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あれが私の道標  作者: ぶくっと醤油
8/9

8.闇を見た

獲物...イポン・タンビル君はきっと、絶対、間違いなく森を舐めていた

森は危険だ、いつどんな危険が現れるか予想ができない

ん?初っ端不意打ちは卑怯だって?

悲しいかな、これ実戦形式なのよね

卑怯でもなんでも戦いなのだから勝てばよかろうなのだ!

森では先に相手を見つけた方が圧倒的有利になる、索敵を欠かしてはならない

それにしてもさっきのイポン君が起こしただろう爆発で数人森に集まってきた

中でも膨大な魔力がだだ漏れで周囲の魔素の流れを乱している反応が2つ

カールス殿下とメルツェルだろうか

それと魔力の放出も魔素の乱れも不自然な程に全く無い静かな反応も1つ

こっちは誰なのか全く予想できない、カールス殿下は守りに特化した【聖騎士】故に魔力の制御は必要ない

メルツェルも【聖女】であるし【双剣術】を扱うにしても制御はあまり必要ないはず

なら誰か、こんな暗殺者じみた魔力の消し方が出来るような人がSクラスにいた覚えはない

まぁいいかな、居場所は把握出来ているから狩人らしく待ち伏せでもしとこう






・・・カールス・・・

爆発音が轟いた

発生源を見れば黒い煙が空に上っていく

Sクラスで爆発系の魔法を扱えるのは【炎術士】のイポン・タンビルと【魔道士】のアノルス・カルグス

そして【賢者】であるゼロライトしかいないはずだ

だがいくら最上級の職業スキルに選ばれたとしても、爆発系の魔法は【魔道士】と【賢者】でもそれなりの鍛練が必要だろうから通常スキルに【爆裂魔法】とあった【炎術士】のイポン・タンビルで間違いないだろう

何を考えているのだろうか?あれでは自分の居場所を晒しているも同然

発生源は森の内部から、待ち伏せでもするつもりか?

...おそらくだが他の公爵家の者と落ち合うための合図かもしれない

あの4人は内心ゼロライトの事を疎ましい存在だと思っていることは確実だ

現5大公爵家はハースト公爵家を除いて全て貴族派...貴族至上主義を掲げている

そんな親に教育された何も知らない子供が貴族至上主義を掲げるのは当然

さらに魔人族の活発化が噂される中、毎日読んでいた英雄の物語に憧れている子供達の前に忌み嫌う平民が英雄の称号を持って突然湧いたら面白くないだろう

平民が、自分達の憧れを身に纏っている、貴族至上主義という選民意識を根に持つ彼らが何もしない訳が無い

4人寄って集って平民の癖に生意気だ!と袋叩きにすると思う

近い内にゼロライトとはメルツェル・リバンスと共に旅する仲になるのだ、せめて嫌われないように貴族絡みの厄介事は俺の方で対処しよう

それに今回の件に関してはライラだって協力してくれるはず、ライラの事だ、腹の中では借りとか友情とかで国と繋ごうと算段を立てているはず、貴族に苦手意識を持たれないよう尽力してくれるさ

戦闘面でも、意識面でも







驚いた

何に驚いたって?今森の中に私を除いて8人分の魔力反応がある

つまり全員森に侵入してるってこった

大した影響力もない魔力ダダ漏れが3人、そこそこ制御されてる魔力が2人、多分身体強化しながら来る反応が2人、不事前な程に魔力の感じられない反応が1人

魔力ダダ漏れ三人衆...多分公爵家の3人は徒党を組んでるのか固まって、2人組...侯爵兄は警戒しているのか進みは遅い、後2人は全力なのか進行スピードがかなり速い、残る1人はそれに追随するように

それぞれが引き寄せられるように爆発の発生場所に集まってくる、このままだと乱戦は確実

面白い...だったらまとめて吊るし上げてヤローではありませんか!

矢を辺を囲むように木の幹の高い位置に刺し即席で作った縄の要領で草を纏めて捻じった草縄

それを纏めて網にし矢に括りつけ全ての矢に引っ張るようの草縄をさらに巻く

全ての草縄を集めて少し前離れた場所にある木の枝から吊るせば即席の罠の完成

使い方は引っ張るだけだが梃子みたいにとは言わずそれなりの力が必要になる

それに強度も低いし実用性もそこまで無いから言わばドッキリを仕掛けるぐらいの軽い罠

村でもこれでよく子供達と遊んだ思い出の品だ

今でも通用するだろうか?






