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激怒する令嬢 ユリア・メリーチ

 私は彼女の部屋に呼び出されている。彼女は腕組みをして、つま先を打ちつけている。彼女は私を睨みつけたまま言葉を発さない。この様な雰囲気になることを察したので、ニコラを連れてきていない。


「あのぅ、お嬢様」


「何よ! 二人でいるときの約束事を忘れたの!!」


「……」


「私の名前よ」


「ユリア様」


「思い出しなさい!」


「ユリア=メリーチ様」


「私は機嫌が良くないわよ!」


「……ユリア」


「それでいいわ。ところで背中の傷はどうしたのかしら? 随分良くなっているようだけど?」


 私は正直に、アンに治癒してもらったことを話した。彼女は驚いた様子であったが、さすがアンさんと感心もしている。彼女が、どのようなことをしたのか詳しく聞いている。私は正確に説明するが、理解できなかったと話す。


 彼女は目を閉じて、しばらく考えこんでいる。ゆっくりと目を開けると小さく頷いている。彼女は何か糸口を掴んだようである。彼女のつま先が地面を打ちつける間隔は、次第に速くなっていたが止まる。


 彼女はアンが見ていた本のことを聞く。私は、より専門的な本だと伝える。さらに私は、あの栞の挟んでいた項目についても、関係あるか分からないと一言添えて伝える。


「なるほどね。理解できたわ。アンさんくらい、お強いと治癒魔法に重きを置いていないはずだから、傷口を塞ぐことを優先させたのね。しかし、短時間でこの結果は、素晴らしいことだわ。アンさんに感謝するのね」


「もちろんしています」


「アンドゥー! 背中を見せてくれるかしら?」


 彼女は私の傷口を見ると改めて感心している。彼女の想定していたより、遙かに超えていたと言う。彼女が傷口のあたりを押すと思わず声を上げる。彼女は何回かそうする。先程の憂さ晴らしなのかと疑ってしまう。


「アンドゥー、私に治してもらいたいと思う?」


「……出来るんですか?」


「どっちなの?」


「お願いします、ユリア様」


「それではダメよ!」


「治して頂けないんですか?」


「そうは言ってないわよ! お願いの仕方よ」


 先程の仕返しのつもりなのだ。それにしても性格に難がありすぎる。そこまでしないと、いけないのだろうか。しかし大会に間に合わせるには、選択の余地はない。


 私は彼女の目の前まで進むと、両膝をついてひれ伏す。


「ユリア様、何卒私の傷口を治して頂けないでしょうか? お願い致します」


「ナニヲシテイルノ」


 私は顔を上げ、彼女を見ると思い切りぶたれた。彼女の表情は怒りに満ちあふれている。ここしばらく、見たことがない。これ以上のこと求めるつもりなのだ。


「ユリア様、どうすれば……」


「呆れて物も言えないわ」


「……」


「あなたは、記憶力はないの? バカなの?」


「教えて頂けないでしょうか?」


「自分で考えなさい。アンドゥーさん」


 私は、そういうことかと気付かされた。


「ユリア、治してくれますか?」


「いいわよ。最初から、そう言えば良かったのよ! 本当に馬鹿なんだから」


 彼女が服を脱ぐように指示する。すると、彼女は私の背後に立ち、手を握るよう言う。しかし、見えないので、うまくいかず手間取っていると、彼女の方から握ってきた。彼女は力を込めるよう指示する。


 すると、彼女が詠唱を始めている。それが進むにつれ私の体内から、何かが吸い取られているような感覚を覚えている。


 それを終えると治癒魔法の詠唱している。すると、背中が温かくなり、しばらくすると収まった。


「どうかしら?」


 私は肩を回してみるが、痛みを感じない。すると、ユリアが背中を何度か押すが、やはり痛みを感じない。彼女が、鏡で確認するよう促す。そうすると、傷口は完全に無くなっている。


 私は驚くと同時に安堵している。これで大会に出場することが出来る。


「ユリア様、ありがとうございました」


「違うわよ! アンドゥー」


「ユリア、ありがとう」


 彼女は心なしか喜んでいるように見える。治癒が成功捨て、ご満悦なのだろう。私が彼女を見つめていると、服を着て早く出て行けと言われる。時折、彼女の心を読み切れない私がいる。

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