指名依頼のようなものです
いつか本編から辿り着き、還っていく話
「シャルさん!護衛依頼受けませんか?」
「はぁ…えっと、もうちょっと詳しく聞いてもいいですか?」
いつものように、ギルド仕事が終わったと報告に行くと受付のサーナさんに仕事を持ちかけられました。
「はっそうですね。と言っても明日、ここから王都中央までの簡単なお仕事ですよ。ちょっと急なことなので報酬はうんと弾みますよー」
「王都までですか…。予定も無いしいいですけど、もしかして訳ありとかです?」
このギルドがある町から王都までは、徒歩でも朝に行けば日が沈むまでには余裕でつける距離だ。しかしその中央には時折魔物が現れる。だけど…急に明日からなんてよほどの急ぎか大事な仕事なのか。
「あー…はい実はそうなんですよ…緊急というか重要というかですね…」
最初のスマイルは崩れかけ目もどこか泳いでいる。あ、あやしい…
「ごめんなさい、ほとんど指名依頼みたいなものなんです…」
あーそういうことね。ただでさえ受けるかどうかもわからないのに、明日からなんて無茶を言ってるかもね。さっきからよそよそしいの納得だ。
「わかりました、受けますよ。それで、その依頼主はもしかしてここに?」
「はい、ギルドの奥に。あのでも本当にいいんですか?結構無茶な話ですよ?」
「まー急ではあるけどね。サーナさん…と言うかギルドも困ってるんでしょ?私に指名なのはよくわからないけど…あれ、指名みたいなものだっけ?」
私はその日暮らしというか依頼はその日のうちに済むようなものを選んでる。そのこともサーナさんはわかってるし、急な依頼を受けてくれるかもしれないってなるよね。だからこそ、受けれる人じゃなくて私に指名というのが腑に落ちない。
「はい、いつものシャルさんならっていうのはあるんですけど、条件を満たすのがシャルさんくらいなんですよ」
「条件?それってどんな…いやそもそも誰の依頼なの?」
「もう実際会ってみます?受けるのがほぼ確定になっちゃうんですけど」
むちゃくちゃな条件じゃなければ手伝いたいし、依頼を断る理由は無い。うん、自分で確かめるか。
ひとまず当初の目的だった依頼終了の報告と報酬を受け取り、そのまま奥の部屋に連れて行ってもらった。普段ここは偉い人や騒ぎになりそうな情報をやり取りするなど、重要な話をする時に使われる。そこで待っているってことはお偉いさんなのかな。今更だけど貴族相手は苦手だし疲れるんだよねぇ…
「マスター、シャルさん連れてきましたー」
「あー入ってくれー」
「失礼しまーす」
「マスターまじですか」
「あぁ、お前さんが一番適役だろう」
「いやいやいや!!絶対私がやっちゃいけない仕事ですねぇ!!!」
「つってもなぁ、正直言ってほかにいないぞ?能力としても人柄としてもよぉ」
うん、私自身性格は悪かぁないし護衛くらいなら何度もやってますよ。でもね、こればっかりは私個人と相性が悪い。
「だからってさぁ…王族は一番あかんでしょぅ…」
シャル『王族になんかあったらどうすんの!危ないかもしれないんだから迂闊に近づくのはやだってばー!!』