依頼終了、とはいかないです
「お早うございます、シャル様!」
「あーはい、おはようゴザイマス…」
早朝、ギルド前にはすでに姫さんがスタバってました。ここに泊まってたからそりゃ居るわな。でも、いまだそのキラキラした目はやめていただきたい…
「あ、しゃるさーん、おはようございますー。もう出発できますよー」
「おはよーサーナさん。うんわかった早速行きますね、姫様もいいですか?」
「はい、今日はお願いします!それと、私のことはどうかリリィと呼んでください」
王族の名前を呼ぶなんて恐れ多いです。が、この目には抗えない。
「はぁ、ではリリィ様行きましょうか」
あ、ちょっとほっぺが膨らんだ。
町を出ていよいよ王都への道を歩く。今更だけど、今回は徒歩。王族を歩かせるって大丈夫なのかと思ったけど、そこは姫さんたっての希望らしい。なんでも遠足がてら町の外を見たいとのこと。いや魔物や賊が出たらどないすねんと突っ込んでも、「そのためのお前さんだろ?」と笑って流された。まあそうなんですけど…
まもなく王都が見えてくるだろう。天気も良く、最高のピクニック日和でした。魔物も出なかったね。
姫さんは私について色々聞いてきた。これが一番大変だったわ。流石に何も言わないのもダメだし、あっさりと受け答えても、よほど楽しいのかすごいです素敵ですの大絶賛だった。そんな姫さんは夢見る乙女のようで大変可愛らしいでした。うん。
王都の門が見えてきた。このまま何事もなく護衛依頼終了!
といきたかった。
「…姫さん」
「はい、なんですか?」
「今すぐ門まで走ってください!」
ドンっと背中を押す。急にごめんね、でも、危ないから。
真剣に聞いてくれた姫さんは困惑しながらも門まで走ってくれた。姫さんならあとは兵士の人がなんとかしてくれるでしょう。事前に連絡もしたしね。
「あの!シャルさんは!?」
一応中には入ってくれた。でも顔を出してこっちを見てる。できれば見ないでほしいなぁ。
そのやり取りを見てる兵士さんも驚いて案内しようかどうしようかと考えてる。いーからいーから、お城まで連れてってあげてください。でないと…
空から轟音が鳴り響く。私以外が驚いて耳を塞いだ。キョロキョロ周りを見渡し、変わらず空を見上げる私に気づく。そして、私の視線の先を見た。
「あ、あれは、もしやドラゴン、ですか!?」
姫さんおしいね。
「いーや、あれはワイバーンだねぇ。参った参った。一体どこから飛んできたのやら。」
咆哮を轟かせながら、ワイバーンは真っ直ぐにこちらに飛んでくる。うーん、大人2、3人くらいの大きさかな?一匹だけだし、はぐれもんかね。
「シャルさんも、早くこっちに!危険です!」
「大丈夫ですよ。そのための護衛です。」
もうワイバーンはすぐそこまで来ている。今から走っても背中からパクリだろう。全く、こんなか弱い乙女を襲うだなんて、なんて悪いやつだ。
いくつもの鋭い牙が今にも私を襲う。人の体なんてすぐに切り裂かれるだろう。
ワイバーンが私に触れる直前、ピタっとその動きが止まる。後ろでは兵士さん達が慌てて走ったり声を上げてたり、姫さんもちょっと涙目かな?顔が歪んでらっしゃる。ちょっと悪いことしたかな、でもね、もう私に近づいちゃあいけないよ。
さて、お仕事しよう。動きを止めたワイバーンは恨めしそうにこちらを見ている。まだ自由のきく体を暴れさせるが、そんな程度じゃ私の拘束は解けないよ。
シャル『いい子だよーめんこいよー姫様には悪いけどちょっと怖がらせないと離れてくれないよねこれ・・・・』