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妄想クラウディア~10人の異能使いと禁忌の劫略者~  作者: 藍澤 建
第二章【秘匿の消えた世界】
44/170

210『カイVSシオン』

「『次元結界』」


 初手として、僕は周囲の安全へと配慮した。

 いくら試験官が名の知れた異能力者であったとしても、僕やシオンが本気で戦えば、巻き沿いにあって怪我をする。というか怪我で済めばいいほうだ。

 なら、そんなのを目撃してる野次馬は?

 そう考えると、気が気でなくて力も出ない。


 僕を中心として、銀色透明のドームが生まれ落ちる。

 それは、僕とシオンだけを囲うように数十メートルを覆い尽くす。

 シオンは周囲へと視線を向けると、試しに、と言わんばかりに背中の大砲をぶっ放した。

 感じたのは、異常すぎる想力量。

 ……やべぇな。あれに触れただけで粉微塵になる気がする。


 ミサイルは一直線に結界へと向かってゆく。

 そして――ブツリと、結界に触れた瞬間、ミサイルが消えた。


「……あ? なんだこれ」


 シオンは首をかしげてミサイルの消えた方向を見つめている。

 僕は小さく息を吐き、彼女に対して視線を向ける。

 そして――次の瞬間、僕の姿はシオンの背後にあった。


「気にすんな。ただ、消しただけだ」


 拳を振るってから、声をかける。

 だけど、彼女は僕の発声より先に反応していた。

 彼女は銃身の腕で、僕の拳を受け止める。

 瞬間、彼女の銃身は大きくへしゃげ、シオンは驚いたようにバックステップ。

 大きく目を見開いて、自分の左腕へと視線を向ける。


「おいおいおい……まじかよ。この腕、暴走列車でも砕けなかったんだぜ?」

「知ってるか? 世の中には防御貫通なんて、便利な力もあるらしい」


 今僕は、黒い手袋を履いている。

 季節は真冬。

 いくら戦闘中とはいえ、手袋を着用するのに違和感はない。

 だからこそ、思う存分()()()()()()()()()()()()()()()()()

 僕は長そでを、少しだけ捲る。

 シオンにのみ見せた腕は、とっくの昔に狼のモノへと変わっていた。


「なはは! すげぇすげぇ! そんな異能があるっていってたっけか!」


 シオンはそう叫び、左手を振るう。

 直後、破壊された左腕は元の状態へと戻っていた。

 ……いくら破壊しようとも回復し放題、ってか。

 想力が尽きない限りは、どれだけ攻撃しても、どんな威力を叩き込もうと無意味。

 それこそ、核ミサイル級のドでかい攻撃をすれば話は別かもしれないが、そんな威力、今の僕には出せないしな。火曜日……久理の強化される日ならば或いは……いいや、どーせ使えないなら今は考えるだけ無駄だな。


「さて、どう攻略しようか」


 僕が呟くと同時に、シオンの砲台から無数のミサイルが放たれた。

 その総数、優に五十を超えている。

 砲台の数からは到底考えられない弾数。装弾速度。

 さすがは異能、ローファンタジー。

 物理的とか、物理法則とか。そういう言葉に真正面から喧嘩を売ってやがる。


「『次元盾』」


 僕は合掌すると、目の前へと大きな盾が現れる。

 その盾は迫りくるミサイル全てを受け止め――完全に消し去った。

 僕はすべてのミサイルを消したのを確認してから、盾を消し去る。

 そして、僕はシオンの方へと視線を向けて、目を見開いた。


 僕の眼前へと、彼女の剣が迫っていたから。


「――ッ!?」


 咄嗟に近距離へと転移し、回し蹴りを叩き込む。

 だが、僕の蹴りは彼女の銃身に防がれ、銃身がへし折れる音とともに、僕の腹へと強烈な一撃が叩き込まれる。あまりの威力に大きく吹き飛ばされて……それが、前蹴りであったと気が付いたのはそのあとだった。


