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しゃる・ざ・りっぱー  作者: ゆずこ
プロローグ ある日のシャル
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side リリィ

リリィちゃん視点

私は昔から英雄譚などよく読んでいました。多くを助け、悪を退ける。そんな方達はとても眩しく、その姿に憧れました。


この国のギルドは、一番英雄に近いと思います。集まる依頼は千差万別ですが、そのどれもが誰かの助けになっています。依頼を出す者は誰もが、ありがとう、と笑顔になります。


なんて素敵な、なんてかっこいい姿でしょう。一度でいいから、もっと近くで見ることはできないでしょうか。


思い切って家族に相談してみました。ギルドで働く人々は素晴らしい、その様子を勉強したい、と。お父様はすぐにギルドの偉い方に連絡してくださいました。なんでも、私の護衛依頼を取り計らってくれるそうです。



しばらくすると近くの町にあるギルドのマスター様がいらっしゃいました。お忍びという形でその町から王都までの護衛を受けて下さるそうです。私は飛び上がって喜んでしまいました。思い返すととても恥ずかしいです。


町までの道中、マスター様は護衛をしてくださる方について色々なことを教えてくださいました。ギルドの中でもとても強く、落し物探しや運搬、危険な魔物から町を守ることもあったそうです。一つまた一つと話を聞くたびに、その方こそ英雄のようで素敵だと思いました。早くその方に、シャル様に会いたい。お話を聞いてみたいです。



程なく町に着き、ギルドでお話ししていると、シャル様がいらしたようです。見た目は私よりも少し大人でしょうか、それよりも、あんなに素敵で強いという方がこんなに若く、私と同じ女性だということに驚きました。



シャル様はどうやら王族がお嫌いなようです。何か失礼なことしてしまったのか不安になりました。結局、渋々ですが護衛の依頼を受けてくださいました。シャル様はあまり気が乗らないようですが、初めて依頼主となったことも含め、明日が楽しみでしようがありません!



王都を目指し、シャル様と歩きます。昨日も来た道ですが、なんだかとってもワクワクします。昨日はあんなにも嫌がっていらしたのに、私の様子を細かくみていたり、お聞きしたお話を丁寧に返してくださったり、やはりシャル様はとても優しい方でした。



王都の門が近づきます。夢のような楽しい時間ももう終わると思うと、一歩一歩がもったいなく感じてしまいます。もし、また依頼を出したら、シャル様は受けてくださるのでしょうか。



残された時間を惜しんでいると、突然シャル様が走れと言いました。その表情は今までになく真剣で、私は大人しく従いました。すぐに空から恐ろしい音が聞こえて耳を塞ぎました。何があったのかと周りを見ると、みるみるうちに大きな怪物がシャル様に襲いかかろうとしていました。


しかしながら、怪物(ワイバーン)の動きは直前で止まっていました。何が起きているのか、不思議でした。



シャル様が一言何か呟くと、ワイバーンの首から何かの仕掛けが姿を現しました。赤い汚れや古い木がとても冷たく見え、大きな刃が空へと登っていくと周りの空気も重くなっていくように感じました。


何か恐ろしく、大きなことが起きようとしていると思えて仕方がありませんでした。


シャル様はワイバーンをまっすぐ見つめて、また一言。空に昇った大きな刃がワイバーンの首をいともたやすく切り落としました。



私は、何も言えず、動けませんでした。あの後、シャル様はすぐに元の町へ戻ってしまわれました。去っていく姿をただ見ていることしかできず、気がつくと、私は城へと帰っていました。



私は、まだ、助けていただいたことも、護衛をしたくださったことも、お礼を言えないままです。


また、会ってくださるでしょうか。また、お話してくださるでしょうか。



首を落とされたワイバーンの前で、あの方は、何を思っていたのでしょうか。

シャル「まああれだけやればでーじょーぶだろ」

リリィ「甘いですわねシャル姉さま!」

シャル「oh・・・」

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