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意外な依頼 ソフィア

 私は服の中から傷口を触ってみるが、少し痛みはあるが確かに塞がっている。未だに信じられない。しばらくすると彼女たちが手をつないで、こちらに向かっている。


 私がニコラに治してもらった事を告げる。すると、彼女が見せてくれとせがむ。私は背中を向け見せる。


「わぁ、本当だ! アン様すごい」


 振り返ると、彼女はアンの両足にしがみついている。すると、アンは彼女を抱きかかえる。ニコラは彼女の両頬にに触れている。アンは嬉しそうに彼女の髪に触れている。私は、その光景を微笑ましく見守っている。


 アン様は彼女の本を私に貸してくれるという。聞いてもいないのに、クリスティーナとローレンスは今日は来れず、明日になれば理由が分かると教えてくださる。これまでの扱われ方との落差に戸惑いを隠せない。恐らく今日限定だろう。


 いつもであれば、そそくさと帰る。私たちを手を振って見送ってくださっている。私と目が合っても逸らさないでくれている。


 屋敷に着くと、ヨハンさんからユリアが呼んでいるという。ニコラが本を持ってくれるというので二冊預ける。ニコラにユリアから借りた本を持ってくるよう頼む。もう一冊は後で取りに行くことにする。


 彼女にアンから治療と本を借りたことは、内緒にするよう念を押す。彼女は頷いてくれている。私は背中の傷を確かめてみたいので、ニコラに先に行ってもいいと告げる。私たちは各自部屋に戻る。


 確認すると傷口はやはり塞がっており、擦り傷程度になっている。これなら大会の数週間前には完治し、本格的な練習が出来そうである。私は顔を洗いながら決意を新たにする。


 私がユリアの部屋の前に着くと、ニコラは待っている。私は衛兵に一礼し部屋の中へ入れてもらう。ユリアは本を読んでいる。それは治癒魔法書である。彼女が、この種の本を読んでいるのを見たことがなく珍しい。


「ユリア様、御用は何でしょうか?」


「特にないわよ。傷の具合は、どうなのかしら?」


「まだまだ時間がかかりそうです」


「あら、そうなの」


 私は新しい本を貸してもらおうと、ニコラから本を受け取ろうとする。彼女の持っている本を見て、私は顔が青ざめる。それはアンから借りた本である。彼女は大切そうに、それを抱えている。


 ユリアは、もう用がないのか本を読んでいる。私はニコラに耳打ちして、本は今度貸してもらおうと言うと頷いてくれている。


「私は、これで失礼致します」


「えぇ」


 私たちは扉へ向かう。ニコラは横で嬉しそうに本を掲げている。私は胸をなで下ろし、ドアノブに手をかける。


「待ちなさい!」


 彼女が、その本を持ってくるようニコラに言っている。彼女は受け取ると、それをめくって確認している。


「アンドゥー! その本はどうしたのかしら?」


「図書館で借りました」


「借りた本なら、背表紙に学院章が刻印されているはずよ! これは貴重な本だわ」


「……」


「お口は、ないのかしら?」


「借りたものとしか……」


「まぁ、良いわ。私には嘘はつかないで頂戴」


「はい、申し訳ありません」


 気まずい雰囲気が流れている。その彼女の言葉に後悔している。ニコラは空気を読んでくれたのか、新しい本を貸して欲しいと彼女に頼んでいる。彼女は、それを快く受け入れて読んでいた本を手渡す。私たちは部屋を後にする。



 朝、ユリアを送るため彼女の教室に来ている。予想通りアン様は目を合わせてくれない。エリーザは何かを訴えるような目をしている。ニコラに治癒魔法を教えたいとの催促であろう。


 教室で座っている。クリスティーナたちは、まだ来ていない。授業が始まるまですることがないので、アンから借りた本を読んでいる。昨日、寝る前も読んでいた。


「あのぅ」


 私が顔を上げると女生徒が立っている。彼女の名前は、ソフィアである。彼女は合同授業の時に最後まで班を決められなかった生徒である。私は、それまで彼女と一切会話したことがない。どうしたのだろうか。


「はい」


「アンドゥーさん、この間は、ありがとうございました」


 彼女は小声で、そう言ってくれている。しかし、私は彼女に謝罪したいくらいだ。私はユリアたちと組みたくなかった。それ故に、彼女は恐怖し泣いてしまった。


「いえ」


「お願いがあります」


「なんでしょうか?」


「ローレンスさんとの練習試合見てます。宜しければ私に剣術を教えてくれませんか?」


 彼女は無口で内向的にだと思っていた。彼女の発言に驚かされている。何か別の目的があるのか疑ってしまう。私と一緒にやると、周りの者から白い目で見られる。今でさえ、そうなのだから。私は別の手段を考える。


「ローレンスなら快く受け入れてくれるはずです。頼みましょうか?」


「いえ、私はアンドゥーさんにお願いしてます。お嫌でしょうか?」


「本当に私でいいんでしょうか?」


「はい」


「わかりました」


「ありがとうございます」


「こちらこそ」


 彼女の丁寧な言葉使いに気をよくして、思わず言ってしまった。ローレンスたち以外の者は、見くだして乱暴な言葉遣いである。彼女は微笑している。無表情な彼女が見せてくれたので、なんだか嬉しくなる。


 その時、ローレンスとクリスティーナが一緒に入ってきた。彼女は逃げるように席に戻って行く。

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