100『名もなき死』
第一章、始めました。
今日は二話、投稿します。
二話目は普段通り、18:00からの公開となります。
オレは、目の前の光景に、歯噛みした。
悔しかったのだ。
全身全霊を賭してなお――それでも敵わない化け物がいる、現実が。
【GOOOOOOOOOOOO……ッ!】
化け物が吠える。
赤黒い筋肉に覆われた、巨大な異能力者。
災躯、の異能種別だろうか。
オレと同じはずなのに……なにが、此処まで違うのか。
全身からあふれ出す蒸気からは、身を焼くような熱量を感じる。
赤黒い肉体は、まるでマグマだ。
躍動するたびに熱を上げ、常軌を吹き出す。
その様、まるで列車だ。
暴走列車。
そんな表現が、よく似合う。
「クソ……ッ! せっかく、この本を手に入れたってのに……!」
オレの手には、表紙に【肆】と記された本がある。
この本の名前はディュゥェアルノォーゥト。
未解の王にして純然たる深淵の闇。
またの名を、解然の闇。
常軌を逸した異能力者にして、最強の個。
そいつが記した十冊の禁書、その一冊だ。
「これで……これさえあれば――きっと!」
オレの夢だって、きっと叶う。
それ、なのに……!
「邪魔だ……てめえは邪魔だ! そこを退け! ぶっ殺すぞ!」
オレの言葉に、化け物は拳を振り上げた。
その直後、オレの視界は黒く染まって、急速に意識が遠のいていく。
あ、オレ、死ぬのか。
こんなところで……オレは、終わるのか。
夢も野望も叶わず、ただ、負け犬みてぇに死んじまうのか。
……オレの人生、こんなもんか。
そこまで考えて、オレの意識は消えてゆく。
ああ、くそ。
もしも、もしも次があったってんなら。
その時は……そうだな。
オレが目指した、誰より強い、最強。
解然の闇、って野郎と、会ってみたいもんだな。
話は変わりますけど、オレっ娘って……なんか、いいですよね。




