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さらわれた少女と激昂する三令嬢

 ニコラの元へ向かっている。彼女は、嬉しそうにユリアからの本を嬉しそうに抱えている。私たちは、馬に乗り果樹園に向かっている。そこには、アンの馬車が停まっている。


 今日、クリスティーナはたちは各々用事があって来られない。彼女は、お暇なのだろうか。


 この間とは違って私たちを確認すると、すぐに降りてきてニコラと戯れている。私とは視線すら合わせてくださらない。彼女にとって私は、ここには存在しないのだ。


 私は、することが無いので、彼女からお貸し頂いた本を読んでいる。読み込む内に理解できるようになってきた。


 彼女はニコラの相手をして疲れてきている。ニコラは動き回っている。彼女は木陰に入って休むようだ。ニコラは、いつものように、せっせと籠に果物を詰めて洞窟に運んでいる。


 私は、頭にたたき込んだ呪文を何種類か詠唱している。すると、ある呪文の時に指先が熱くなる。それは、しばらく継続した後元に戻る。突然のことで驚いたが、その余韻は指先に残っている。


 私は、もう一度試みるが何も起こらない。偶然だったのか、それとも私のそうあって欲しいとの思い込みであったのだろうか。落ち込んでいる自分がいる。


 私は疲れてきたので、一眠りしようかと思っている。ふとアンを見てみると、うたた寝している。彼女の頭が上下している。その表情は大分幼く見える。私は、ゆっくり目を閉じる。


 私は物音で目が覚める。その方向を見ると、木の裏に人影が見える。私は傍らに置いてある剣を抜き、警戒しながらそこへ進む。私の気配を察したのか、その者がその場を離れようとしている。私は逃がさないと斬りかかる。


 その者は倒れ込んだ。私は振り下ろした剣を寸で止める。その者は見慣れた人物である。


「アンドゥー! 何するのよ! 殺す気なの!!」


「はあっ、エリーザ様。何をしてらっしゃるんですか?」


「散歩よ!」


「ここまで歩いてきたんですか?」


「ここまでは馬車で来たわよ。この周辺を散歩していたの」


「嘘ですよね?」


「……」


 彼女は口を開く。彼女はラバーナ家の密偵を使って、逐一報告させていた。あまりにも、ニコラと会わせてくれないので痺れを切らせたそうだ。偶然を装って接触を図るつもりだったらしい。


 私は、さすがに呆れている。私も散々馬鹿と言われているが、気付かないはずはない。彼女は、ばつが悪いのか喚いている。


 あまりにも五月蠅いので、私は彼女から離れる。私の視線の先にいるアン様が、伸びをしている。これは私にとって有り難くない展開である。


 彼女が目を覚まし私たちの所へ向かう。彼女は冷めた目をしている。彼女に気が付いたエリーザは、散々喚き散らしていたのに静かにしている。


「あら、アン。こんな所でお会いするなんて偶然ですね」


「エリーザ、ここで会うのに偶然なんてあるのかしら」


「……」


 彼女は、目が泳いで狼狽えている。その後、沈黙が続いているが、それがかえって苦痛だ。


「アンドゥー! 剣を収めたら? エリーザが怯えてるわよ」


 それは、アナタではという言葉を飲み込む。寝起きで機嫌が悪そうなので、何をされるか分からない。そうで無くても目の敵にされているのだ。


「アンドゥー! 背中の具合はどうなの?」


「おかげさまで治りました」


「治りました? ちょっと背中を見せてくれるかしら?」


 言葉の選択を誤ってしまった。仕方が無いので彼女に見せる。彼女は大変驚いている。どういうことなのと問い詰めてくるので、正直に話す。


 すると、彼女はユリアが治癒したと聞いて納得している。しかし、どのような方法で治癒したか、しつこく聞いてくるので事細かく説明している。彼女は理解できたようであるが悔しそうでもある。


 彼女は口を開くと、ユリアの方法も一案として考慮していたが、私に触れるのが嫌なので却下した。彼女の余計な一言で傷つけられている。


 私たちの会話を聞いているエリーザは、目を丸くしている。彼女は治癒魔法を自負していたので、誇りがへし折れているかもしれない。私たちが終えると説明を求めるが、理解できていないようである。私を睨みつけている。


「アンドゥー、ニコラが見当たらないわ。探してきてよ」

「そうよ! 早くしなさいよ。治癒魔法を教えたいわ」


 もう少し言い方がありそうな気もする。仕方がないので彼女たちに従う。ニコラが行きそうな所を捜しているが、なかなか見つからない。もう残された場所は、洞窟以外考えられない。


 私は、その中に向かって彼女の名前を叫んでいるが返答はない。そこには果物が置かれている。なので、立ち寄ったのは間違いない。洞窟の中で彼女が倒れているかもしれないので、中に入ることにする。すると、アン立ちの方から悲鳴が聞こえる。


 私は急いで駆けつける。エリーザが地面に倒れ込んでいる。アンは指さしている。その方向にある木に矢が刺さっているの。私はそれを引く抜く。矢には紙が括り付けられているので外す。


「アンドゥー! それを見せなさい!」


 アンは、その紙を広げて見つめている。何か書かれているようだ。彼女の顔が怒りに満ちあふれている。


「ニコラが攫われたわよ! アンドゥー」

「えぇ……」

「どういうことなの? アン」


「ユリアさんに早く報告しに行きなさい! アンドゥ-!」

「アンドゥー!」


 私はニコラが攫われた以外に状況が飲み込めないが、馬を走らせる。本館まで馬で乗り付け、彼女の部屋に向かう。アルフォンソに制止されそうになるが、構っている暇は無いので突っ切る。彼女の部屋の前まで来て、ノブに手をかけると衛兵に羽交い締めにされている。


「ユリア様、ニコラが攫われました!」


 扉から彼女が飛び出してきた。


「何ですって! 行くわよ、案内しなさい! アンドゥーを離しなさい!!」


 私たちは馬に乗り門に向かうが、兵が封鎖している。


「退きなさい!!」


 彼女の迫力に押され、兵が退き道が出来る。門を出てそこへ向かう。

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