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思わぬ呼び出しと手の温もり アンドゥーとソフィア

 私たちは屋敷に着く。私はユリアが起きているか気になっていたが、本館に到着すると馬車から降りてくる。私は胸をなで下ろす。 


 私が部屋の戻ろうとすると、アルフォンソに呼び止められる。なぜ、ユリアを無理矢理外に連れ出した等の数々の罵倒を受ける。近日中に屋敷から追い出してやると捨て台詞を吐かれる。 


 その後、ジェーンにも呼び出される。彼女にはユリアを裸足で歩かせるなんてオマエが隠したんだろ、服の汚れも私が転ばせたんだろ等散々な言われようである。最後にはアルフォンソと同じ捨て台詞を吐かれる。


 彼ら二人から時間差で言われた記憶がないので、いつもの倍所ではなく気分を落ち込まされている。足取り重く部屋に向かっている。何度もため息を付いている。


「お兄ちゃん、大丈夫? 元気出してね」


「ありがとう、ニコラ」


「あのおじさんとおばさんはイジワル。よくないこともしてるよ」


「よくない事って何だい?」


「あのおばさんはユリア様の宝石とってるよ」


「本当のことかい? ニコラ嘘は駄目だよ」


「ほんとうだよ、お兄ちゃん。ニコラちゃんと見たよ」


「どこで見たの?」


「ひみつ」


「やっぱり嘘なのかな?」


「ちがうよ」


「わかった。ニコラを信じてるよ」


「ありがとう」


 私は部屋で着替えをとってから風呂に入る。まだ仕事は残っているが疲れがとれていき眠くなる。風呂から出るとヨハンさんに出会う。


「坊ちゃん、色々大変だったみたいだね。衛兵から聞いたよ」


「まぁ、そうかもね」


 彼は私がユリアを抱きかかえたことを知っているのだろうか。副隊長からは屋敷の者に言わないと言ってくれていた。しかし、ヨハンさんだけには話しているかもしれない。


 彼には傷が治ったことを打ち明けた。彼は傷口の程度を知っていたので大変驚いていた。治癒してくれたのがユリアと知ると納得してくれた。


 それから、稽古をつけてもらっている。やはり休んでいたので、当初は距離感などの感覚が鈍っていた。でも、彼の熱心な指導により以前の動きが、ほぼ戻ってきている。更なる剣術の向上に取り組んでいる。


 


 数日後、いつものように門でユリアを待っている。いつもなら、門を通り過ぎた彼女の馬車を追うのである。しかし、今日に限っては止まる。窓が開きユリアの顔が見える。


「アンドゥー、ちょっと来てくれる」


「何でしょうか?」


「大事な話があるから昼食時間本校舎の玄関まで来て頂戴?」


「……わかりました」




 剣術科の授業の時間である。この後は昼食時間である。ユリアは内容についてに教えてくれなかったので、これまでの授業は上の空であった。そうなので先生に注意されてしまった。


 ここ最近はソフィアと練習試合をしている。先生が相手を見つけるよう言うと、彼女は真っ先に私の前に来る。そして、礼儀正しく一礼して敬語でお願いされる。


 私は、その度にローレンスを見ている。彼は断るのかいという表情を浮かべる。昨日からは彼女が頼みに来るのが分かっているので、私から離れていき彼女に気を利かせている。彼の優しさからなのは十二分に理解しているが、私は複雑な気持ちになる。


 私はローレンスを薦めるが、その都度彼女に断られる。剣術を習っている学年の生徒なら、一度は彼と手合わせしたいはずである。実際に、彼は複数の生徒から試合を申し込まれている。私には彼女が不思議でならない。


「アンドゥーさんを独占してるみたいで、ローレンスさんに申し訳ないわ」


「……うぅん、彼は気にしてないと思うよ。むしろ喜んでいると思うよ。私は友達が少ないですから」


 最初の発言以降は咄嗟に付け加えてしまう。彼女に申し訳なく思う。


「始めましょうか? ソフィアさん」


「お願いします」


 彼女は日に日に動きがよくなっている。帰ってからも、かなり練習しているのだろう。血豆やそれが潰れた跡がある。彼女に努力を窺い知ることが出来る。


 彼女のその努力に報いるため、私はユリアのことを払拭し全神経を集中させている。彼女の表情も厳しくなる。彼女が剣を強く握りしめる。


 その瞬間、私は瞬時に間合いを詰めて彼女の胸元に捉えようとしたところで止める。


「参りました。一歩も動けませんでしたね、私。アンドゥーさんを想定して練習したのにな。流石ですね、アンドゥーさん」


「いえいえ、ソフィアさんが相手では一瞬でも気を抜いたら負けてしまいます。真剣に挑んでくる相手に手を抜いては、失礼に当たりますからね。この間、ローレンスにも言われましたし」


「お世辞でも嬉しいです」


「本当ですよ」


 彼女が握手を求めてきた。女性と握手するのは初めてなので、なんだか照れくさい。私は彼女の手を触れる程度軽く握るが、彼女は力強く握り返している。私が離そうとすると、さらに力を込めてくる。


「私のことがお嫌いですか?」


「そんなことは決してありません」


「それなら強く握って頂けませんか?」


 そうしないことは失礼に当たるのだろうか、私には分からない。どの程度の力で握ったら良いか分からないので、力一杯握りしめる。


「痛いですよ。強く握りすぎです、アンドゥーさん」


「ごめんなさい、ソフィアさん」


「でも、アンドゥーさんの気持ちが伝わった気がします。嬉しいです。ありがとうございました」


 私は体が熱くなり力が抜けて蹌踉よろける。彼女は、そんな私を引き寄せる。その勢いで彼女の肩にもたれ掛かってしまう。私は動けないのでその身を委ねている。


「動けるようになるまで、このままで良いですよ。お気になさらないでください」


「すみません」


 しばらくすると、元に戻ったので彼女から素早く離れる。私は彼女と目を合わせることが出来ない。彼女が、ゆっくりと手を離す。


「昼食は?」


「今日は用事があって。ローレンスには伝えて頼んでいるので一緒に食べてください」


「お気遣いありがとうございます」


 そう言うと彼女は小走りで去って行く。私は、見えなくなるまで彼女を見つめる。そして、私はユリアの元へ向かう。


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