8 はじめてのたたかいです
初めて、ではないけど、私史上最大の危機です。
原っぱオオカミに囲まれてます。それも4匹です。あわわわわ…
原っぱオオカミは、うちの村でそう呼ばれています。雑食だし弱めで、一応魔物だけどほとんど野生の動物だし、そのせいで追いやられて森よりも食べ物の少ない草原に住んでるとか。
でも、こんな私1人に4匹ってずるい!強いのは私じゃなくて《断頭台》さんだし!…でもやるしかない、そういう生き方を選んでるのは私だ。
戦う経験のチャンス、と思おう。村の人も弱いって言ってたし、ここで負けるくらいなら今までの生活に戻る!
いざとなったら、台を盾に作戦発動だ。
今周りに人はいない。不慣れな剣を使うよりも断頭台自体を使った方がいい。
「すぅ…《断頭台》!!!」
一息告げる。
周りにいた魔物は4匹とも動きを止める。
足や体は動く。
しかし、首はそこに固定された。
がりがり、がうがう、抵抗する。
程なくして
チリリリリ、ザザザズン!
金属と衝撃の音が響く。
ぐしゃり
…何もしないで勝っちゃったわーい。
相手を台で固定して首を切る。初めて正しい使い方したなぁと周りにころがる4つの死体の真ん中でちょっと呑気にも思っちゃった。
急に血の匂いがして顔がムッとする。あ、血は大丈夫だよ。よく家畜の解体とか手伝ったからね。
で、このオオカミの処理は…しまった、解体に使えるナイフとか持ってこればよかった。
もったいないけどちょっとどけて…いや1つあった。
《断頭台》は大きさもかなり自由に変えられる。それに、出す場所もここって思うとこで出せる。今度どこまで遠くに出せるかとか試してみよう。
「ではでは、切り分けよう。《断頭台》!」
皮や肉を部位ごとに分けるようにスキルを使う。オオカミの解体はあんまり見たことないけど、村の家畜、大きさでブタくらいか、と同じように刃を走らせる。刃はごく薄く細く小さくして、体の中を通す。その間5秒くらい。さいごに胴体の首の切れ目からキラキラと、刃が結構な量の血と一緒に飛び出して消えた。
変化がわかりにくいけど、終わったみたい。そっと近づいて確認。おぉ、達人の仕事だこれは。無駄なくそれぞれの素材を活かせるように、境界が綺麗に分けている。血抜きは…刃が出てきたときにだいぶ抜かれてたっぽい。まさか血を端から押して出してたのかな?とんでもなく器用な《断頭台》さんだ…
シャルちゃんの持ち物
・服
・剣
以上
物は必要な時に村で共有の物を使っていたりしたシャルちゃん。
当然のようにお金やものが少ない。




