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415『熾烈』

間に合わせてやったぜ……!(憔悴しきったドヤ顔)

昨晩10時の時点で、まだひと文字も書いてませんでしたが……奇跡が起きました。

昨日の二話投稿は作者からのハロウィンプレゼント、ということで!

 地竜アラガマンド。

 僕が深淵最下層で最初に戦った魔物。

 彼は速く、硬く、何より強い。

 悪く言えば平均的で。


 言ってしまえば、【弱点】の無い怪物。


 どこを切り取っても凶悪無比。

 最下層の凶悪さを体現するような存在だ。


『王よ。時に深淵竜は――』

「……あぁ。アイツなら置いてきた」

『置いて……ふむ。なにやら難しそうな話。此処で詳細を聞くのは野暮ですか』


 アラガマンドはそう言って前方を見る。

 やだっ、この人普通に話が通じるんですけど! 深淵の魔物って全部ボイドみたいな感じなのかな? って思ってた手前、僕嬉しい!


「な、なんでござるかその化け物は! 面妖な! 此処で叩ッ斬って――」

『――遅い』


 変態は腰の刀へと手を伸ばす。

 その手が剣に触れたら、それが最後。

 無数の斬撃が放たれるだろう。


 だが、それより疾く。


 手が伸びる先にあった刀を、アラガマンドの尾が叩き落とした。


「な……!?」

『詳細は存じ上げませんが、王よ。この男……恐らくは剣術に特化した生命体。それ以外に関しては素人同然もいい所でしょう』


 それは、寸分違わぬ神業だった。

 変態の体には一切の傷を与えず。

 ただ、武器だけを瞬く間に破壊し、どころか相手の能力まで把握している。


 あ、アラガマンド……なんて出来る子っ!

 作者としてとっても誇らしいわ!

 どこかの深淵竜にみせてやりたい!!


「よくやった、アラガマンド。後で思う存分撫でてやろう」

『ありがとうございます。王よ』


 冗談で言ったのに、何だか本当に嬉しそうなアラガマンド。

 その姿を一瞥して苦笑しつつも、僕は変態侍へと視線を戻す。


「で、まだやるか? 勝負はついたろ」


 彼の足元には、粉々になった刀がある。

 もはや、刀として使い道はあるまい。

 仮に、もしもそれがお前の異能に使う【鍵】だったとしたら、もう本格的に諦めた方がいい。


 ここから先は、もう手加減は出来ないだろうし。


 僕は変態侍をじっと見つめる。

 その肩は震えていて……何だか嫌な予感を覚えた僕は、咄嗟に【真眼】で力の世界を覗き込む。



 そして、思わず目を見開いた。




「【千却万雷】」




 その言葉が響いた、その瞬間。

 僕はその【最悪の光景】を前に、動き出していた。


「【泡沫】!」


 天から降り注いだ、無数の【刀】。

 それを前に僕が発動したのは最強の防御技能。

 僕、ナムダ、アラガマンドは何とか攻撃を凌ぎつつも、少なくない崩壊を体に受ける。

 が、次の瞬間にはその傷は全て消えていた。


「これは……」

「二度あると思うなよ……1度きりの奥の手だ」


 泡沫技能は範囲指定ができる。

 僕の周囲にいればどんな状態からでも元の状態へと戻すことが可能だ。

 ただし、次の発動までには相応の時間が必要となる。

 まぁ、一度の戦闘で一度きり、と考えてくれると非常に助かるな。


『王よ、今のはまさか……』

「……嫌な予感。まさか二つ目……いいや、違うな」


 僕は上空へと視線を向ける。

 そこには無数の刀が浮かび上がっており、それを前に変態侍は僕らを見据える。


「……居合いだけで、終わらせるつもりだったけど」


 その瞳には、覚悟が灯っていた。

 それは、先程の目とは全く別種。

 居合いだけで切り捨てようと固執する訳じゃなく。ただ、全力全開でぶっ潰すと決めた、異能力者【灰燼の侍】の目だった。



「――覚悟、するでござるよ」



 この男の異能は、滅びの斬撃だと思ってた。

 それを飛ばすことこそが、灰燼の侍の異能。

 ……だと、思っていたのに。

 なんだ、あの無数の刀は。

 なぜ浮いている?

 どうしてこんなものが降り注いできた?


