていた。
「……私の方が、昔から知ってるのに」
「……いまなんつった?」
嘘だろお前。
そんな意味を含めた問いかけに。
彼女はそっぽを向いて答えを返した。
「知らないっ!」
「ツンデレぽよ。察せよ男」
机の下から声がして見れば、ドックフードをカリカリ食べるポンタが居た。
僕はポンタの首根っこを掴んで引っ張りあげると、彼は六紗を一瞥する。
「勇者になって、王様になって。昔の友達がみんな離れていく中、唯一対等に話してくれる特別な異性。意識しないわけがないんだぽよ」
「お前ぶっ殺されるぞ」
六紗を見れば、もはや手遅れ。
ポンタ、死す。
彼女の表情から、その未来が透けて見えた。
「……ポンタ?」
「ぽよっ!?」
気がつけば、彼女はポンタを小脇に抱えて立っていた。
「……それでは、灰村君。少々急用が出来ましたので、ここらで失礼させていただきますね」
とってもいい笑顔だった。
僕はただ、頷くしか無かった。
「おっ、男ぉー! た、助けてぽよ! 僕はただ、ユウ×カイ派なだけなんだぽよ! シオ×カイなんて邪道は許さなぶほぉ!?」
「おっと、手が滑りましたァ」
恐ろしい笑顔で、六紗の拳が振るわれた。
生物の体からは鳴ってはいけない音がした。
ポンタは痙攣し、そのまま動かなくなる。
「……彼が言ったことは、忘れるように」
そう言って、六紗は次の瞬間には消えていた。
周囲がざわめき、僕は大きく息を吐く。
「なんでったって、こんなことに……」
好意を持たれるようなこと、した記憶がないんだけど。
ポンタをぶん投げて、警察に通報して、またポンタをぶん投げて。普通に死んで、生き返って、彼女の前に現れただけ。
恋愛って不思議だね。
どこでフラグが立つか分からないんだもの。
「お! なんだ、カイ! アイツ、メシ残してるじゃねぇか! 食っていいのか!」
「おう。好きなだけ食え」
僕はそう言って、自分の昼食へと手をつける。
ちょうどそんなタイミングで、また小煩い気配がやってくる。
「おお、貴殿、今日は下で昼食なのだな。ご一緒しよう!」
出たよ、第四席。
僕はため息をして無視すると、当然のように僕の隣へと着席する第四席。
周囲から黄色い声が上がり、僕は頭を抱えて飯を食らう。
「……頼むから、静かに平和に過ごさせてくれよ……」
たぶん、そんな願いは叶わない。
言ってる側から察してた。
以上、息抜き回でした!
主人公を初め、ポンタ。霧矢ハチ、成志川……その他にも、暴走列車、冥府の王やシーゴ、異能者殺しに謎の紫髪男。
男性キャラの方が多いはずなのに、不思議と醸し出されるハーレム臭。




