猛獣の襲撃 フウール
ユリアが、そろそろ出発すると言うので支度を始めている。私は屈みながら急いで進めている。草むらから物音がする。急いでいるので、私は無視することにする。
「準備が整いました」
「そう、引き返すわよ」
「えぇ……ここから目的地まで近いですよ」
「あなたが怪我しているからよ」
「私なら大丈夫です」
エリーザも彼女に同意している。ユリアは腕組みをしてつま先を地面に打ちつけている。エリーザは彼女の爪先を注視している。
「何が大丈夫なのかしら? あなたが倒れでもしたら、私たちに迷惑をかけることになるのよ! そうなったら、どうしてくれるのかしら? まさか私たちに運ばせる気なの!」
「……いえ」
彼女の言っていることは、全くもって正論で何も言い返す言葉が見つからない。彼女の真っ直ぐな視線が私に突き刺さっている。しかし、彼女たちが私のせいで棄権するのは心苦しい。
「では、お嬢様たちだけで行ってください。私は戻りますので」
「あなたは本当に馬鹿なのね! 私たちは班を組んでいるの。三人で到達しないと意味ないの! 私とエリーザさんは、あなたに心配されるほど成績悪くないの!」
「そうよアンドゥー! あなたに気を遣ってもらうなんて御免よ!」
「申し訳ありません」
「素直で良いわ」
「戻りましょう」
「アンドゥー、腰に差してた短剣が無いようだけど?」
私は腰に手をやるが彼女の言うとおり無い。周囲を見回してみる。荷物を置いていた木のあたりで何かが光っている。近づいてみると短剣が落ちている。私は屈んでそれを拾い上げ腰に差す。
すると、私の上を何かが通過していった。その行き先を目で追うと獣が、ユリアに襲いかかろうとしている。彼女はエリーザに下がるよう言い、魔法を放って倒した。
私はユリアの元へ駆けつける。それを確認するとフウールである。犬を大型化したような動物で、鋭く長い牙と爪がある。獰猛で人間が多数被害に遭っていると聞く。
しかし、学院の近くで目撃されたなんて聞いたことが無い。先生方が安全のために、あらかじめ下見しているはずだ。今日、山でも越えてきたのであろうか。草むらの複数の箇所から音がする。
「アンドゥー! まだ潜んでいるわよ」
「はい」
私はユリアと背中合わせになり、剣を抜きフウールに備える。私は微かに笛の音が聞こえた気がした。その直後、フウールが飛び出してきた。私は向かってくるフウールを切り捨てる。
そうしても、草むらから湧くように出てきて襲いかかってくる。私が討ち漏らしてしまっては、いくらユリアといっても怪我してしまうかもしれない。私は神経を研ぎ澄ませて退治する。
私の背後では爆発音がする。私は草むらを注視しているが、もう出てくる気配は無い。
「しまったわ。エリーザさん、四方に防御壁を!」
私が彼女を見ると地面に手をつけて、詠唱を始めているが彼女にフウールの群れが迫っている。ユリアは、まだ対応に追われている。すると、エリーザの四方に防御壁が、そそり出て先頭のフウールが壁に激突した。
しかし、残りは壁を取り囲んでいる。私は彼女はもう安全だと胸を撫で下ろす。しかし、フウールは跳躍して上の方が空いている防御壁を乗り越えようとしている。
「アンドゥー! ここは私が引き受けるから、エリーザさんを救いに行きなさい!」
「はい」
私は全速力で彼女の元へ向かっている。しかし、急に横からフウールが飛び出してきた。それを私は切り捨て向かうが、防御壁を乗り越えようとしている。どう考えても間に合いそうにないが、諦めるわけにはいかない。
一か八か、私は剣をそれに投げつける。しかし、それは突き刺さることはなく逸れる。フウールは防御壁の上から中に入ろうとしている。
私は肩の痛みから姿勢を崩し、倒れこみそうになるが耐える。私は目を背けるわけにはいかない。
私が短剣を抜こうとしたとき、青い光の球がフウールを吹き飛ばす。飛び越えようとしているフウールに、次々と直撃し撃ち倒されている。残りのが私フウールに襲いかかろうとしている。
私は短剣を抜き構える。三匹が跳び目前まで迫っている。絶対に一匹は仕留めないといけないと覚悟を決める。私は真ん中のフウールに狙いを定める。
私は手を突き出そうとした時、目の前に何者かが現れた。その者は剣で弧を描きながら三匹を切り捨てた。その者が私に振り返る。