 ……あぁ、クソッタレ。

 考えれば考えるほどにドツボにハマっていく。


 僕は前方を見すえ、苛立ち混じりに吐き捨てる。



「なんなんだ……この男の異能は!」



 ここに来て。

 半ば特定していた奴の異能は、よく分からないものへと変異した。




 ☆☆☆




「来るど!」


 ナムダが叫んですぐに、千の刀が降り注ぐ。

 といっても、その内飛んできたのは百余り。

 されど、掠るだけで死に至りそうな、凶悪無比な百振りだ。


「クソっ!」


 アラガマンドはボイドに比べればかなり小さめだが、それでも一般人と比べれば見上げるほどの大きさだ。今回ばかりは……その大きさが仇となった。

 僕は歯を食いしばり、上空へと手をかざす。


「一瞬で良い……!」


 全ての刀は、ほぼ同時に向かってくる。

 それが回避の難しさに繋がっていたし――今回で言えば、唯一の希望に繋がった。


 僕の目が、()()()()()()()

 何度も見てきた、何度もこの身を助けられてきた。

 世界最強の盾にして、絶対防御。



「完全模倣――【()()()()()】」




 闇の王をフル動員して、僕らを覆うように金色の障壁を展開する。

 それは、わずかな使用で神力が燃え尽きてしまいそうな、諸刃の剣。

 ……されど、これ以外に一切の【勝ち筋】はない。


 僕の展開した障壁は、あらゆる攻撃を反射する。

 向かってきたすべての刀は障壁により反射され、上空へと吹き飛んで行く。

 その光景を見て、僕は荒くなった息を吐く。


「く……ッ、コンマ数秒だってのに!」


 消耗し、90くらいあった神力量が一気に50くらいまで目減りした感じだ。

 もう数瞬くらいなら使えなくもないと思うが……そうなれば、間違いなく僕は戦闘不能。

 この怪物を前に動けなくなるなんて、半分死ねと言っているようなもんだ。


 僕は歯噛みするが……同時に、変態侍も動揺していた。


「な……拙僧の異能が……はじかれた!? 貴様! まさか志壁……いや、だとしたらその召喚獣はなんでござるか!」


 そりゃ、はたから見ればそう映る。

 僕が使っているのは異能ではなく天戒。

 異能種別なんてものはなく、ただ、地獄みたいな神力操作訓練さえ積めば誰でも、どんな能力だって使える仕組み。異能を主にして戦っているお前には分からないモノだろう。

 加えて、圧倒的な自信を持っていた【異能】が完全に押し負けたと来た。


 押されているのは間違いなくこちら。

 だけど、精神的に押されているのは、間違いなく向こうだ。


 相手の異能は分からない……。

 それでも、刀を操作出来て、居合は速く飛距離無限。

 それだけ分かれば、対処は……難しいけど、できないということはない!


「ナムダ!」


 僕は叫ぶと、彼の全身から蒸気が吹き上がる。

 その体が大きく膨れ上がり、肌は薄黒く、その体内でマグマのような熱が生まれる。

 ――【竜血暴走(クレイズ・ドラゴ)

 ナムダ・コルタナという一般人を、暴走列車たらしめた力。

 その力は基本的に常時発動型。

 そのため、通常時においてもナムダは人類最高峰の身体能力を持っている。

 が、異能を強め――この姿になったナムダは、文字通りの【別格】。


 変態侍。

 お前は確かに、僕が戦ってきた中でも最強格だろうさ。

 下手をすれば、あの時の鮮やか万死にすら匹敵するかもしれない。

 それだけの威力と攻撃速度、そして手数。

 格好はダサいが、その力だけは認めるよ。


 だが、あくまでも最強格。


 実のところ、最強格はこっちにだって居るんだ。


【GOAAAAAAAA……!!】


 そして、最恐が立ち上がる。

 見上げるほどの巨体に、かつて僕を殺した両腕は以前よりも太くなっている。

 ……今じゃ、力を失う前の僕でも勝てないだろうな。

 そんな事を思いながら、僕は彼の隣に並ぶ。



「いくぞ暴走列車。今からあいつをぶっ潰す」


【GOAAAAAAAAAAAAAAAA!】



 決して、楽な戦いじゃない。

 僕らをして、そう思う相手だけれど。

 だからと言って、可能性がないとも言ってない。


 僕は暴走列車と拳を合わせ、前を向く。

 まさか……よりにもよって、コイツと一緒に戦う未来がくるとは思わなかったが。

 敵にすれば最悪の相手でも、味方であればこうも頼もしい。


 両雄並び立ち。

 僕らの背後で、アラガマンドが咆哮する。



 さあ、行こうか。


 即死、強奪、コピーにエトセトラ。

 何でもありの反則合戦。

 前方を見れば、変態は新たな刀を手に取って。

 僕は、男に対して拳を構える。




「歯ぁ食いしばれよ、今からお前を――ぶん殴る」




 好き勝手やりやがったんだ。

 最低限、その責任はその身で受けろ。



両雄並び立つ(地竜もいるよ!)

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― 新着の感想 ―
 因みにボイドは女ですが、アラガマンドの性別は?
[一言] やったー!更新ありがとうございます!
[一言] この一戦……至極どうでもいい理由から始まったんだよなぁ……
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