38 危ない状況です
飛び出してきたオオカミとアートさんは牙と剣を向け合いながら、動かずにいます。
その間に、タリさんが弓を構え、オオカミを狙います。
一本、二本刺さると、オオカミがひるみました。
その隙にフィカさんは風を鋭く吹かせ、オオカミは全身から血が出ました。
周りの風を払おうと暴れるオオカミに、アートさんの剣が一突き。多分心臓のあたりに入りました。
オオカミはそのまま動かなくなります。
初勝利です!
「すごいですね、お互いの戦い方がよく噛み合ってる感じがして」
「そうか?へへっ、いつかこうして戦う時のためにいろいろ練習してたんだよ。じゃあ、シャル。このオオカミをしまってくれ」
オオカミのそばで腰につけた魔法鞄…に見せかけた袋を取り出します。
実際に使うのはもちろん《鉄処女》ちゃんです。ギルドの魔法鞄に見せかけるように、オオカミをしまいます。
それから、オオカミを五体倒しました。一度だけ二匹同時に出てきましたが、アートさんが一人を足止めして、もう一体をタリさんとフィカさんの少し強い魔法が倒しました。
「これで、半分ですね。アートとフィカは大丈夫?」
「大丈夫よ。まだまだ魔法も使えるわ」
時間は、ちょうどお昼頃でしょうか。パンを食べて、ここからは戻りながらオオカミを探すことになりました。
「思ってたよりオオカミがいないな」
私もそう思います。
平原オオカミは弱い分小さくとも群れで行動しています。この街に行く途中に私が襲われた時もそうでした。
それが今日は一体ずつです。はぐれも珍しいことじゃないですけど。
すこーし違和感です。
『《看守》より進言。《警衛》の範囲を森全体に拡大。異常を調査します』
おぉ、《看守》ちゃんちゃんと相談できてえらいえらい。こちらこそお願いします。
『許可を受理。《警衛》を強化します』
森全体を見るとかふつう考えつかないです。でもうちの子ができる、したいって言うなら応援しますよ!
『調査結果を報告。森の中心部で魔物の群れを確認。総数1768。強力な魔物を確認』
「なぁ!?」
1768ってなに!?
ここそんな危ないことになってたの!?
これは…依頼中断してすぐに戻るべき、ですね。
「どうしたのシャルちゃん?」
「…みんな、今すぐ街に戻りましょう!ここは危険です!」
「どうしたんだよ急に」
「説明してる暇はちょっとなさそうなんです!」
『《看守》より報告。10体の魔物が接近』
こんな時に!?《看守》ちゃんに任せ…
「いや、みんなが見れるところで倒せる!?」
『申請を受理』
「おいシャル!さっきから何言ってんだ!」
私が《看守》ちゃんとやりとりしている間に、10体の魔物がもうすぐそこに来ていました。
「うそでしょ、なんで急に!アート、すごい速さで魔物が来た!」
「まじかよ、シャル下がって…」
言い切る前に一体の魔物が飛びかかってきます。
「《断頭台》!《鉄処女》!」
チリリリリリリリリ、ずばばばばばばしゃり
目の前の魔物とすぐ後ろからついてきた残りを見えない《断頭台》と《鉄処女》ちゃんで、断ち、しまう。
「なん…!?いきなり切られたの…?風魔法、いや魔力もなにもなかったし…」
「いい!?森に今のが200倍いるの!早く逃げるよ!!」
「にひゃっ!?どういうこと、いやシャルお前今のは…」
今答えてる暇ないの!騙してたのも後で謝るから!走る走る!!
《看守》『《断頭台》《鉄処女》《審判》《看守》《監獄島》より進言。《 》他処刑スキルの一時的行使を試行します』




