嵌まる令嬢 エリーザ・ラバーナ
私は、どうすればいいのだろうか。彼女の察してという言葉を思い出し、彼女に従うしか選択肢はないようである。これ以上時間をかける訳にもいかないし、精神をすり減らしたくない。
「ユリア様。エリーザ様の提案でよろしいでしょうか?」
「私は、あなたに一任したわよ! あなたが良いならそれでいいわよ!」
彼女の表情を見てみると納得してしないように感じる。その一方、エリーザは自分の案が通ってご満悦のようだ。
「それでお願いします。エリーザ様も宜しいでしょうか?」
「もちろんよ」
出発しようと周りを見るが、私たちの班しかいなく完全に出遅れた。先行きが不安になり足取りが重い。彼女たちは、私など眼中にないようで先を進んでいる。
彼女たちの後を続いていると、エリーザが戻ってきた。
「どうしましたか? エリーザ様」
彼女が前方を指さしている。その先には、雑草が生い茂っている。その高さは腰ぐらいありそうである。彼女は返事をしてくれない。
「エリーザ様……」
やはり、無反応である。そうしているうちに、ユリアは雑草をかき分け進んでいる。エリーザは、それに驚いている。
「アンドゥー! ユリアさんが雑草で怪我したらどうするのよ! それに獣が潜んでいるかも知れないのよ?」
「どうすればよろしんでしょうか?」
「自分で考えなさいよ!」
また、察しろという事らしい。彼女の意図することは、容易に想像出来る。自分が雑草をかき分け進むのがいやなのだ。私は仕方が無いのでユリアの元へ駆けよるが、嫌な予感しかしていない。
「ユリア様。お怪我をしたら大変ですので、私が雑草を剣で切って進みます」
「私は気にしてないのだけど? 怪我するとでも思っているの?」
「決して、そのようなことは思っておりません」
「偉くなったものね! アンドゥ-。私に意見するなんて!」
「申し訳ありません」
「なぜ謝るのかしら?」
彼女は相変わらず無表情であるが、内心では怒っている。私は耐えられなくなって、振り向きエリーザを見るが即座に顔を背けられる。私は振り返る勇気を持ち合わせていない。しばらく、それが続いている。
「まぁいいわよ、アンドゥー。お願いするわ」
思いもかけないことに安堵する。私は彼女の前に進む。
「ユリア様、剣を使いますので離られてお進み下さい」
「わかったわ」
私は剣を抜き雑草を切り道を進んでいる。この古びた剣は思っていたよりもかなり切れ味が良い。しかし、これは結構な重労働で腕が疲れてきている。
振り返るとエリーザは、涼しそうな顔をして歩いている。私は、それに納得がいかない。そうしながら進んでいると、足を取られ倒れそうになる。
罠かと思い足下を見ると、泥濘にはまっただけであっる。
「間抜けね」
ユリアの声がする。振り返ると、エリーザが笑いを堪えていて恥ずかしくなった。ユリアは腕組みをして無表情である。雑草地帯を抜けると湖に出た。
「アンドゥー。少し休憩しましょう。エリーザさんもよろしいかしら?」
私は疲れているので、その言葉は有り難い。私たちは同意すると、エリーザは一目散に木へと向かう。木陰で休む気だろうと見ていると一瞬視界から彼女が消える。
視線を上に向けると、彼女はぶら下がっていて右足に縄が巻き付いている。彼女は悲鳴を上げている。私は気恥ずかしくなって目を逸らせる。ユリアが彼女の足跡追って、素早く彼女の元へ駆けよっている。
「アンドゥー! 何してるのよ。早く来なさい!」
私は俯きながら近づいていくと、靴が落ちている。私が顔を上げるとエリーザの顔が紅潮している。それは、つり下げられているからなのか、恥ずかしさからなのかの判断はつかない。
「どうしたら良いでしょうか? ユリア様」
「助けるに決まってるじゃないの! あなた馬鹿なの?」
本日、三人目の発言であるが、今はその事について考えている暇は無い。
「……」
「剣を渡してちょうだい! 私が縄を切るので、あなたはエリーザさんを受け止めてなさい。良いわね!!」
彼女は、そうしているが縄が太くて手こずっている。いつ切れるか分からないので、神経をそこに集中させている。もう少しで切れそうである。
そこで、ユリアから彼女の重さで切れるのを待って、二人で受け止めると提案がされる。それで彼女は、お互いの両腕を掴むよう指示し、そこでエリーザを受け止めることになった。
私たちが息をのんで待っていると、ブッチという音とともに縄が切れて彼女が落下してくる。
しかし、彼女は私たちの真ん中ではなく、かなり私よりに落下してくる。それは縄が揺れていた事によるもので、私たちも、その動きに合わせようとしていたがタイミングが合わなかった。
この状態でいると、彼女を受け止めることは出来ない。私はユリアの腕から手を放す。そして、彼女を受け止めたが、体勢を崩して背中を地面に打ちつけた。一瞬、呼吸が出来なかった程度で体はそんなに痛くない。
「アンドゥー! 息苦しいんだけど」
私は必死だったので力を込めすぎて、彼女を締め付けていた。私は、すぐに両手を離して地面につける。私は上空を見ているが、私の顔に影が差す。
その方向を見ると、ユリアが私たちを見下ろしている。しかし、そうしているだけで何も言ってこない。この状態がしばらく続いている。エリーザが私の肩に手をやり起き上がろうとする。
「大丈夫かしら? エリーザさん」
「えぇ、ありがとう。ユリアさん」
ユリアが彼女に手を差し伸べている。私は、その腕を見る。彼女の透き通るような肌に赤い斑点が出来ている。私は思わず顔を背けてしまう。その視線の先の上空で、ファルコパイパーが飛んでいる。