「ぐ、が……っ」

「その力! ぜんぜん慣れてねぇだろ! よっぽど狼の方がオッかねぇぜ!」


 シオンの言葉が頭に響く。

 ……よりにもよって、嫌な場所に蹴りが当たった。

 鳩尾だ。

 僕は浅く息を吐き、何とか呼吸を整えようと深呼吸。

 されど、シオンは回復の暇を待ってはくれない。


 彼女は腰のジェットエンジンを駆動。

 踵のタイヤで、滑るように僕へと迫った。

 その速度、間違いなく僕の【神狼】と互角だろう。

 僕は距離を取ろうと次元を発動。

 しかし、僕の視線の先へとシオンは左腕の銃口を向ける。


「――ッ」

「バレてんだよ、目線の先だろ?」


 転移はもう、停止できない。

 僕の姿が掻き消えて、視界が移り変わり。

 その直後、僕は眼前に迫るミサイルを見た。


「……がッ!?」


 脳天へ、ミサイルが直撃する。

 かつて、感じたことの無い衝撃波。

 咄嗟に頭を後方へと下げたおかけで、一撃死ってのは避けられた。

 けど、頭蓋は割れて、血が吹き出している。

 ちらりと、試験官へと視線を向ける。

 試験官の女性は試合を止めようとしているのか、僕の結界をガンガン拳で叩いている。悪いな、その結界は外からの攻撃は防ぐんだ。


「さっさと本気出せよ! 終わっちまうぜ、カイ!」


 シオンが大地を蹴る。

 僕は歯を食いしばり、大地を蹴った。

 瞬間、僕の足元から溢れ出す無数の【杭】。

 串刺し公、ヴラド・ツェペシュの具現能力。

 イミガンダから奪った力を、僕の想力で運用する。

 それは、凶悪無比な範囲攻撃へと成り果てた。

 だが。


「あ? んなもんがオレに通用するとでも思ってんのか!」


 彼女の影が、杭の全てを飲み込んだ。

 その力だけでA級最上位という、シオン・ライアーの【影の具現】。

 異能がなくても、下手をすれば今の僕と同等の力を持つだろう。

 あまりの反則加減に笑えてくる。

 ほんと、どうやって勝てばいいんだよ。


 僕は大きく息を吐く。


 そして、迫り来るシオンを前に……さらに、距離を取った。


 僕は十数メートル後方へと転移。

 それを見たシオンは、不機嫌そうに歯を食いしばる。


「てめぇ……さっきから何してんだ! 逃げてばっかりじゃねぇか! 防いで逃げて! んな戦い方で、オレに勝てると思ってんのか!」

「……………………」


 僕は無言で返す。

 それは、シオンの怒りに油を注いだ。


「……これ以上、失望させてくれんなよ。オレは、1年半前のてめぇと戦いたかったぜ。血湧き肉躍る、懐に入れちまえば殺されちまいそうな、抜き身の刀みてぇなてめぇとよォ……ッ!」

「……それは、悪い事をしたな」


 1年半前。

 お前が生き返るより前は……僕はまだまだ餓鬼だったんだ。

 戦い方も一辺倒。

 ただ、前に出て殴るしか戦うことを知らない。

 そんな、危なっかしい、それこそ抜き身の刀みたいな状態だった。


 それをお望みというのであれば、僕は期待には答えられない。


「つーか、そういうのは僕を倒してから言えよ。その異能、カッコつけてた割には全然僕を殺せそうにねぇんだが?」


 挑発だった。

 あからさま過ぎる挑発だった。

 されど、シオンはそれに気づかない。

 冷静に判断するには、あまりにも頭に血が登り過ぎていた。


「……いいぜ、そこまで言うなら……本気で殺してやるよ」


 ――そうすりゃ、頭も冷えるだろ。


 そう言ったシオンの体から、冷たいオーラが溢れ出す。

 僕も、こんなシオンは初めて見た。

 正真正銘、敵を前にし、激怒したシオン・ライアー。

 彼女なら、怒りに身を任せて馬鹿みたいに騒ぐと思っていたのに。……それは、どこまでも静かな、静謐な怒りだった。


「……怖いなぁ、さすがに」


 悪いな、シオン。

 お前のことは、あの2ヶ月間で随分と分かってるからな。

 お前の好きな事、お前の嫌がること。

 お前がされて、怒ること。

 だいたい分かってる。

 だから、その怒ることを実行した。


「――Go Ahead。ちったァ頭冷やしてこい、クソ子分!」


 シオンの全身から、凄まじい量のミサイルが放たれた。

 それは、1発1発に殺意が籠った致死の攻撃。

 間違いなく、当たれば即死。

 シオン・ライアーは、灰村解を、殺しに来た。



 ――なればこそ。



 僕も僕とて……()()()()()()()()()()



「【(うず)】」



 右手を掲げて、膨大な想力を行使する。

 瞬間、彼女の発射した全てのミサイルが、消失した。


「…………は?」


 シオンは、驚いたように目を見開いて。

 僕は、掲げた右手を握りしめる。


 ――その瞬間。


 今までに消えた全ての攻撃が。


 シオンへと向かって、再出現した。



「……ッ!? う、嘘だろォ……ッ!」


 シオンは、今になって気がついたようだ。

 僕は、攻撃を消していたんじゃない。

 一時的に、別の空間へと移していただけなのだと。

 そして今、この瞬間。

 その空間を、シオンへ向けて解放した。


 その結果、どうなるか。


 僕は右の拳を振り落とす。

 と同時に、それら全てが始動した。



「悪いなシオン。僕は期待を裏切る男だ」



 彼女が放った、ミサイルの数々。

 その数、優に【173】発。

 それを全て、彼女へ向かってお返しする。


「クソッタレが……!」


 シオンは、咄嗟に【防御】を選択。

 回避するのは難しいと理解したのだろう。

 体全体を影で覆い、それらの攻撃に耐えきる為の殻を作る。


 だけど、それってさ。

 こっちが攻撃手段を変えたら、対応できないよね。


「ごはっ……!?」


 僕の拳が、殻を突き破ってシオンの腹へと突き刺さる。

 影が粉々に砕け散り、シオンが吹き飛ばされていく。

 彼女は周囲へと視線を向ける。

 既にミサイルの全ては消えていて、彼女が視線を逸らしたその一瞬で、僕は彼女の懐へと踏み込んでいた。


「さぁ、待たせたな」


 拳が、容赦なく彼女の顔面を捉えた。

 鼻血が吹き上がり、野次馬から悲鳴が上がる。

 それでも、シオン・ライアーは嬉しそうだった。


「なはははは! 勘違い! ならよかったぜ!」


 拳が、シオンの腹へと突き刺さる。

 彼女の体がくの字にへし折れた……と思った、次の瞬間。

 影が僕の身体中を縛りあげ、思わず呻く。


「ガッカリしちまうところだったぜ! 危ねぇな!」


 とか言いながら、右手の剣で襲いかかってくるシオン。

 咄嗟の転移は、視線を読まれて状況を悪化させる。

 ならば、どうする?

 答えはすぐに出た。


「【渦】」


 僕は、彼女の剣に、ミサイルをそのままぶつけた。

 彼女は右手でミサイルを両断。

 切り裂いてから、こりゃマズいと理解したのだろう。


「あっ、やべ」


 そんな声が響いてまもなく。

 僕らは、大きな爆発に巻き込まれた。



シオンが力尽きるが先か。

解の体力が尽きるが先か。


次回もバトル続行。

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