依頼主は姫さんです
「あの、マスター様、もしやこの方が?」
嘆く私を、若干驚きつつも依頼主である少女が口を開く。見た目は10才あたりだろう。彼女の服は決して豪華ではないが一目見ても上等な生地だと分かり、話し方も綺麗でソツがない。そして、胸元で輝くペンダントはまさにその者の身分が王族フルファ家であると示すものだった。どう見ても姫さんじゃん…
「あぁはい、こいつがうちで出せる最高の護衛です。少人数で護衛ができて同性、人柄についてもウチが保証しますぜ。」
まぁ、と少女は手を合わせてニコニコしている。…なんか目がキラキラしてるし、このマスターなんの話をしやがった…
「初めまして、私はリリィ・フルファと申します。とってもステキな方だとお聞きしましたわ!」
「…はい、なんの話かわかりませんが。シャルと言います。それでは」
ここにいてはいかん。今すぐお家に帰ろうそうしよう。
「まてまて、別にいいじゃないか。報酬は文句なしだぞ?」
ぱしっと腕を掴まれ笑いながら引き止められた。はぁーなぁーせぇー!!かぁーえぇーるぅーのぉー!!!!
「あ、あの…私なにか気にさわるようなことをいたしましたか…?ごめんなさい、ギルドの常識はあまり知らないのです…」
見るからに落ち込む少女に罪悪感が溢れる。うぐぅ…子供に対して今のは流石にひどいよな…でもなぁ…
「マスター、私の話っていうのは、その、どこまで?」
「なーに、お前さんがどんだけいいやつかってこととどんだけ強いかってことをな」
「はい、まるで本や歌のように素敵でした。私、とてもワクワクドキドキしてしまいました!」
そりゃよかったですネ。多分魔物との戦いもいろいろ語ったんだろう、さぞ珍しく楽しかったご様子で。
「お前さんが王族に思う時があるのは知ってるが、正直言って今はお前さんしかいない。それに、こんなキラキラした目に抗えるんか?」
「それは…はぁ…わかりましたよ。サーナさんには受けるって言っちゃったしね」
ええいままよ、すぐに行ってすぐ終わらせよう、うん。
その後、特に追加情報も無く明日の朝にギルドに集まることで今日は解散した。姫さんはそのままギルドで泊まるそうな。王族相手にそれでいいのか?と思うが余計なことは言わんでおこう。というか迂闊に聞きたく無い。なんであそこに姫さん一人だったのかとかそもそもなんでここにいるのかとか気にしちゃダメだ。
もう、寝よう。
シャル『すぐに終われば、それだけ危険は避けられるはず・・・』