13 はじめてのギルドです
街は、お祭りのようだった。大きな建物や出店、行き交う人々が笑い、どこかからは楽器の音が聞こえる。
ああ、新しい生活が始まるんだ。
ワクワクするな。ただなー処刑スキルさえなければ憂いも無かったのになー。
でも、この子たちのおかげで無理やりでも外の世界に進もうと思えたんだよね。
うん、そこはちゃんとよろしくしたい。
「大通りを進んで、大きい建物、あれかな?合ってるかな、一応《審判》」
『ギルド アーレティ支部』
あ、ここアーレティって言うのか、知らなかった。危ない危ない。
街の名前も知らないのに田舎娘一人で来るとか、変な目で見られるって。注目されたくないし、出来るだけ普通っぽくしないとね。
ギルドの中に入り、依頼の掲示板らしき横を過ぎ、受付っぽい場所を目指す。
「ようこそ!ご用件は?」
受付にいた女の人が、一瞬目がキランと光る勢いと満面の笑顔で迎えられてしまい、少しビクッとする。なんか目についたことしちゃった?な訳ないか。
「ギルドに登録したいんです」
「登録ですかー、おうちのお手伝いかな?じゃあまず名前だけ、任意でスキルを教えてくださいね」
絶対言えないって、任意に甘えよう。
「シャルって言います。スキルは、その…書くことで良いことはありますか?」
「シャルちゃんですねー。スキルは相性のいい依頼を紹介したり、危険な依頼の仲間集めで役に立ちますけど、シャルちゃんにはあんまり関係ないかもですねー」
「じゃあ空欄にしてください」
「はーい、スキルに頼らなくてもいい依頼も沢山ありますから、悪いことなんてないですからねー」
そういうと、受付の奥に行ってしまう。すぐに、バツンと音がして、戻ってきた。
「はい、シャルちゃんのギルド証ですよー。無くさないように大切にしてくださいねー」
手に収まるほどの四角い金属の板を手渡された。端の小さな穴から紐が通っていて、表には「シャル」と私の名前と小さく「アーレティ」と書かれている。
私が、私だという証。
私だけのものって、はじめてかも。
顔が少しにやけるぅ…
「首からかければすぐにみせれるし、なくしにくいですからねー。あとは依頼を受ける時や終わった時の報告、魔物や薬草の素材を売る時…はシャルちゃんには関係ないですね、そういう時に一緒に出してくださいねー」
「素材買取…?売れるところがあるんですか?」
「そうですよー」
例えばオオカミの牙が欲しいという依頼なら、まずギルドに倒したオオカミを出す。そうすると依頼に必要な牙を残して他の皮や肉はギルドが買い取り、その余った分のお金が戻ってくる。という仕組みらしい。他にも、道中で依頼の対象以外の副産物ができたという場合にもまとめて買い取ってくれる、らしい。
「依頼を受けなくても、買い取ってくれるんですね」
「はい、まあ依頼の方がお金は入りますし、数が多いと価値が下がるのでわざわざする人は少ないですねー」
「そうなんですか、教えてくれてありがとうございます」
「いえいえー、じゃあまずは向こうの端にある常時依頼から受けてみてくださいねー」
もう一度ぺこりとお辞儀して依頼のある掲示板に行く、フリをして買取の受付に行く。
オオカミの事、忘れてないよ。
受付さんは、あえて名乗らないのでした




