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あれが私の道標  作者: ぶくっと醤油
5/9

5.Sクラス

特別教室ことSクラス生徒専用の寮の入居希望はあっさり終了した

扉を開けてホールの中央に立っていた執事らしき人に名前を伝えたらそれだけで終わった

もっとこう...書類は...?と思う暇もなく部屋に案内されてしまった

流石Sクラス専用寮の侍従、動きにまったく隙も淀みもない

ただ意外だったのが一人一部屋ではなくメルツェルと同室だったこと

それとなく聞いてみれば「諸事情でございます」と軽く受け流された

ただ1つ分かったことと言えば何かしらの力が働いている...ということだろうか

そんな事がありつつ今は二人揃ってベッドに埋もれている

何時もは長い髪を束ねていてカッコイイ感じだったメルツェルも髪を解いて可愛い感じになっている

比べて私はどうしてもニヤケが止まらず幸せに溺れているだらしない表情をしているだろう

この...柵付きベッドの人一人分しか隙間のない窮屈感が堪らない...ふへへ...

ーーー入ってもいいだろうか?


「ひゃい!どうぞ!!」

「失礼する」


そう言って入ってきたのは何故か金髪が眩しい第二王子ことカールス・ラクス・レンブルスその人

でもどうしてだろう?わざわざ王子の方から来るとは意外だ


「あの...何故ここに...?」

「今代の【聖女】であり【ケセド】所有者のリバンス伯爵令嬢メルツェル・リバンス、同じく今代の【賢者】であり【ビナー】及び【シェリダー】を有するゼロライト、今後共に活動するであろう2人に挨拶に来たのだ」

「殿下から...ですか...?」

「そうだ、俺は今代の【聖騎士】であるカールス・ラクス・レンブルス、第二王子だが同じ英雄のスキルを持つ者同士気軽に接してくれ」


聖...騎士...?

王子が...聖騎士...?

想像出来ずつい王族からの信頼厚い貴族の令嬢であるメルツェルを見てしまうが王子の登場から石のように固まっていたメルツェルは頷いてくれた

どうやら【騎士】ではなく【聖騎士】なのは確からしい、武家の産まれであるメルツェルが言うなら間違いない

だがそれなら納得だ、同じ英雄が持っていた職業スキルを所持しているならこの下りも納得出来る


「英雄が所持していた職業スキルは因果が伴うという説がある、俺達がここに居るのも偶然ではないだろうしこれからも偶然は少ないだろう、故に挨拶という訳だ、よろしく頼むぞ」

「「あ...はい...」」


その説なら聞いたことがある、【勇者】【聖女】【賢者】【聖騎士】【暗黒騎士】【魔術王】の所持者は必ず同じ場所に集まるという因果を調べるという研究

八十年も先を見越しての大規模な計画だったが結果は予想通り【聖女】【暗黒騎士】【魔術王】が集まっていた場所に残る3人が()()現れたのだ

だがこれには少々喜べない結果も混じっている


「それに、貴族と王族はともかく本来なら王族とは面と向うことのない平民も交じるという事は間違いなく魔人族の動きが活性化してるのだろうからな」


そう、この職業スキルの因果関係は魔人族の動きが活発化する事で発動するのだ

そして過去と同様6人が魔人族と相対することになる

この調子なら近い内に【勇者】【暗黒騎士】【魔術王】が現れるはず


「それまでは今後に備え共に技を高めよう、生き残るために、運命はスキルによって縛られているのだから...」


この6人が魔人族を圧倒出来るかといえばそうではない

当然6人なのだから物量の前には苦戦するのは容易に思いつく

実際、前代に魔人族との戦闘で命を落とした【聖騎士】と【聖女】がいたことも確認されている

王子の言葉はそれを防ぐためなのは理解出来る、その眼に若干下心が映っているのは許そう

そう意味を込めて王子を睨みながら返事を返すと王子は少し目を見開いて楽しそうに笑いを堪えながら「ではまた後ほどな」と言い残して部屋を出た

突然の王子来訪にフリーズしていたメルツェルは姿勢が固定されたままベッドに倒れ込んだ

女の子座りの状態で固定されているためスカートが捲れあがっている

ーーー意外と...大胆なの履いてんじゃん...

普段の弱々しい姿勢に凛とした姿、今の可愛らしい姿に大胆な下着...

どれだけギャップ萌えさせればメルツェルは気が済むのだろうか...?






「さて、今日から授業だがまずはこのクラスでの授業内容を話すことになる」


時間が経つのは意外にも早い

メルツェルとの雑談に花が咲き、夕食に舌を唸らせ、贅沢な風呂でリラックスし、窮屈なベッドで眠る

たったこれだけで昨日が終了し朝となり朝食を摂ったら入居者全員で登校

10人揃う頃には教員が入り鐘の音と共に授業が始まる


「まずこの1年間は基礎として座学、魔法、魔術の3つを並行して学ぶのは他のクラスと変らないが魔術については専門家が指導してくれるぞ」


そりゃ魔術学園と名乗るのだ、その最上位クラスなら最高位の魔術師が派遣されるのも当然だろう


「そして魔法についてだが知っての通りこれは実習で戦闘に関したもの、実戦形式が主となる」


世論では魔法は戦闘に扱われる物として存在しておりこの国ではその傾向が強い

魔法=戦闘が定着しておりこの国では魔法ではなく魔術で一生を過ごす人もいる

この場には騎士を目指す者もいるようだから自分の身は自分で守れるようにと教育するのだろう


「授業は座学、魔術、魔法の順でやるが質問はないよな、なら今日は初めてって事でまずお前らで自己紹介をやってもらおうか、窓際から順に頼むぞ」


そう言ってチャチャッと一方的に決めるともう終わりと言うかのように魔術道具であるボードに背をついた

...意外と面倒くさがりなのかな...