・・・ライラス・・・

様々な...けれど聞き慣れた音達が聞こえてきた

火、水、風、土の4属性の魔法の聞き慣れた音は誰が戦っているか予想できる

あの公爵家4人組で間違いないでしょう

それと時折聞こえてくる剣戟の音

メルツェルも剣を使うらしいけどこの重い...まるで鈍器のような音は兄様の物

やっぱり兄様もさっきの爆発が何なのか解ってたよう、そして先に退場してもらおうとしたよう

流石はうるわ...いとし...わた...えーと...兄様!

兄様の敵は私の怨敵、死角から乱入からの先手必勝!


「痛っ!」

「な...ライラス王女殿下!?」

「何故ここに...」


死角から放った鎖の先端にある寸銅が金髪ドリルの豊かな...豊かすぎる物に直撃した

決して狙った訳では無い、私の貧しいのと比べて湧いてきた複雑な感情からではない、そう...決して!!!


「ライラス王女殿下、酷いですわ!?胸を狙うなんて同じ女性ですの!?」

「ポーラ...あなたのその巨乳にはわたしも辟易してたの」

「リーラ!?」


ただ1人男であるシャンス・リマンは居心地悪そうに体を揺すっている、男の子だもの女の子のあれな話に巻き込まれたくないのよね、分かるわ

けれど私は言葉の魔王!!敵の連携を崩すには敵の関係を悪化させればいいのです!!


「シャンス様はポーランス様のビッグでボンなそれに興味があるのでは?」

「え゛っ、それは...その...気になります...」

「し...シャンス様...」

「はーい、イチャコラしないの、婚約者同士と言っても場を弁えなさい、わたしに砂糖吐かせる気?」


ッチ


「ライラス王女殿下、今舌打ちしませんでした!?」

「してませんよそんなこと、っけ」

「やっぱりしましたよね!?」


してませんしません、ただ血の繋がりのある兄妹での婚約は許されないというこの世の中が気に入らないだけです

だから人前で堂々とイチャつけるお前達がウザくてウザくて仕方ないんです


「リア充死すべし、慈悲は無い!」

「っう゛...」

「ポーラァァァ!!!」


固有スキルによって最初からトップスピードの寸銅を右側のどうしようもなく豊かな物体にぶち込む

脂肪なのだから、減っても問題ないよね、形が崩れても仕方ないよね

だから、凹んだ状態から戻ってない物体をさらに小さくしても、いいよね?


「キッヒヒハハハ!!ほらほら!!」

「っぶ、やめ...っあ...だめ...っん!...ちょっと、ぅん!」


大きい胸なんてなくなってしまえ!

小さくて何が悪い!

小さくても需要はある!

小さいこそ正義なのだ!






・・・ゼロライト・・・

「ヒッヒフフハハハ!!!」

「そこ...ぃや...もっと...あぅ...もっとぉ」


いったいこれは何を見せつけられているのか

ライラス王女がいきなり金髪ドリル公爵の右胸に鎖鎌の寸銅をぶち込んでから何故か始まった調教劇

何度も鎖鎌で打ち付けられているからか金髪ドリルの上半身右側の衣服はボロボロで見えてはいけない部分まで露出している

傍目から見ても辛そうに衣服に押し込まれていたそれは開放された瞬間の反動と今も先端を執拗に打ち付ける鎖鎌によって弾むに弾んでいる

カールス殿下は何が嬉しいのか何度も頷いてるし

リーラさんとシャンスさんはライラス王女とポーランスさんを交互に見てるだけで動けていない

そしゃそうだ、一国の王女が変な笑い声出しながら鎖鎌を鞭のように叩きつけているのだ、驚くなと言う方がおかしい


「あ...やっと...見つけた...」

「お、やっほーメルツェル」


何やら困り顔で真横の雑草から這い出てきたメルツェル

例の不自然な程に魔力の感じられない反応が真横に来ていたから身構えていたけど目の前の惨劇?で予想してた人が出てきたから消去法でメルツェルなのは分かっていた


「何...してるの?」

「急いで作った簡単な罠に引っ掛けてやろうとしたら目の前のよく分からない何かで混乱中」

「う...うん...」


困り顔のメルツェル

けれどその瞳には、少なからず安堵の感情が現れている

王女は昔っからこんな素敵な性格をしていたのか、非常に気になる所だ

だがこれをずっとこのままにしておくとライラス王女の尊厳に関わる

もう手遅れかもしれないけど...

