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冷酷令嬢 ユリア・メリーチ

 到着するとユリアは、すぐに馬から降りる。アンから紙を受け取って読んでいる。私は近づき覗き込んでいる。


 その内容はメリーチ家の令嬢を連れ去った。解放して欲しければ金を払うように書かれている。ユリアが振り返り目が合う。私は重大な事が抜けていることに気付く。彼女も、そうなのだろう。


「お金をどこに持っていけばいいのよ! この人攫いは間抜けなの! そのつもりは、さらさら無いけど」


「そうですよね、ユリアさん」

「そうよ、そうよ」


 護衛騎兵が到着し、私たちを取り囲んでいる。ユリアは目を閉じ考えこんでいる。居場所が分からない以上は、どうしようも無い。


「アンドゥー! 立っている暇があったら、あなたも何か考えなさい」


 焦燥感に駆られているのは、理解できるが八つ当たりと取れなくも無い。それ程、彼女のことを大切に思っているのだ。


「ユリアさん、私に案があるのだけど」


「何かしら?」


「ニコラには少量ではあるけど魔法力があるの。それは徐々に増えてきているの」


「それで?」


「彼女のそれはアンドゥーと系統が一緒なの。不思議なことなのだけど。それで彼の魔法力を使って探知出来るかもしれないわ」


「アンさんが仰るなら、やってみる価値は十分あるわ。お願い出来るかしら?」


「もちろんです、ユリアさん」


 彼女は私の前に立ち、私に右手をかざして詠唱を始めている。私の体が熱くなっている、あの時と一緒だ。すると、彼女の掌に白い光の球が出現する。次第に大きくなるが、あの時の比では無い。


 彼女は手を上空にかざして、別の詠唱を始める。その球は打ち上がると分裂し方々に散っていく。私は、それを目で追うが、しばらくすると消失する。


「あそこです。ユリアさん」


 彼女は指さしている。その指先の方向を見ると、その球は青白く光り輝きを増している。


「あの方角にニコラがいると言う事かしら?」


「そうです。しかし、微量なので正確な距離と位置まではわかりません。力不足です」


「そんなことは無いわよ。方角が判明しただけでも大成果です」


「私とアンドゥーはニコラの救出に向かいます」


「私も御一緒します」

「私もです」


「それは心強いわ。衛兵! お二人に馬を譲ってもらえる」


 衛兵が馬を彼女たちに差し出す。エリーザは素早く馬に乗り込む。小柄なアンは、手綱を掴み鐙に足をかけようとするが届いていない。彼女は数回試みたが諦めたようだ。


 気を利かせた衛兵が、踏み台代わりになっているが乗ろうとしない。もしかして、騎乗したことがないのだろうか。彼女の顔が紅潮していっている。


「アンさんは、お疲れのようだわ」


 すると、ユリアが馬から降りアンの馬に乗る。彼女はアンに手を差し伸べ前方に乗せる。アンは、ばつが悪いのか俯いている。


「アンドゥー! 何をしてるの! 早く行きなさい」


 私は球の方角へ馬を進め速度を上げている。周りを注意深く見ているが、それらしき人物や潜伏してそうな建物は見受けられない。後方には、ユリアたち、さらに後ろに衛兵が続いている。


 林を抜けると一軒の廃屋がある。私は、そこに不自然さを感じる。その周辺は高く雑草が生い茂っているが、門から玄関前まで雑草が踏み倒されたように道が出来ている。


 私は後方にいるユリアに報告する。彼女は手を挙げ衛兵に止まるよう合図する。ユリアはアンを降ろすと、自分もそうし馬を衛兵に託す。エリーザもそれに続く。


 衛兵は林に戻り身を潜めている。十人ほどがユリアの護衛のため止まっている。


 私も馬から降りる。彼女の指示に従い、身を屈め廃屋を周回しながら内部の様子を窺っている。すると、開いている窓から微かに煙が出ている。


 私は報告して指示を仰ぐ。彼女は内部の状況が把握できないため、決めかねている。流石の彼女にも多少焦りが見受けられる。


 すると、廃屋から一人男が出てくる。彼女が手振りで合図すると、三人の衛兵が屈みながら進み門の側で、塀で身を隠しながら待ち伏せている。


 男が出てくると衛兵が背後から忍び寄り首を絞めて、待っている衛兵の所へ引きずっている。待ち伏せていた一人の衛兵が、男に猿ぐつわをしている。


 その二人が男を抱えて、こちらへ向かっている。残りの一人は、それを気にしながら廃屋を監視している。


 彼女は、その男をゴミでも見るような目でみている。男は林の中へ連れられていく。


「しばらく待って頂いても宜しいかしら? 男から情報を聞き出してくるから」


 私は、その言葉に背筋に冷たいものが走る。アンとエリーザは私と一緒では無いかもしれない。しかし、何かを感じ取っているのは間違いは無い。彼女は林の中に消えていく。

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