「窓際というと僕からかな...アノルス・カルグスです、位は侯爵で【魔道士】の職業スキルです」


眼鏡をかけた理知的な男の子というのが第一印象、【魔道士】という職業スキルにピッタリ合っているような気がするのは気の所為だろうか...


「リアス・カルグス...アル兄の妹で【研究者】の職業スキルでした...」


こちら変わってメルツェル程ではないが腰の低い女の子、黒のセミロングで兄と同じく眼鏡をかけているのが研究者のような雰囲気を...態度のせいであまり感じられない...

そして次にくるのがこの男


「カールス・ラクス・レンブルスだ、職業スキルは【聖騎士】、王族だが兄とは違い武にしか才がないため気負わず接してくれると助かる」


王族では珍しく軍に籍を置く異彩の第二王子、それがカールス王子殿下の世間での認識だ

この国の王族特有の金のように光沢ある光を反射する金髪が所々逆立っている一見寝癖にも見える癖毛が特徴で眼も他の王族と違い青ではなく灰、珍しく武に才能があることから王妃の血を色濃く継いでいると言われている


「ライラス・ラクス・レンブルスです、職業スキルは【支配者】、ミドルネームがラクスなのでよく第一王女と勘違いされるのですが私は第二王女です」


これまた光を反射する眩しい金髪をツインテールにした女の子、噂の第二王女様だ

母の名をミドルネームにするこの国の習慣に倣って王妃の名であるラクスがミドルネームだが生まれ順では妾の子が先のため第二王女なのだと言う


「リーラ・アルファス、公爵で職業スキルは【細工師】よ」


血のように赤黒い髪に気だるげな細目

職業スキルは魔術を付与する土台を作る事に適した【細工師】だがスカートのポケットに手を突っ込んでる所を見れば研究者のように見えなくもない


「シャンス・リマン、同じく公爵で職業スキルは【鍛冶師】だ」


リマン公爵家の名前は聞いたことがある、この国で上位の実力を持つ鍛冶師達が集まるリマン工房のオーナーである公爵家だ

リマン工房は過去の【勇者】達の武具を作ったのもこの工房で唯一武具に魔法を付与した魔法具を作ることが出来る場所でもある


「イポン・タンビルです、公爵家の出ですが職業スキルは【炎術士】です...」


国でも王族の次に大きな権力を持つ公爵家の産まれは遺伝の関係で総じて高位の職業スキルなのだが珍しく低位の職業スキル

だとすれば養子か、それとも妾の子か...


「ポーランス・アールスハイドですわ、公爵家の産まれで職業スキルは【演奏者】です」


ドリルだ...ドリル...王子達よりは光沢はないがそれでも見劣りしない金髪が見事にドリルになっている

アールスハイド家は代々より娯楽を中心にした経営で成功していて王都での娯楽街の全てはこのアールスハイド家が手がけた物らしくその収入は国家予算の半分を占めているとか...

それはそうと私とメルツェルに侯爵兄弟と王族である二人を除けばこの場にはレンブルス王国を支える五大公爵家の面々が揃っていることなる

王族も混じってるし伯爵家と侯爵家もいるのだからたった一人の平民としては少々居心地が悪い


「えっと...メルツェル・リバンスです...伯爵家で...せ...【聖女】...の職業スキルを頂きました...うぅ...」


可愛いなぁもう...

たどたどしい口調で自己紹介してる中で恥ずかしそうにモジモジしながら【聖女】と名乗る様子がもう可愛い


「ゼロ...自己紹介...」


っは!?

いかんいかん、一瞬だが頭の中がメルツェルが悶えてる姿に満たされて自己紹介するのを忘れてしまった

周りも見ればカールス殿下は我関せずと前を向き王女殿下は何故か目を爛々と輝かせている

侯爵兄弟は二人揃ってお喋りに夢中で公爵面々からはいい雰囲気ではなさそうな視線が向けられている

は...早く自己紹介してしまおう...


「ゼロライトです!平民で職業スキルは【賢者】です」


【賢者】と言った瞬間教師であるハースト家以外の公爵面々からの視線がより一層害意に満ちた気がした

この国では最近の貴族至上主義が薄くなってきているがそれでも代々国の中枢を担ってきた公爵家ともなると貴族至上主義の衰退は都合が悪いのか未だ公爵家による平民の当たりは強い

嫌そうな視線を向けられるだけに留まっているのは私の職業スキルが英雄達が持つ職業スキルの1つである【賢者】だからだろう


「終わったな?それじゃ直ぐに授業を始めるぞ、座学は説明で潰れてるから魔術から始めるが今日だけは俺が講師だ、残念だったな」


ガッハッハッと笑いながら黒板にペンで文字を書き込んでいく姿を眺めながら教科書とノートを準備する

魔術はこの国の全てだ、しっかり学ぼう

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