だから、覚悟を決めて


「っせい!」


縄を、引っ張る


「きゃあ!」

「うわ!?」

「なに!?」

「ヒあ?」

「ぬ!」



見事、5人捕獲成功

そこらの草で編んで仕掛けた罠といえど何重にも重ねて捻った草縄はそれなりの強度がある

だが圧倒的に長さが足りない、だから別の草縄に巻き付けて長さを足さなければならない

何が言いたいかと言うとそう長くは持たないという事だ


「メルツェル、あれやる?」

「...うん...試す...」


あれ、というのは昨日寝室で一緒に考えた技だ

【賢者】の固有スキルだと思う【デモリッション】は破壊の力

物語にある賢者が扱う魔法はどれもが地形を変えるほどの威力があったという

流石に盛りすぎだと思うが【デモリッション】が影響しているなら出来ると思う

そこで私は気づいた、破壊の力なら相手に直接影響を与えれるんじゃないかと

【デモリッション】を付与する、と言えばいいのかな

固有スキルは魔力の質の表れだから他人の魔力とは相容れない

だから【デモリッション】を付与された相手は魔力の拒絶反応に便乗して破壊の力が制御できなくなる

制御出来ない力は暴走となって現れる、破壊の力が暴走すれば後に起こるのは


ーー崩壊だ


特定の魔術道具を所持していれば演習場内で死んでも気絶するだけに留まる、先生曰く受けたダメージを肩代わりし致死クラスになると魔術道具の崩壊する

受けきれなかったダメージを微弱な光と風に変換し逃がす...とか

数年前までは精神ダメージに変換するとかいう効果だったらしいが極度のダメージに精神が耐えきれず暴走してしまった生徒が数人いたとかで効果の見直しがされたと言っていた

という事なので何も気にせず技を放てる、致死クラスの攻撃だろうと


「行くよメルツェル」

「...うん」


固有スキルは魔力の質、魔力は体外に放出出来ない、相手に取り込ませるには接触しなければならない

そんな事は固有スキルの【魔力操作】で突破出来る

漂う魔素の中に魔力を通すにはそれなりの集中力がいるがメルツェルの【魔素吸収】と【霊素変換】で一時的に穴を開けることで技の難易度も落ちる

...届いた、ここで魔力を個人の魔力に粗く同調させることで私の魔力の質をそのままに取り込ませる


「なん...ですの...」

「くそ...!」

「なに、これ...!」

「っう...」

「なんだ...?」


ほら、みんな苦しみ始めた

魔力が拒絶反応を起こしたんだ、取り込ませたのは少量だから苦しむだけで済む

だけど本番はこれから


「今だよ...ゼロ...!」

「おっけ...【デモリッション】!」


パリーンと音が響く

魔術道具が壊れた音だ

体内のあらゆる組織を破壊したのだからそれはもう致死クラス以上のダメージに違いない

本当なら微風が吹くだけなんだけどなんか暴風になっている

明らかに過剰な威力の攻撃が5人分纏まってだからね、仕方ないね


「《水壁》」


暴風なんてまともに耐えられるわけないから四角錐に変形させた水の壁を生成して防ぐ

魔法と言えど所詮は水、工夫なくして暴風に耐えられるわけないのだ

風はいづれ止む、一時的な物なら当然

木はへし折れ草は抜け土は抉れと誰がなんと言おうと環境破壊

少し離れたところには吹っ飛ばされた4人が倒れている

残り1人はどこかって...?

...あの金髪ドリルなら暴風の発生源の真下の地面に頭から突き刺さってるよ?

いい貫通力だ、初速が違いますよ

正直敗北判定として魔術道具が壊れた後に突き刺さったみたいだから生きているかは...わかんね

まあね、教員に任せときゃ大丈夫でしょ


「じゃ...じゃあメルツェル...ちゃっちゃと残り2人も片付けようか」

「...うん...」


メルツェルはとても苦い物を食べたかのように顔を顰めている

し...シカタナイヨネ?

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