表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想クラウディア~10人の異能使いと禁忌の劫略者~  作者: 藍澤 建
第二章【秘匿の消えた世界】
37/170

203『再会』

 異能者の育成を専門とする高等学校。


 ――その名も『ハイライトスクール』。


 ちなみに名前の意味は不明。

 なんとなく正統派っぽい名前だから命名されたんだろう。

 実に薄っぺらい命名だ。

 まるで、作者が仕事中に三秒くらいで考えた名前みたいだな。


 閑話休題。


 その、ハイライトスクール。

 正統派(六紗優を中心として形成された善き異能者の集い)が中心となって学園を経営し、臨機応変に対応しながら最高の異能力者を育成する……とかいう、なんともふわっとした感じの学校システムである。

 その説明を聞いた時は頭が痛くなったね。

 あまりにもふわっとしすぎていて、学校としてそもそも機能するのかも怪しいわ。

 まあ、そんな学校に行かなきゃならんって時点で、もういろいろと終わってるわけだが。

 それでも必要最低限、この体だけはどうにかせにゃならん。


「……95、96……っ、97、98……」

「お、おい、御仁……っ」


 僕はテレビを見ながら、()()()腕立て伏せを行っていた。

 目が醒めてから、既に一か月近くが経過していた。

 学校のニュースを聞いてから、僕は、常軌を逸したリハビリメニューをこなしている。

 腕立て伏せ、五百

 腹筋、五百。

 スクワット、五百。

 とりあえず、最初はその程度。

 今は慣れてきたので、徐々に負荷を強くして行ってる。


 ……ちなみにだが、冥府にいた頃はもっときついメニューで体を鍛えていた。

 最後の方なんてもう、体バッキバキで体脂肪率一桁だったからね。

 そうでもしなきゃ格上のイミガンダに勝てなかった、ってのもあるけれど、僕の場合は筋肉の修復が人よりもずっと早いからな。人の何十倍という速度で筋肉をつけることができる。

 暴走列車の活性、さまさまだ。


「死んでから1年9か月……開校まで、あと3か月で」

「……入学試験は、いよいよ明日か」


 阿久津さんもびっくり、驚異過ぎるハードスケジュール!

 学校開きますよー、と発表があって一か月ちょいで入学試験!

 お前らなんなの? 否が応でも僕に準備させないつもりですか?

 一か月でできることなんて限られてる、っての。

 少しくらいは僕の状況も慮ってほしいよ、六紗。


 ちなみに学校側は『この短期間で仕上げられる猛者を望んでいる』とか言ってるけど、絶対嘘だと僕は思う。

 ああ、間違いないね。

 なんとなく「あっ、学校開こう!」と思い立ち。

 よく考えたら四月まであと数か月しかないことに気づき。

 そんでもって、なんとか無理を通してるだけにしか見えないもん。


 僕は立ち上がると、体中の筋肉を伸ばして顔をしかめる。


「一か月じゃ、できることなんてせいぜいこれくらいだな」


 体力、持久力はほとんど初期から変わってない。

 そも、全ての能力値を一か月で戻そうというのがおかしな話。

 だから今回は、筋力と瞬発力。その二つを重点的に鍛え上げた。


 長期戦になった場合? そんときは素直にあきらめる。

 今回狙うのは、完全な短期決戦。

 現時点でも、極々短時間ならばA級最上位程度の力は出せるだろう。

 だから、その力が出せる短期間に、ことごとくぶっ潰す。

 そうすれば、主席は無理でも相応の順位には入り込めるはずだ。

 ……頼むから、サバイバルなんて試験に出てくるんじゃないぞ……。


「御仁も……かなり変わったな。いいや、かつての力を取り戻したというべきか」


 ふと、阿久津さんが呟いた。


「そうか? まあ、たしかに言われてみれば、そうかもな」


 確かに……僕も随分と異常の域に足を突っ込んでいるのかもしれない。

 すくなくとも、イミガンダを倒した時点で普通であることは諦めた。

 これからは、力に貪欲に生きていこうと思います。

 じゃないと本物の暴走列車になんて勝てないだろうし、さ。


 あと、阿久津さん。

 そういえばまだ信じてたんですね。

 僕が何者かに力を奪われた……とか、そんな眉唾物の嘘っぱち。

 まあ、そういって嘘をついてる僕が一番悪いんだろうけど。

 僕は内心呟いて、近くのパーカーへと袖を通した。


「……走ってくるよ。最後の調整で」

「気をつけるのだぞ。近頃は物騒だからな」


 異能使いに向かって物騒って……それはどれだけ物騒なのだろう?

 異能者狩りでも出てきているのかな?


