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罵倒する令嬢 ユリア・メリーチ

  彼女が背中を見る。彼女が言うには、ファルコパイパーが彼女の攻撃を回避するために上昇しようとしていた。その際に、その鋭い爪が私に背中をえぐった。傷は、そんなに深くはないそうだ。


「ユリアさん。早く治癒しなくては!」


「そうね。やって頂こうかしら」


 彼女は詠唱を始め治癒を試みてくれている。しかし、痛みは全く収まらない。予想はしていたことではあるが、もしかしたら治癒魔法なら効くかもしれないという、淡い期待がある。


 ユリアが彼女に止めるように告げる。振り返り彼女を見るが、その表情は信じられないという感じである。私は彼女に礼を言ったが、耳に入っていないようで無反応である。しばらく、この状態が続いている。


 彼女は我を取り戻す。すると、私に魔法が効かないことを問い詰める。何度もされるが分からないということしかできない。


 ユリアの攻撃を受け続けていたら効かなくなったと言っても、到底信じてもらえるとは思えない。実際どうして、このような体になってしまったのだろう。私は明確に説明することは出来るはずもない。


 納得がいかないようで、次はユリアに聞いている。彼女は知らないと言い続けている。その彼女にエリーザは、食い下がっている。


 終いには、自分には効いたのでおかしい。ユリアに怪我している箇所がないかを聞いている。彼女が、ないというと残念そうな顔を浮かべている。彼女は自分の能力に疑心暗鬼になっているようである。ユリアに治癒を行い効くか試したいのだ。


「エリーザさん、だいぶ取り乱しているわ。水辺で顔を洗って気分を落ち着かせては?」


「その方が良いかもしれませんね」


 彼女が向かうと、私は彼女に付いてくるよう言われた。彼女は、エリーザを気にしていて聞かれたくないようである。


 彼女は止まった途端に、なぜ彼女の魔法を打ち消したと詰問される。私はエリーザを守るためだったと返答した。すると、彼女は腕を組み地面につま先を打ち始める。


「よくも余計なことをしてくれたわね」


「私は間違っていると思いません」


「私は、あなた、すれすれで狙っていたのよ!」


「それは分かります。しかし、エリーザ様に何かあってはと思いました」


「私を信頼できなかったのね。あれがなければ、あなたが傷付くこともなかったのよ! そして、この様な煩わしい事にもなってないわ!」


「……」


 私は彼女を信頼してないわけではない。よかれと思って行動した。そんなことを言われると思って無かったので、胸の内がモヤモヤしている。彼女は真っ直ぐ私を見つめている。


「もういいわ。戻るわよ!」


 戻るとエリーザは、まだ水辺にいて顔を洗っている。当たり前ではあるが、彼女にとって受け入れられない出来事であったのは間違いない。誰であっても同様の反応をするはずだ。


 ユリアが彼女の元へ向かい、何か喋っている。私は地面に突き刺さった剣を取りに来ている。引き抜こうとするが深く刺さっているため抜けない。力を込めて抜こうとするが背中に激痛が走る。


 仕方がないので剣の周囲を掘り始めている。一体、どれ位の時間がかかるのかと思うと途方に暮れる。


「アンドゥー、何をしているの?」


 エリーザに声を掛けられる。私が剣を抜いていることを告げると、こちらに向かおうとしている。その瞬間に閃光が走り目を閉じる。目を開けるとエリーザが尻餅をついている。


 何が起こったのか把握できない。周囲を見回してみるが、異常はない。彼女は、立ち上がっていて、ユリアに詰め寄っている。何が起こったのかと耳を澄ませている。


「アンドゥーさんは、怪我をしているのよ! どうして、そのようなことをなさるの?」


「エリーザさん、よく見て頂けるかしら。私は、アンドゥーが剣を抜くのに手こずっているようだから、そのお手伝いをしてましたのよ」


「あら、本当だわ。私の誤解でしたわ。ごめんなさい。さすがユリアさんですわ!」


 私の傍らには、剣が落ちている。結果的には、ユリアの言った通りになっている。しかし私は、ユリアの描く計画に巻き込まれている気がして、心中穏やかでは無くなってきている。

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