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立ちはだかる剣士と凹む令嬢 ローレンス アン・ロマーナ

「アンドゥー、大丈夫かい?」


「……ローレンス?」


「僕だよ! どうしたんだい? 忘れてしまったのかい?」


 私が振り返ると、そこにはユリアの他に、クリスティーナとアンがいる。私は向き直りエリーザの元へ向かう。ローレンスが付いてきてくれている。


「ローレンス、もう大丈夫なのかな?」


「残りは逃げていったから、もう襲ってこないんじゃないかな? それにユリア様とアン様がいるんだ。魔獣が襲ってきてきても大丈夫さ!」


 彼は冗談を言って、私を落ち着かせようとしてくれている。その優しさが嬉しい。


「助けてくれてありがとう」


「礼なんていいよ。逆の立場なら君も助けに来てくれるだろ?」


「もちろんさ」


「頼もしいよ」


 私たちは防御壁の前まで来た。それには、無数のフウールの爪跡が刻まれている。彼女は、さぞかし怖かっただろう。見えない中で迫り来るフウールに耐えていたのだ。早く解放してあげないといけない。


「エリーザ様、もう大丈夫です」


 返事が無いので、これを数回繰り返している。私はローレンスと顔を見合わせる。壁を叩いてみるが、それでも反応がない。もしかしたら、中で倒れているかもしれない。


 私はローレンスと相談し壁の上から、彼女の状態を確認することにした。私は指を組んでいる彼の手を踏み台にして、勢いよく上げてもらうことにした。私たちは息を合わせてそれを実行する。うまく掴むことが出来たが左肩に激痛が走る。


「アンドゥー! 気づかなかったけど怪我してるじゃないか!」


「大丈夫さ。悪いけど押し上げてくれないかい?」


 彼が必死にそうしてくれて、何とか登りきり壁を跨いで姿勢を保っている。


「エリーザ様」

 

 彼女は私を見上げると悲鳴を上げる。私は、それに驚きよろめく。跨いでいなかったら落ちていたかもしれない。彼女は、うずくまり見てくれない。私は何度も大丈夫だと声を掛けているが、その姿勢を崩さない。


「アンタがアンドゥーだという証拠は?」


「……」


 彼女は恐怖のあまり錯乱状態に陥っている。私は、しばらく途方に暮れていたが、何とかしないといけない。私という証拠は二人だけしか知らないことを言うしかない。


 私はローレンスに離れてくれるよう頼んだ。彼が聞こえそうに無い所まで行く。すると、昨日の出来事を詳しく彼女に話す。彼女は冷静になってきたのか、逆に質問している。


 彼女が私を見上げて、防御壁を解除してくれる事に同意する。私は降りるから待ってくれと言うが、その必要は無いという。すると、徐々に壁が低くなっていき、私は地面に降りる。


 私はローレンスと共に彼女を見守っている。下手に刺激して、また錯乱されては困る。私はユリアたちを見る。クリスティーナが手を振ってくれている。思わず振り返してしまった。彼女の後方にたっているアンは、私を睨みつけているような気がする。


 私は投げつけた剣のことを思い出す。その事をローレンスに告げる。彼女のことは自分が見てるから探してくるといいと勧めてくれえる。私は彼女に確認すると好きにすれば良いと言われたので、そうすることにした。


 私は記憶を辿り、剣が飛んでいた方向の森へ入る。草をかき分けて探しているが、なかなか見つからない。諦めそうになるが、気持ちを奮い立たせる。ユリアに貸してもらった剣である。何を言われるか分からない。


 しばらく、そうしていると物音が聞こえる。私はフウールかと思い後退りしながら短剣を抜き、その方向を見る。そこには人が去って行くのが見える。


 他の班の生徒なのだろうか。私は、その髪の色と髪型には見覚えがある。しかし、その人物が、ここにいる訳が無い。極限状態にいたので幻でも見ているのだろう。


 まだ、フウールの存在も捨てきれないので、警戒しながら進んでいると足に違和感がある。地面が固く感じる。足下を見ると何かを踏んでいる。かき分けてみると古びた剣がある。


 私は、それを拾いあげると、その近くで光り輝く物が落ちている。見てみると装身具だ。学院生の落とし物だろう。後で先生に報告しようとポケットに入れる。


 森を出るとエリーザは、うなだれている。さすがに、もう立ち直ってもらいたい。ローレンスは優しい目で彼女を見守っている。


私はクリスティーナたちの元へ向かう。彼女は、心配そうな顔をしていて、私の傷に気が付くと目に涙を浮かべている。


「クリスティーナ、大丈夫だよ。大したことないよ」


「本当に?」


 私は頷くが鋭い視線を感じている。そう、アンである。彼女はスカートを引きちぎれるんじゃないかというぐらい、力強く握りしめている。


 あそこまでして、私とクリスティーナが班を組むことを阻止した。そんな私が合同授業中に会って会話を交している。彼女に抑えがたい怒りがこみ上げてきているのだ。それは理解できないことはない。


 しかし、いくら何でも露骨すぎる。私は嫌われているのが分かっていても、悲しい気分になる自分がいる。態度で示すより、いっそハッキリ言葉に表わしてくれた方が、いくらか楽である。


「アンドゥー! お二人に御礼を」


「クリスティーナ、そしてアン様ありがとうございました」


「アンドゥー、私は、あまり役にたってないわ」

「……」


 アンは頷くだけである。私は二人の温度差のある対応に、どのような表情をしているのだろうか。それがクリスティーナの気分を害していないことを願う。


 彼女が誇らしげにアン様の大活躍を語っている。それを聞いているアンは、大変ご満悦のようである。実際、彼女が異変に気付いて確かめに行こうと提案したのは、彼女だそうだ。


 そして、青い球を放ちフウールを撃ち倒したが彼女であるという。そんな彼女は私を見たときに、さぞかし意気消沈したに違いない。


 私は無意識にズボンに触れていた。違和感を覚えて、装身具を入れていたことを思い出した。ユリアなら持ち主に心当たりがあるかもしれないと差し出す。


 すると、彼女は注意深く見つめている。それは彼女にとっても珍しく高価の物なのだろうか。


「アンドゥー! これどこで拾ったのよ!」


「剣が落ちていた近くです」


「私が預かっても良いかしら?」


「はい、構いませんが」


 私は彼女に不自然さを感じているが、そう答えるしかない。

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