「ま、安心してくれよ。基礎三形・遮断は結構自信があってな。もう、暴走列車に勘づかれて襲われるなんてことは無い……と思うから」

「そうであれば良いのだが……」


 阿久津さんがそう言う中、僕は玄関で靴を履いた。

 どっちにしろ、阿久津さんは外に出られない。

 というか、出したら危ない。

 だって、悪い意味で世間に顔が知れてるわけだしさ。


「そんじゃ、2時間もしないうちに帰るよ」

「あぁ、いってらっしゃい」


 阿久津さんはそう言って僕を見送って。

 僕は、大きく深呼吸して走り出す。


 さぁ、あと一日。

 手遅れかもしれないけど、少しでも体力を取り戻さなきゃ。




 ☆☆☆




 走っていると、ちょうどお昼前の時間帯になっていた。

 あまり長時間は走っていられず、僕は荒い息を吐きながら、足を止める。

 場所はちょうど、近くの商店街だ。

 いい匂いが風に乗って伝わってくる中、腹が鳴る。

 ……生き返った当初は、胃も食べ物を受け付けなかったからな……。

 それでも筋肉をつけるため、必死こいて飯を喰らった。そのおかげで今では食欲も十分に戻っていた。

 ポケットへと手を入れると、財布の中に幾らか小銭が入っている。


「……少し、食べていくかな」


 トレーニングの直後にご飯を食べたほうがいいと聞くし。

 僕は焼き鳥の一本や二本買っていこうと、近くの店へと歩いてゆく。

 ……しかし、その店へと近づいていくにつれ、僕は騒ぎに気が付いた。


「だから……! 嬢ちゃん! アンタ金持ってねえんだろ!?」

「もってねえ!」

「なら焼き鳥食べちゃダメだよ! なんでいきなり店先の焼き鳥食べるかなァ!?」

「うるせえ! 腹減ってたんだからしょうがねーじゃん!」


 ……どうやら、無銭飲食が発生してるみたいだな。

 二年前はこんなことなかったのに……僕が死んでる二年間で、いったいどれだけ日本は変わってしまったのか。僕もまだ全容を捉え切れてはいないが、日夜、ニュースで【異能力者による事件】だなんだと放送されているのを見る度、何とも言えない気持ちになる。

 そして多分、今回も似たような感じだろう。


「細けーこときにしてんじゃねぇよ! タマついてんのかお前!」

「失礼な子だな! アタイはこれでも女だよ!」


 店先で騒いでいるのは、赤髪ボブカットの背の高い少女。

 そして、おじさんみたいなおばさんだった。

 えっ、あれでおばさんなのか……? 第一声『すいませんおじさん、焼き鳥ください』にしようと思っていた手前、ものすごく助かった。ありがとう、名も知らぬ女の子。


 僕は、赤髪の女の子へと視線を向ける。

 外国人かな? さっきから、まるで小学生みたいなやり取りをしてるけど。

 ……僕もさっさと焼き鳥食べて帰りたいんだけど……どうしたもんかなぁ。


「とりあえずお嬢ちゃん! お金どうすんだい、親御さんは?」

「死んだ!」

「き、兄弟は……?」

「いねぇけど、子分ならいるぜ! 金ならそいつが払う! 安心しな!」

「……えっと、その、子分? って子は今どこにいるんだい?」

「知らねぇ!」

「あっ、もしもし警察ですか?」


 あまりに傍若無人な少女の答えに、店のおばちゃんもとうとう警察へと助けを求めた。

 ……よし、とりあえず、警察がくる前に焼き鳥買っちまうか。

 そう考えた僕は、その店へと近づいていく。


 すると、自然と赤髪の女の子が目に映った。


 にしても……この女の子、どっかで聞いた声、してるんだよなぁ。

 赤髪だし、これで髪が長かったら、どこぞの誰かと勘違いしていたかもしれない。

 まぁ! 探し人がこんな近所の商店街で、無銭飲食してるわけないか!

 なはははははは!


 そうこう考えながら、僕はポケットから財布を取り出す。

 僕の足音に気が付いたのか、少女は不意に振り向いて。


 そして、思いっきり目が合った。



「あっ」


「おっ!」



 その人物の正体に気が付いた、その刹那。

 僕は瞬くような速度でUターン。そのまま駆け出していた。


 嘘でしょ。

 いやいや、なんかの見間違いだよ。

 あんな別れ方して、再会が無銭飲食とか笑えない。

 よし、今のはなかったことにしよう。

 無かったことにして、今は逃げよう。


 僕は全速力で逃げ出した。


 だが、僕がスピードに乗るより先に、思いっきり後ろからタックルされる!

 ズザザザザーッ、と頭からスライディング。

 痛みに呻いていると、倒れる僕に誰かが座り込んだのがわかった。

 というか、間違いねぇ。あいつだ。


「なはははは! おいお前! あれだよな、夢じゃねえよな!」


 いや、夢だったらどんなに良かっただろう。

 一年半越しの再開。

 待ち望んでいた彼女との会話。

 それが、無銭飲食から始まったってんだから。

 もうあれだよね、これって僕がお金を払う流れだよね?

 さっき、子分が払うとか言ってましたしね。

 僕は心の中で涙を流し、少女は僕の背中をゆすぶる。


「ぜんっぜん、何も変わってねぇな! お前は!」

「……そういうお前は、髪をバッサリ切ったみたいだな」


 そういうと、少女は笑った。

 一年半前と何も変わらぬ笑顔を浮かべて。

 あの日の続きを始めるように、華のような笑顔を浮かべてこう言った。



「おう、カイ! なんか邪魔くせぇから燃やしたぜ!」



 S級異能力者、シオン・ライアー。

 僕は彼女の言葉にため息を漏らすと、疲労交じりに財布を取り出す。


「女の子なんだから……髪くらい大切になさい」

「うるせぇ!」


 シオンは満面の笑みでそう叫び、僕は泣いた。



 とりあえず、当初予定していた数倍の金額が、財布から消えていった。



《主人公が死んでいる間に起きたこと》

阿久津さん→永久のNow Loading。

六紗→トイレの張り紙を剥がすために覚醒。

ポンタ→セクハラ。

シオン→髪を焼いてボブカットに(NEW)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